不動産投資で収支が悪化する要因とは?防ぐ方法やポイントを解説

不動産投資で収支が悪化する要因とは?防ぐ方法やポイントを解説

不動産投資は、賃貸収入や売却益などで利益を得る投資方法です。しかし、思うように収支が上向かず、悪化してしまうケースも少なくありません。不動産投資で収支が悪化する要因には、収入よりローン返済額が大きいことや空室率が高いことなどが挙げられます。本記事では、不動産投資で収支が悪化する要因とその対策を解説します。

不動産投資で収支が悪化する要因

不動産投資で収支が悪化する要因

不動産投資で収支が悪化する要因は、下記の通りです。

  • 収入よりもローンの返済が大きい
  • 購入当初の見込みが甘い
  • 空室の割合が高くなる
  • ローン金利の上昇
  • 突然の修繕で支出が増えてしまう

収入よりもローンの返済が大きい

不動産投資で収支が悪化する要因の一つは、収入(賃貸収入)よりもローン返済額の割合が高いことです。例えば、ローン完済後に家賃収入になればいいと考えて返済額を多く設定している場合が考えられます。

確かにローンを完済すれば、その後は収入が増えるでしょう。しかし、不動産投資では、予期せぬ建物の修繕などで支出が発生することがあります。そうなると、収支がマイナスに傾いてしまい、資金繰りが苦しくなる可能性があります。

一言メモ

不動産投資では、ローンの返済中も一定の利益が出るように、余裕を持った収支計画を立てることが大切です。

購入当初の見込みが甘い

不動産投資で収支が悪化する大きな要因の一つに、物件購入時の収支シミュレーションが現実的でないことが挙げられます。

投資物件の購入を検討する際には、営業担当者から期待利回りについての説明を受けるのが一般的です。しかし、その際に提示される期待利回りのパーセンテージは、単純に返済額と賃料を並べただけの「表面利回り」の場合があります。

注意ポイント

「表面利回り」には、空室リスクや物件自体の価格下落、将来的な修繕費用などが加味されていないことがあります。表面利回りだけを見て物件を購入してしまうと、想定していた収支と大きく乖離してしまい収支が悪化する可能性があるでしょう。

空室の割合が高くなる

空室の割合が高くなると、収入となる賃料が得られなくなるため、収支が悪化する可能性があります。特に、ワンルームマンションを一室だけ所有している場合は、空室ができると収入がゼロになってしまうため、一気に収支が悪化してしまいます。

例えば、都心部のワンルームマンションで家賃8万円、ローン返済7万円の物件を所有しているケースを考えてみましょう。満室時は月々1万円の黒字ですが、一室しか所有していないため、空室が発生すると家賃収入がゼロになります。そうなると、月々7万円の赤字となり、たった一室の空室でも一気に収支が悪化してしまいます。

満室時 空室時
月々の収支 1万円の黒字 7万円の赤字

ローン金利の上昇

ローン金利の上昇は、不動産投資における収支悪化の大きな要因の一つです。特に、変動金利型のローンを利用している場合、金利上昇の影響を大きく受けます。

例えば、借入金額が3,000万円の場合、金利が0.5%上昇すると、年間の返済額が15万円増加することになります。月々の返済額に換算すると、約1.25万円の増加です。借入金額が大きければ、金利上昇による返済額の増加幅も大きくなるため、収支への影響は無視できません。

一言メモ

金利上昇のリスクを見越して、賃料を設定していれば、ある程度の金利上昇は吸収できるでしょう。しかし、想定以上の金利上昇があった場合は、収支が悪化する可能性があります。

突然の修繕で支出が増えてしまう

不動産投資における収支悪化の要因の一つに、突発的な修繕費用の発生が挙げられます。
具体的には、下記のようなケースが考えられます。

費用の種類 発生する状況 費用の特徴
原状回復費用 入居者の退去時 ・長期入居やダメージが大きい場合、高額になる可能性あり
既存設備の修繕費用 経年劣化による故障 ・突発的に発生する可能性あり
・修理や交換が必要
・築年数が経過するほど高くなる傾向
自然災害による修復費用 台風や地震などの自然災害 ・古い建物や耐震性の低い建物は被害を受けやすい
・修復費用が高額になる可能性あり

突発的な修繕費用を収支計画に織り込んでいなかった場合、収支を大きく悪化させる要因となります。

不動産投資では収支が悪化しても問題ない場合もある

不動産投資では収支が悪化しても問題ない場合もある

不動産投資では、収支が悪化しても、帳簿上の赤字であれば問題ない場合があります。その代表的な例が、減価償却による帳簿上の赤字です。減価償却とは、建物の価値が時間の経過とともに下落していくことを、会計上で費用として経費計上するものです。具体的には、購入価格のうち、建物部分の価格に対して一定の割合を減価償却費として計上していきます。

減価償却費は金額が大きい場合が多く、実際の収支では黒字であっても、減価償却費を差し引くことで、帳簿上は赤字になるケースがあります。

例えば、年間の賃料収入が1,000万円、ローン返済が800万円、管理費等の経費が100万円の物件を考えてみましょう。実際の収支では、100万円の黒字です。しかし、この物件の減価償却費が200万円だった場合、帳簿上は100万円の赤字となります。

賃料収入 1,000万円
経費 ▲100万円
ローン返済 ▲800万円
実際の収支 100万円
減価償却費 ▲200万円
会計上の収支 ▲100万円
一言メモ

このように不動産投資では、減価償却費を活用することで、帳簿上は赤字でも、実際のキャッシュフローが黒字になることがあります。そのため、損益計算書だけを見て一喜一憂するのではなく、キャッシュフローをしっかり把握することが重要です。

不動産投資の収支悪化を防ぐ方法

不動産投資の収支悪化を防ぐ方法は、下記の3つです。

  1. 募集条件を見直す
  2. 有識者に相談する
  3. 管理費を安くする工夫を行う

①募集条件を見直す

募集条件を見直すことで、空室による収支悪化を防げる可能性があります。

具体的には、ペットの飼育を可能にしたり、借主による部屋のDIYを許可したりするなど、ニーズに合わせた条件設定を行うことで、入居希望者の関心を高められるでしょう。

ただし、ペットの飼育を許可する場合は、物件の損傷や近隣トラブルなどのリスクがあります。そのため、飼育可能なペットの種類や大きさ、飼育方法などについて、予め取り決めておく必要があります。借主によるDIYを許可する場合も、DIYの範囲や原状回復の義務などについて、入居者とすり合わせておくことが重要です。

一言メモ

物件オーナーが直接入居希望者とマッチングできるサイトやSNSを活用することも、空室対策として有効です。マッチングサイトやSNSでは、物件の詳細情報や写真、動画などを掲載することで、入居希望者に物件の魅力を効果的にアピールできます。

②有識者に相談する

不動産投資において収支が悪化した際には、専門知識を持つ有識者に相談することが有効な対策の一つです。特に、下記のような有識者に相談することがおすすめです。

相談先 提供できるサポート
不動産投資会社 物件の選定、収支計画の作成、管理、売却など収支悪化の原因分析と対策提案をしてくれる
不動産投資経験者 収支悪化の原因や対策に関する助言をしてくれる
税理士 税務処理に関する収支悪化の原因分析や節税対策による収支改善提案をしてくれる

有識者に相談する際は、事前に相談内容を整理し、相談したい内容を明確に伝えましょう。

不動産投資で失敗した場合に相談するべき相手に関しては、「不動産投資で失敗した場合に相談すべき相手とその選び方は?」の記事でも紹介していますので、本記事とあわせてご覧ください。

③管理費を安くする工夫を行う

管理費を安くする工夫を行うことで、収支悪化を防ぐことにつながります。管理費には、共用部分の管理費と専有部分の管理費の2種類があります。

共用部分の管理費

共用部分の管理費は、管理組合や建物管理会社に支払う費用です。この管理費は、エレベーターやフロントサービスなどの共用部分のサービス内容によって金額が変わります。そのため、不要なサービスを削減することで、管理費を安くできる可能性があります。

専有部分の管理費

一方、専有部分の管理費は、賃貸管理の手数料や委託料として、管理会社に支払う費用です。この管理費は、管理会社によって金額が異なるため、複数の管理会社から見積もりを取って比較検討することが重要です。また、管理会社を変更することで、管理費を安くできるケースがあります。

注意ポイント

管理費を安くすることだけを優先するのは危険です。例えば、管理費を安くするために、清掃や設備の保守点検の頻度を減らすと、建物の美観や機能が損なわれ、入居者の満足度が下がってしまう可能性があります。不動産の管理は、物件の資産価値に直結するため、費用と管理の質のバランスを見極めることが大切です。

管理会社の選び方については、「不動産投資で失敗しない管理会社の選び方とは|管理項目から詳しく解説」の記事でも紹介していますので、本記事とあわせてご覧ください。

不動産投資の収支悪化を食い止めるポイント

不動産投資の収支悪化を食い止めるポイント

不動産投資の収支悪化を食い止めるポイントは、下記の2つです。

  • 税金や手数料などの知識を学ぶ
  • 収支悪化に一喜一憂しない

税金や手数料などの知識を学ぶ

不動産投資で収支悪化を防ぐためには、税金や手数料などの知識を学ぶことが重要なポイントの一つです。不動産投資では、物件の取得、運用、売却の各段階で、様々な税金や手数料が発生します。

具体的には、不動産取得時の印紙税や登録免許税、固定資産税、都市計画税などの税金や、仲介手数料、司法書士報酬などの手続きにかかる手数料について、事前に把握しておく必要があります。また、不動産所得に関する所得税など、経営に関連した税務の知識も重要です。

これらの知識を身につけるためには、税理士や弁護士などの専門家に相談するのも一つの方法です。しかし、長期的な視点で不動産投資を続けていくためには、物件オーナーとして自ら学んでいくことが望ましいでしょう。特に、節税の方法については、適切な経費計上や減価償却の活用など、自分で勉強していくことが重要です。

不動産投資における税金対策については、「不動産投資で税金対策とは?税金対策で法人化のメリットデメリット」の記事でも紹介していますので、本記事とあわせてご覧ください。

収支悪化に一喜一憂しない

不動産投資における成功の定義は、最終的に物件を売却した際のトータルの収支が黒字となることです。しかし、物件を長期に渡って保有する間は、一時的な赤字が発生することもあり得ます。

例えば、想定外の修繕費用が発生したり、空室が長期化したりすることで、一時的に収支がマイナスになるケースがあります。こうした一時的な赤字に一喜一憂するのではなく、長期的な視点を持つことが重要です。

一言メモ

赤字が長期化することがないように、日頃からリスク管理を徹底し、不測の事態が発生してもすぐに対応できる体制を整えておきましょう。

不動産投資で収支悪化についてよくある質問

不動産投資を始めるにあたって不安な点は多いと思います。収支悪化は、大きな悩みですが、適切な知識と対策を講じることで、リスクを最小限に抑えることが可能です。ここでは、不動産投資の収支悪化についてよくある質問にお答えします。

不動産所得がマイナスでも確定申告は必要?

不動産所得がマイナスの場合、納税が発生しないため確定申告は必要ありません。ただし、不動産所得の赤字を他の所得と通算することで税金を安くしたい場合や、赤字を翌年以降に繰り越して将来的に節税したい場合は、確定申告を行う必要があります。例えば、給与所得や事業所得などの黒字の所得から、不動産所得の赤字分を差し引くことで、トータルの所得税額を減らせます。

また、不動産所得の赤字を翌年以降に繰り越す場合、最長3年間は繰り越し控除が可能です。つまり、今年の不動産所得の赤字を来年以降の不動産所得の黒字と相殺することで、将来的な節税につなげられます。

不動産投資で成功するとはどういうこと?

不動産投資において成功の定義は人それぞれ異なりますが、一般的には下記のような状態が成功の条件として挙げられます。

  • 最終的に黒字で売却できた
  • 毎月のキャッシュフローがプラスになった
  • 相続税や所得税が節税できた
  • 不動産投資による副収入ができ、生活にゆとりができた

不動産投資における成功の条件は、投資目的や個人の価値観によって異なります。重要なのは、自分なりの成功の定義を明確にし、それに向けて計画的に行動することです。

不動産投資で収支が悪化する要因まとめ

不動産投資で収支が悪化する要因

本記事では、不動産投資で収支が悪化する要因と防ぐ方法、ポイントを解説しました。不動産投資で収支が悪化する要因には、収入よりもローンの返済が大きいこと、購入当初の見込みが甘いこと、空室の割合が高くなることなどが挙げられます。収支の悪化を防ぐためには、募集条件の見直しや有識者への相談、管理費を安くする工夫などが有効です。本記事を参考に、一時的な赤字に一喜一憂せず、長期的視点を持って不動産投資に取り組みましょう。

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この記事の編集者

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アデプトマネジメント編集部

【宅地建物取引業】大阪府知事(2)第59728号
【賃貸住宅管理業】国土交通大臣(1)第002807号

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