投資用マンションの売却を検討している方の中には、「税金がいくらかかかるか不安」「少しでも税金の負担を減らしたい」と思っている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、投資用マンションを売却する際にかかる税金の種類や確定申告の方法について解説します。特定の条件に当てはまる場合に利用できる節税制度も紹介するので、所有している投資用マンションの売却をお考えの方はぜひ参考にしてください。
投資用マンションの売却で確定申告が必要なケース
不動産を売却した際には、場合によっては確定申告を行う必要があります。投資用マンションの売却時に確定申告が必要なのは、以下の2つのケースです。
- 利益が出た場合
- 損失があっても他の不動産売買で利益が出た場合
まず、投資用マンションを売却して利益が出た場合は、確定申告を行って納税をしなくてはいけません。不動産の購入額より売却額が高い場合は利益が出たとみなされるため、譲渡税を計算して税金を納めましょう。
購入額より売却額が低くなって損失が出ることもありますが、その場合は確定申告は必須ではありません。しかし、他の不動産売買で利益が出ている場合は、赤字でも確定申告を行ったほうが良いです。他に所有しているマンションで売却益があれば、売却損と相殺することで納税の負担を減らすことができます。
投資用マンションの売却時に確定申告が必要・不要なケースについてより詳細に知りたい方は、「不動産売却後の大きな壁は確定申告!確定申告の方法や書類の種類を詳しく解説」の記事をご参照ください。
投資用マンションの売却時にかかる税金
投資用マンションを売却する際には、以下のような税金が課されます。
- 登録免許税
- 印紙税
- 譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)
- 消費税
以下で、それぞれの税金がどのようなものか1つずつ紹介します。
①登録免許税
登録免許税は、不動産購入時に住宅ローンを組んでいて抵当権をつけている場合に、抵当権を取り消す手続きに必要な税金です。抵当権とはいわゆる「担保」のことで、住宅ローンなどを借りる際に金融機関が不動産や土地につける権利を指します。
通常はローンを完済したタイミングで抵当権は取り消されますが、ローンの残額がある状態で売却をする場合は、この登録免許税が課されます。登録免許税の計算方法は下記の通りです。住宅ローンを組んでいなければ払う必要はありません。
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 税率
②印紙税
印紙税は、マンション売却の際に作成する契約書に貼る収入印紙の代金を指します。通常、契約書を交わす場合は売主と買主がそれぞれ一通ずつ保管しなくてはならないため、お互いが収入印紙代を負担することが多いです。
印紙税の金額は一律ではなく、マンションの売却価格によって変わります。
売却金額 | 印紙税の金額 |
---|---|
10万円以下 | 200円 |
10万円超~50万円以下 | 400円 |
50万円超~100万円以下 | 1,000円 |
100万円超~500万円以下 | 2,000円 |
500万円超~1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円超~5,000万円以下 | 20,000円 |
5,000万円超~1億円以下 | 60,000円 |
1億円超~5億円以下 | 100,000円 |
引用:国税庁「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
③譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)
所得税・住民税・復興特別所得税の3つの税金を合わせて呼ばれるのが譲渡所得税で、マンション売却時に利益が出た場合に課される税金のことを指します。計算方法は下記の通りです。
譲渡所得 = 売却額 -(取得費 + 譲渡費用)
これらの計算金額がプラスになった場合のみ譲渡所得の課税の対象となるので、マンションを売却しても利益が出ず、数字がマイナスだった場合は払わなくても問題ありません。
所有期間ごとの税率
税率は不動産の所有期間によって異なり、5年で税率が変わります。少しでも税金の負担を減らしたい方は、税率が変動するタイミングも頭に入れた上で売却を検討しましょう。
投資用マンションの課税所得税にかかる所得税と住民税は、下記のように計算します。上記の式で求めた額に所有期間に応じた税率をかければ譲渡税が分かります。
所得税・住民税=譲渡所得 × 税率
所有期間が5年以下の短期譲渡所得の場合と、5年を超えて不動産を所有している長期譲渡所得の場合の譲渡所得税は下記の表の通りです。短期譲渡所得と長期譲渡所得を比較すると2倍近く税率が変わるので、売却をお考えの方は所有期間にも注目してみてください。
税金の種類 | 短期譲渡所得(5年以下) | 長期譲渡所得(5年超え) |
---|---|---|
所得税 | 30% | 15% |
復興特別所得税 | 0.63% | 0.315% |
住民税 | 9% | 5% |
合計 | 39.63% | 20.315% |
④消費税
マンションを売却するのに消費税がかかることに疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。消費税の課税対象として定められている要項の中に、「事業者が事業として行うものである」という内容があります。
土地や個人が所有していたマイホームを売却する場合であれば消費税はかかりませんが、投資用マンションの取引は「事業者」として行う場合に当てはまるため、消費税が発生します。投資用マンションを売却する場合は、建物価格に消費税が発生するため、売主が個人であれ事業者であれ消費税が課されるのです。
投資用マンションで節税をする方法
ここまで投資用マンションで確定申告が必要なケースや課される税金の種類について見てきました。少しでも課される税金の負担を減らすためにも、ここからは節税のコツについて解説します。
以下の5つの方法において、自分で売却を行う際に活用できるものがあれば試してみてください。
- 投資用マンションの取得費を算出する
- 5年以上所有してからマンションを売却する
- 事業用財産の買換え特例を活用する
- 減価償却費が適切な金額かを確認する
- 相続物件は取得費加算制度を利用する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①投資用マンションの取得費を算出する
譲渡所得にかかる税金を減らすためには、投資用マンションをいくらで購入したか、すなわち取得費を把握しておくことが大切です。投資用マンションの取得費には、下記のようなものが該当します。
- 不動産の購入費
- 不動産購入時の印紙税
- 登録免許税
- 仲介手数料
- 設備費
取得費が分からない場合には売却額の5%が取得費となり、多額の税金がかかってしまうため、可能な限り取得費を調べておきましょう。
②5年以上所有してからマンションを売却する
譲渡所得に課される税金の負担を軽減するなら、不動産を5年を超えて所有してから売却するのも良いです。つまり、長期譲渡所得の税率が適用されるまで待つという方法です。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率を比べると、39.63%と20.315%で2倍近くもの差が出るため、課税額を抑えたい方は不動産の所有年数が5年を超えるまで売却を控えるのも節税になります。
不動産の価値の変動によって損をする場合もあるため、所有期間が5年を超えてから売るのが一概に正解とは言えません。
③事業用財産の買換え特例を活用する
国税庁の「事業用資産の買換えの特例」では、投資用マンションの売却後、一定期間内に物件を買い換えた場合、売却利益の80%を上限として譲渡所得税を繰り越すことが可能です。ただし、事業用財産の買換え特例を利用する場合には下記の条件があります。
- 元の事業用不動産を10年以上所有している
- 買換え資産の面積が元の資産の面積の5倍以内になっている
- 買換え資産を購入したら1年以内に事業用に利用する
- 元の資産を売った前年から翌年までの3年以内に買い換える
この特例が適用されると、売却額より買い換えた金額が高いときに、売却額に20%をかけた額を収入金額として譲渡所得の計算を行えます。反対に売却額より買い換えた金額が低いときには、差額と買い換えた金額に20%をかけた合計額を収入金額として譲渡所得の計算を行うのです。
④減価償却費が適切な金額かを確認する
物件を節税のために購入し、毎年の確定申告を購入した不動産会社に任せていた方は注意が必要です。今まで計上した減価償却費の額が高すぎると売却益も高くなり、最終的に譲渡所得による税金が多額になる場合もあります。
減価償却費を高くするために、根拠なく不動産の価格や設備の割合を多くして申告を行うと税務署に修正申告をしなくてはなりません。あまりに悪質な場合は、過去数年間をさかのぼって修正申告をするよう求められます。
⑤相続物件は取得費加算制度を利用する
相続した不動産を投資用マンションとして運用していて、それを一定期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち一定金額を取得費に加えられる制度があります。この特例を適用するには、以下3つの要件が必要です。
- 相続や遺贈により財産を取得した者である
- 財産を取得した人に相続税が課されている
- 取得した財産を相続した日の翌日から相続税の申告期限である3年を経過する日までに譲渡している
これらの条件に当てはまる方は、取得費加算制度を利用してみてください。
投資用マンションの売却後に確定申告を進める方法
投資用マンションを売却した場合、一定の要件を満たす人は確定申告を行わなくてはいけません。投資用マンションの売却による譲渡税の確定申告を行う必要があるのは、冒頭でお伝えした通り、利益が出た場合と、その他に所有している不動産に利益が出て損失と相殺できる場合です。
個人が確定申告を行う時期については、所得税は翌年2月16日から3月15日までで消費税は翌年の1月1日から3月31日までです。年によって多少前後する場合もあるので、期限に間に合うよう時間に余裕を持って行いましょう。
ここでは、投資用マンションの売却後に確定申告を行う際の必要書類と申告の流れについて解説していきます。
確定申告に必要な書類
確定申告の際に用意する書類には以下のようなものがあります。こちらは一例ですので、さらに詳しく知りたい方は国税庁ホームページをご覧ください。
- 確定申告書
- 譲渡所得の内訳書
- 売買契約書を複写したもの
- 譲渡費用の金額が分かる書類を複写したもの
- 取得費の金額が分かる書類を複写したもの
- 消費税、地方消費税の申告書
- 税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
- 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表
マンション投資の売却時の確定申告に必要な書類については、「不動産所得の確定申告での必要書類一覧|計算方法や申告方法も解説」をご参照ください。
確定申告の流れ
次に、確定申告を行う際のおおまかな手順を紹介します。確定申告は自分で確定申告を行っている人も多くいますが、時間がなく忙しい方は税理士に依頼するのも良いです。
- 譲渡所得を計算する
- 必要書類をそろえる
- 確定申告書を作成する
- 税務署で手続きを行う
まず譲渡所得の計算から始めます。おさらいになりますが、譲渡所得の計算式は下記の通りです。
譲渡所得 = 売却額 -(取得費 + 譲渡費用)
ここで出た額に不動産の所有年数に応じた税率をかけて、譲渡税を求めましょう。
次に、上記で紹介した確定申告に必要な書類をそろえてから、確定申告書を作成します。確定申告書を作成したら、税務署で手続きを行います。確定申告の手続きは、郵送や電子申告(e-tax)を利用する方法もあるので、自分に合った方法を選びましょう。
投資用マンションの売却時の確定申告についてさらに詳しく知りたい方は、「マンション投資の確定申告の手順は?必要書類や申告方法について紹介」の記事をご参照ください。
投資用マンション売却の確定申告に関する疑問
投資用マンションの売却における確定申告について、まだ疑問が残るという方もいるでしょう。ここでは、下記の2点について解説していきます。
- 確定申告をしないとどうなる?
- 自宅用の特例や控除は利用できる?
これらの事項について気になる方は、ぜひチェックしてみてください。
①確定申告をしないとどうなる?
投資用マンションの売却で納税義務が生じた場合に、確定申告をしないまま放置していると税務署から罰則があるので注意しましょう。
不動産売買には所有権の移転登記があり、登記の移転記録は税務署にも通知されます。そのため、登記の移転があるのに確定申告がなされていないとなれば、税務署にすぐに伝わります。
不動産売却で利益が出ても正しく申告しないままでいると、無申告加算税が課されます。無申告加算税でかかる金額については、下記の通りです。
本来納付すべき税金 | 無申告加算税の課税額 |
---|---|
50万円まで | 15% |
50万円を超える | 20% |
税務署の調査が入る前に、自分で確定申告をしていないことに気付いた場合、自主的に申告をすれば課税額が5%に軽減されます。法定申告期限から一ヶ月以内の申告であれば、無申告加算税は課されません。
②自宅用の特例や控除は利用できる?
マイホームを売却する際には、3,000万円の特別控除が適用されることもあります。しかし、こういった自宅用の特例や控除は、投資用マンションの売却には利用できません。
そのため、自宅用の特例や控除の利用を考えている人もいるかもしませんが、投資用マンションの売却では適用されないという点を頭に入れておくようにしてください。他にもマイホームに適用される特例はありますが、基本的に投資用マンションには適用できないので、注意しましょう。
税金や確定申告の方法に不安な方は弊社にご相談ください!
不動産投資における確定申告は、利益が出た場合には行わなければいけません。損失が出た場合でも、確定申告を行うことで税金の負担を減らせるケースもあるので、自分に必要かどうかを確認しておきましょう。
投資用マンションの売却時にかかる税金は、下記の通りです。
- 登録免許税
- 印紙税
- 譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)
- 消費税
売却時にかかる税金や確定申告の方法に不安が残る方は、ぜひアデプトマネジメントにご相談ください。不動産投資の実績と経験が豊富なアデプトマネジメントでは、不動産売却の税金対策に関して不明な点についてもアドバイスやサポートを行っております。ぜひお問い合わせフォームからご連絡ください。