マイナス金利解除による不動産への影響とは?購入時のポイント

マイナス金利解除による不動産への影響とは?購入時のポイント

マイナス金利政策が解除され、金利上昇の兆しが見える今、不動産市場はどうなるのか不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

2024年3月19日に、日銀のマイナス金利政策が解除されることが明らかになりました。長年の超低金利環境に慣れた国民にとって、これは大きな変化です。不動産投資ローン金利の上昇は避けられず、家計への影響は計り知れませんが、この変化は新たな機会をもたらすかもしれません。金利上昇で不動産価格が下落すれば、購入のチャンスが到来するからです。

本記事では、マイナス金利解除による不動産への影響を解説するとともに、不動産を賢く購入するためのポイントをお伝えします。

マイナス金利解除による不動産への影響

マイナス金利は、民間の金融機関が日本銀行に預けている預金金利をマイナスにする政策です。金融機関は、日本銀行に余分な資金を預けたままにしておくと金利を支払わなければならなくなります。そのため、金融機関は企業への貸出や投資に資金を回すように促し、経済活性化とデフレ脱却を目指していました。結果的に、景気が向上する可能性があるとされていたのです。

しかし、2024年3月の金融政策決定会合で、マイナス金利政策が解除されることになりました。これにより、不動産投資ローンの金利は徐々に上昇していくと予想されます。マイナス金利解除による不動産への主な影響を以下で詳しく見ていきましょう。

マイナス金利解除によるメリット・デメリットは「マイナス金利解除によるメリットとは?デメリットもわかりやすく解説」の記事でも紹介していますので、本記事と合わせてご覧ください。

不動産価格が下落する

マイナス金利解除により、不動産価格が下落する可能性があります。マイナス金利は、不動産投資ローンなどの金利を下げる効果があり、借り入れしやすい環境を作っていました。そのため、マイナス金利解除によって次のような影響が考えられます。

マイナス金利解除による影響
  • 住宅ローン等の金利が上昇し、借り入れ額が減少
  • 借り入れ額の減少に伴い、購入可能な価格帯の物件が減少
  • 需要の低下により、不動産価格が下落

つまり、マイナス金利解除は借り入れコストを上げるため、購入者の減少需要の低迷を招き、不動産価格の下落要因となります。不動産価格の動向を見極めつつ、金利動向にも注視する必要があるでしょう。

なぜ金利が上がると不動産価格が下がる?

日本では賃金が伸び悩んでいる上に、金利上昇でローンの返済負担が大きくなることに加え、多くの国民が高金利での住宅購入を手控えることが考えられます。日本の平均年収は、バブル崩壊後から現在に至るまで、ほとんど変わっていません。収入が伸びない上に、金利上昇に伴うローン返済額が増えれば、住宅を購入する人は少なくなるでしょう。

一言メモ

こうした状況の中で金利が上昇すれば、住宅の購入を控えることになり、結果的に不動産価格が下がると考えられます。

変動金利の新規借り入れの金利が上がる可能性がある

マイナス金利政策の解除により、変動金利型の不動産投資ローンの金利が上昇する可能性があります。また、金融機関によっては、変動金利型の不動産投資ローンの優遇幅を縮小する可能性もあるでしょう。

優遇幅とは?

優遇幅とは、変動金利型不動産投資ローンの金利が、市場金利に比べて割安に設定されていることです。優遇幅が縮小されれば、変動金利型不動産投資ローンの金利水準が相対的に高くなり、新規で借り入れた場合の返済負担が増えてしまう恐れがあります。

ただし、優遇幅の縮小は金融機関の判断次第です。マイナス金利解除後も優遇幅を維持する金融機関もあると考えられるため、今後の動向を注視する必要があります。

固定金利への影響は不透明である

固定金利への影響は今のところ不透明です。一般的に、金利上昇局面では、長期金利は短期金利よりも上昇幅が抑えられる傾向にあります。そのため、短期金利が大きく上がれば、固定金利との金利差が縮小します。

一言メモ

現状の金融緩和縮小観測の影響や、金融機関の資金調達環境の変化によっては、固定金利の上昇幅が大きくなるリスクがあるでしょう。不動産購入を検討中の方は、今後の金利動向に十分注意してください。

マイナス金利解除時に不動産を購入する際のポイント

マイナス金利解除時に不動産を購入する際のポイント

不動産購入は大きな決断ですが、金利上昇期は不動産価格の値下がり傾向があり、購入のチャンスでもあります。金利の変動が不動産購入に与える影響を理解し、賢明な判断を下すことが重要です。以下で、マイナス金利解除時に不動産を購入するポイントをご紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。

無理のない金額を借り入れる

不動産購入の際の借り入れ金は、返済負担が重くならない範囲で決めることが重要です。返済負担が重くなると、生活に支障が出る恐れがあります。一般的に、不動産投資ローンの融資限度額は、年収の7倍~10倍程度と言われています。 しかし、これは一般的な目安であり、生活費やローン返済以外の支出などで異なります。

世帯年収 借り入れ可能額の目安
500万円 3,500万円〜5,000万円
1,000万円 5,000万円〜1億円
一言メモ

上記の表はあくまで目安です。不動産購入時には収支を徹底的に洗い直す必要があります。余裕を持った借り入れ額を設定し、生活に無理が生じないよう心がけましょう。

変動金利を選ぶ際は繰上返済資金を積み立てる

変動金利は、金利が上昇すると毎月の返済額が増える可能性があります。そのため、金利上昇に備えて、余裕資金を準備しておくことが賢明です。

具体的には、以下の2つの方法が考えられます。

余裕資金を準備する方法
  • 定期預金などで資金を積み立てる
  • 最初から返済額に上乗せして支払う

①定期預金などで資金を積み立てる

金利上昇時に定期預金を解約し、繰上返済資金に充てます。 目安額は、金利が2%上昇した場合の年間増加額×数年分が理想です。

②最初から返済額に上乗せして支払う

金利が2%上昇した場合の返済額に合わせた額を最初から支払います。 もし、金利が上がらなければ、その分を繰上返済に充てましょう。

金利上昇時に繰上返済をしてローン残高を減らすと、返済額の上昇を抑制できます。

一言メモ

変動金利を選ぶ場合は無理のない範囲で資金を積み立てておき、将来の金利上昇に備えると安心です。

定期的に金利の動向を確認する

マイナス金利政策の解除に伴い、今後の金利動向に注意しましょう。特に変動金利の不動産投資ローンを組んでいる方は、以下のような方法で金利変動に伴う家計への影響を常に把握しておく必要があります。

金利の動向を確認する方法
  • 新聞やWebニュースで金融政策の動向を確認する
  • 金利上昇時には家計への影響をシミュレーションする

特に、変動金利型の不動産投資ローンを組んでいる方は、上記の確認を行うと良いでしょう。金利が上昇した際には、家計への影響額を試算し、必要に応じて固定金利への切り替え繰上返済を検討してください。

一方、固定金利型の住宅ローンでも、次の借り換え時期に備えて、金利動向を注視する必要があります。金利上昇が見込まれる場合は、早めの借り換えを検討するといった対策が求められます。定期的な金利動向の確認は、将来の家計への影響を事前に把握し、適切な対策を立てるために欠かせません。

金利タイプはシミュレーションで判断する

不動産投資ローンの金利タイプの選択は、金利動向予測だけでなく、ご自身の収入や返済能力を踏まえた上で、シミュレーションを活用して総合的に判断することが重要です。

具体的には、以下の2つのシミュレーションを行うことをおすすめします。

金利タイプのシミュレーション方法
  • 固定金利と変動金利のシミュレーション
  • 金利上昇時の家計へのシミュレーション

固定金利と変動金利のシミュレーション

金利タイプ 長所 短所
固定金利 将来の金利上昇リスクがない 金利が下がった際の恩恵がない
変動金利 金利が下がれば支払い額が減る 金利が上がれば支払い額が増える

上記のような長所と短所を踏まえ、ご自身の収入将来の生活設計に合ったタイプを選択してください。

金利上昇時の家計へのシミュレーション

変動金利を選択する場合、金利がどの程度上昇したら家計が圧迫されるかをシミュレーションすることが重要です。金利が上がった際は、繰上返済なども検討しておきましょう。

一言メモ

このように不動産投資ローンのシミュレーションを行い、金利動向予測と合わせて総合的に判断することで、ご自身に最適な金利タイプを選ぶことができます。

専門家に相談する

不動産購入は長期的な影響があるため、専門家に相談することをおすすめします。不動産業者やファイナンシャルプランナーなどの専門家は、以下のようなアドバイスをしてくれるでしょう。

専門家からもらえるアドバイス
  • 地域の不動産相場や物件の適正価格の判断
  • 金利の動向に合わせた物件選び
  • お客様の年収や資産に見合った不動産投資ローンの組み立て
  • 物件購入からローン返済までの全体的なシミュレーション

特に地域の不動産相場は、一般の方が把握するのは難しいため、専門家に相談するのがベストです。また、不動産投資ローンは長期に渡るため、金利動向を見誤ると大きな損失を被る可能性があります。専門家のアドバイスを仰げば、的確な判断が可能です。

また、ある程度の金融の知識がないと、固定金利の返済総額を変動金利が上回るような金利上昇が起きるかどうかの判断が難しいです。固定と変動のどちらを選ぶべきか迷うときも、専門家に相談するのが賢明です。専門家なら、お客様の状況に合わせた最適な金利タイプを提案してくれます。

一言メモ

加えて、物件の購入から売却までの一連の流れも専門家が詳しく説明してくれるので、安心して不動産取引ができるでしょう。

マイナス金利解除による不動産についてのよくある質問

マイナス金利解除による不動産についてのよくある質問

マイナス金利解除による不動産への影響を不安に感じる方も多いでしょう。最後に、マイナス金利解除による不動産についてのよくある質問をご紹介します。

不動産への影響による不安を少しでも解消できれば幸いです。

マイナス金利解除で上がる株は?

マイナス金利解除で金利が上昇すると、銀行や保険会社など金融株の業績が改善する可能性があります。金利上昇が金融機関の貸出収益を押し上げるためです。株価上昇が期待できる銘柄は、以下のような株です。

マイナス金利解除で上がる株
  • 地方銀行関連株
  • 大手都市銀行株
  • 生損保株
  • ノンバンク

金利上昇で収益が改善しやすい金融株は、値上がり期待が高まります。特に地方銀行は収益の大部分を貸出業務に依存しているため、利益拡大による収益改善効果が大きいと考えられます。

一言メモ

一方、資金調達コストの上昇で業績が悪化しやすい鉄鋼や設備投資関連などの景気敏感株は株価下落リスクが高まるでしょう。

マイナス金利解除でマンションの価格はどうなる?

金利上昇に伴う不動産価格の下落が予想されますが、建設コストの高騰により、マンションの価格は上昇が続いている状況にあります。都心部のマンションは、需要の根強さから価格下落はゆるやかですが、当面は不動産投資ローン金利の上昇により、購入のハードルが高くなる可能性があるでしょう。

そのため、購入を検討する際は先述した不動産を購入する際のポイントに留意する必要があります。さらに、不動産投資ローン金利の上昇タイミングだけでなく、マンション価格がどこまで高騰するかも見極めることも重要です。

一言メモ

冷静に市場動向を見極め、自身の財務状況に合わせた適正価格の物件選びをしましょう。

イールドカーブ・コントロール(YCC)とは?

イールドカーブ・コントロール(YCC)とは、日本銀行が長期金利を一定の水準に誘導するための政策です。長短金利操作とも呼ばれ、長期金利と短期金利の誘導目標を操作し、適切な水準に維持することを目的としています。イールドカーブは直訳すると利回りの曲線という意味で、利回り(金利)と償還期間との相関性をグラフにしたものです。

縦軸が金利、横軸が返還までの残存期間とし、曲線状のグラフが描かれ、カーブの種類によって「順イールド」「逆イールド」に区別されます。

具体的には、長期国債の買い入れ額を調整し、長期金利を一定範囲内に抑え込むことを狙っていました。しかし、マイナス金利解除に伴い、日本銀行がイールドカーブ・コントロールの撤廃を決めました。 2013年に始まった大規模な金融緩和政策は事実上終了し、金融政策は正常化に向けて新たな段階に入ったのです。

マイナス金利解除の影響は弊社にご相談ください

マイナス金利解除の影響は弊社にご相談ください

マイナス金利の解除による不動産への影響は大きいです。金利上昇に伴い、不動産価格が下落する可能性があります。また、変動金利の新規借り入れ金利が上がる恐れもあるでしょう。一方で、固定金利への影響は現時点では不透明です。そのため、金利上昇時に不動産を購入する際は、以下のポイントに留意する必要があります。

  1. 無理のない金額を借り入れる
  2. 変動金利を選ぶ場合は、繰上返済資金を積み立てる
  3. 定期的に金利の動向を確認する
  4. 金利タイプは、シミュレーションで判断する
  5. 不動産の専門家に相談する

不動産投資ローンの金利は経済環境に大きく影響されます。購入を検討する際は、市況を注視し、慎重に判断することが肝心です。不動産投資の成果を高める鍵は、賢い金利交渉物件選びにあります。しかし、どのように金利交渉を進めれば良いのか、自分に合った物件を見つけられるのかなどの不安を抱える方も多いのではないでしょうか。

アデプトマネジメントは、そんな皆様の不動産投資を力強くサポートいたします。豊富な物件情報と金融機関との信頼関係に基づき、お客様の希望に合致した物件探しや有利な金利条件でのローン組成をご提案いたします。ぜひ、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

この記事の編集者

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アデプトマネジメント編集部

【宅地建物取引業】大阪府知事(2)第59728号
【賃貸住宅管理業】国土交通大臣(1)第002807号

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