オーナーチェンジによる家賃更新時の値上げトラブルとは?

オーナーチェンジによる家賃値上げトラブルとは?

家賃の更新時に突然の値上げ通知を受け、困惑していませんか?特にオーナーチェンジが絡むと、値上げの正当性や対応に悩む方も少なくありません。本記事では、家賃値上げの法的根拠や、オーナーチェンジ時のトラブル事例、そして家賃値上げトラブルを未然に防ぐ方法まで網羅的に解説します。

この記事を読めば、不当な家賃値上げから身を守り、安心して賃貸生活を送るための具体的な知識と対策が手に入ります。

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オーナーチェンジと家賃値上げの背景

賃貸物件にお住まいの方が直面する可能性のある「家賃の値上げ」は、その理由が多岐にわたります。中でも、オーナーチェンジ(所有者の変更)がきっかけで家賃の値上げが検討されるケースは少なくありません。

この章では、オーナーチェンジの基本的な意味から、家賃値上げがなぜ検討されるのか、その背景にある理由を詳しく解説します。

オーナーチェンジとは何か

オーナーチェンジとは、賃貸中の不動産の所有者が変更されることを指します。具体的には、アパートやマンション、一戸建てなどの賃貸物件が売買され、その所有権が旧オーナーから新オーナーへと移転する状況です。

オーナーチェンジが行われても、入居者が結んでいる賃貸借契約は原則としてそのまま新オーナーに引き継がれます。

一言メモ

通常、オーナーチェンジが発生した場合、新オーナーまたは管理会社から入居者に対して、所有権移転の通知が書面で行われます。この通知には、新しい家賃の振込先や、今後の連絡先などが記載されていることが一般的です。

家賃値上げが検討される主な理由

家賃の値上げは、オーナーチェンジの有無にかかわらず、さまざまな要因によって検討されます。

しかし、オーナーチェンジがあった場合には、新オーナーの経営方針や投資回収の視点から、特に値上げが検討されやすい傾向にあります。

賃貸借契約の更新における家賃値上げの法的根拠

法的根拠の画像

賃貸借契約の更新時に家賃の値上げを求められた場合、その要求が法的に正当なものであるかを確認することが重要です。家賃の値上げは、オーナー(賃貸人)の自由な判断のみで決定されるものではなく、借地借家法に基づき、特定の要件を満たす必要があります。

この章では、家賃値上げに関する法的根拠と、オーナーチェンジがそのプロセスに与える影響について詳しく解説します。

借地借家法における借賃増減請求権

家賃(借賃)の値上げや値下げについては、借地借家法第32条に「借賃増減請求権」として定められています。この条文は、賃貸人(オーナー)だけでなく、賃借人(入居者)にも、経済情勢の変化などに応じて家賃の増額または減額を請求する権利を認めています。

この請求権は、当事者間の話し合いによる合意が原則ですが、もし合意に至らない場合は、最終的に裁判所に家賃の増減額を求める調停や訴訟を提起することができます。裁判所は、公正な判断に基づいて適正な家賃を決定します。

家賃値上げが認められる正当事由とは

借地借家法第32条に基づき家賃の値上げが認められるためには、「正当な事由」が存在することが必要です。単にオーナーが収益を増やしたいという理由だけでは、値上げは認められません。

以下に、家賃値上げが認められる主な正当事由とその具体例をまとめました。

家賃値上げが認められる正当事由の類型、具体的な内容と判断基準
正当事由の類型 具体的な内容と判断基準
周辺の家賃相場との比較 最も重要な判断要素の一つです。 同様の立地、築年数、間取り、設備を持つ周辺の類似物件と比較して、現在の家賃が著しく低い場合、値上げが認められる可能性があります。不動産会社やインターネットの物件情報サイトで調査した周辺相場が根拠となります。
固定資産税等の公租公課の増額 物件にかかる固定資産税や都市計画税などの公租公課が大幅に増額された場合、その増加分を家賃に転嫁することが正当事由として認められることがあります。
土地・建物の価格変動 物件が所在する地域の土地価格や建物の建築費が、社会経済情勢の変化により著しく上昇した場合、その価値に見合った家賃への改定が検討されることがあります。
経済事情の変動 インフレーションの進行や物価の上昇など、社会全体の経済状況が大きく変動し、現在の家賃が実質的に不相当になった場合も、値上げの正当事由となり得ます。
維持管理費の増加 物件の維持管理に必要な修繕費、管理費、光熱費などが大幅に増加した場合、その費用を家賃に反映させることが正当事由となることがあります。ただし、オーナーの個人的な都合による費用増加は含まれません。
一言メモ

これらの事由は単独ではなく、複合的に考慮され、総合的に判断されます。一方的な通知だけで値上げが強制されることはなく、入居者側も適正な家賃を主張する権利があります。

家賃値上げトラブルの具体的なケースと対策

対策の画像

賃貸借契約の更新時における家賃の値上げは、借主にとって大きな負担となる可能性があります。しかし、貸主が一方的に家賃を値上げしたり、不当な条件を突きつけたりするケースも少なくありません。

ここでは、実際に起こりうる家賃値上げトラブルの具体的なケースと、それらに対する適切な対策を詳しく解説します。

突然の家賃値上げ通知への対応

家賃の値上げは、通常、賃借人が検討できる十分な期間を設けて書面で通知されることが一般的です。しかし、突然口頭で伝えられたり、書面であっても十分な説明や根拠が示されなかったりするケースがあります。

このような突然の通知に対しては、冷静かつ慎重に対応することが重要です。

通知内容の確認と初期対応

まず、通知された内容を正確に把握し、以下の点を確認しましょう。

家賃値上げ通知の確認ポイント
  • 値上げの理由
    どのような理由で家賃の値上げが必要なのか、具体的な説明を求めましょう。周辺相場の上昇、固定資産税の増加、設備の更新費用などが挙げられることがあります。
  • 値上げ幅
    現在の家賃からどれくらい値上げされるのか、その金額を確認します。
  • 新家賃の適用時期
    いつから新しい家賃が適用されるのかを確認します。
一言メモ

安易に同意の返事をしたり、サインをしたりすることは避けましょう。まずは「検討します」と伝え、情報を収集する時間を確保することが賢明です。

交渉に向けた準備と交渉時のポイント

通知内容を確認したら、交渉に向けた準備を進めます。

家賃交渉に向けた確認・準備事項と具体的な内容
確認・準備事項 具体的な内容
周辺の家賃相場調査 同エリア、同規模、同築年数、同設備の物件の家賃を複数調査し、客観的なデータとして準備します。不動産ポータルサイトや地域の不動産会社で情報収集しましょう。
物件の状況確認 物件の設備老朽化、修繕状況、利便性の変化など、家賃値上げの根拠を否定する要素がないか確認します。
貸主への質問 値上げの具体的な根拠や、値上げしない場合の貸主側の不利益などを、書面で質問し、回答を求めます。
一言メモ

交渉の際は、感情的にならず、収集した客観的なデータ(周辺相場など)を基に冷静に話し合うことが重要です。減額交渉が難しい場合でも、値上げ幅の縮小や、一定期間の値上げ猶予などを提案することも可能です。

更新拒否をちらつかせた値上げ交渉

貸主が家賃値上げに応じない借主に対し、「値上げに応じなければ更新しない」と更新拒否をちらつかせて交渉を有利に進めようとするケースがあります。

しかし、借地借家法によって借主の居住権は強く保護されており、貸主が一方的に更新を拒否することは容易ではありません。

更新拒否をちらつかせられた場合の対策

貸主から更新拒否をほのめかされた場合、以下の対策を講じましょう。

更新拒否をちらつかせられた場合の対策のステップと詳細な行動
対策のステップ 詳細な行動
冷静に状況を把握 貸主がどのような理由で更新を拒否しようとしているのか、その根拠を具体的に書面で確認します。
正当事由の有無を確認 貸主が主張する理由が、借地借家法上の正当事由に該当するかどうかを判断します。多くの場合、正当事由は認められにくいです。
更新の意思を明確に伝える 内容証明郵便など、証拠が残る形で「契約更新を希望する」旨を貸主に伝えます。
専門家への相談 弁護士や司法書士、不動産関連の相談窓口に早めに相談し、法的なアドバイスを受けましょう。特に、更新拒絶通知が届いた場合は、通知の有効期限が迫る前に対応が必要です。
安易な退去の回避 貸主の不当な要求に屈し、安易に退去に応じないことが重要です。
一言メモ

正当事由がない更新拒絶は無効であり、借主は引き続き物件に居住する権利があります。貸主が立ち退き料を提示してきた場合でも、それはあくまで交渉の選択肢の一つであり、受け入れる義務はありません。

値上げ後の退去を迫られるケース

家賃の値上げ交渉が決裂したり、借主が値上げに同意しなかったりした場合に、貸主が「それなら出ていってほしい」と退去を迫るケースがあります。

しかし、これも更新拒否と同様に、貸主が一方的に借主を退去させることはできません。

不当な退去要求への対応

賃貸借契約期間中に、貸主が一方的に契約を解除し、借主を退去させることは、原則として認められません。

契約期間が満了し、更新時に退去を迫られる場合も、前述の更新拒絶の正当事由がなければ、借主は退去に応じる義務はありません

退去を迫られた場合の具体的な対策

貸主から退去を迫られた場合は、以下の対策を講じましょう。

退去を迫られた場合の具体的な対策
  • 退去要求の根拠を確認する
    貸主がどのような理由で退去を求めているのか、その根拠を明確に書面で確認します。
  • 退去に応じない意思を明確に伝える
    口頭ではなく、内容証明郵便など証拠が残る形で、退去に応じない旨を貸主に伝えます。
  • 安易に合意書にサインしない
    貸主から退去に関する合意書や解約書を提示されても、内容をよく確認し、納得できない場合は安易にサインしないでください。一度サインしてしまうと、後から撤回が難しくなります。
  • 立ち退き料の交渉
    もし貸主が正当事由を補完するために立ち退き料を提示してきた場合は、その金額が適切かどうかを検討します。しかし、立ち退き料を受け取る義務はありません。
  • 専門家への相談
    最も重要なのは、早期に弁護士や司法書士、不動産関連の相談窓口に相談することです。法的なアドバイスを受け、適切な対応策を検討しましょう。裁判所の調停や訴訟も視野に入れる必要が出てくる場合があります。
一言メモ

最も重要なのは、早期に弁護士や司法書士、不動産関連の相談窓口に相談することです。法的なアドバイスを受け、適切な対応策を検討しましょう。裁判所の調停や訴訟も視野に入れる必要が出てくる場合があります。

立ち退き料の相場や立ち退きを求めるオーナー側の視点について知りたい方は「立ち退き料の相場はいくら?立ち退きをしてもらう流れとともに解説」の記事をご参照ください。

家賃更新時の値上げトラブルを未然に防ぐには

トラブルの画像

家賃更新時の値上げトラブルは、事前に適切な準備と知識を持つことで、その発生リスクを大幅に低減できます。

ここでは、入居前から更新時に至るまで、賃借人が取るべき具体的な対策について解説します。

契約書の内容確認の重要性

賃貸借契約書は、オーナーと賃借人の間の権利義務を定めた最も重要な書類です。入居時だけでなく、更新時にも必ず内容を再確認する習慣をつけましょう。

特に、家賃更新時の値上げトラブルを防ぐためには、以下の点に注目して確認することが不可欠です。

契約書の確認項目と確認すべきポイント
確認項目 確認すべきポイント
家賃増減額に関する条項 家賃の増減額について具体的な規定があるか、どのような場合に増額・減額請求が可能とされているかを確認します。
更新料の有無と金額 更新料の有無、金額、支払い時期が明記されているかを確認します。更新料は法律で義務付けられているものではなく、特約として定められている場合にのみ発生します。
契約期間と更新手続き 契約期間が何年であるか、更新手続きはどのような方法で行われるか、更新拒絶の通知期間などを確認します。
特約事項 通常の契約条項以外に、特別な取り決め(特約)がないか、またそれが賃借人にとって不利益な内容でないかを慎重に確認します。特に、借地借家法の規定より賃借人に不利な特約は無効となる場合があります。
修繕義務と原状回復 建物の修繕義務の所在や、退去時の原状回復の範囲について、一般的なガイドライン(例:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」など)に沿っているかを確認します。
解約予告期間 賃借人が契約を解除する場合の予告期間が何ヶ月であるかを確認します。
一言メモ

もし契約書の内容に不明な点や疑問がある場合は、署名・捺印をする前にオーナーや管理会社に質問し、納得いくまで説明を求めましょう。

日頃からのオーナーや管理会社とのコミュニケーション

家賃更新時の値上げトラブルを未然に防ぐためには、日頃からオーナーや管理会社との良好なコミュニケーションを心がけることが非常に重要です。

良好な関係は、いざという時の交渉を円滑に進めるための土台となります。

更新時の通知内容をしっかり確認する

賃貸借契約の更新時期が近づくと、オーナーや管理会社から「更新通知」が送られてきます。この通知内容を安易に承諾せず、細部までしっかり確認することが、家賃値上げトラブル回避の鍵となります。

一言メモ

家賃値上げの通知があった場合でも、すぐに同意する必要はありません。 期間内に異議を述べ、交渉の意思を示すことで、法定更新に移行し、従前の家賃で住み続ける権利が保護される場合があります。

今後、資産形成手段の一つとして不動産投資を始める方もおられるでしょう。不動産投資で失敗しないための危険エリアの見分け方や安全な投資戦略について知りたい方は「不動産投資で失敗しない!危険エリアの見分け方と安全な投資戦略」の記事をご参照ください。

オーナーチェンジによる家賃更新時の値上げトラブルまとめ

オーナーチェンジによる家賃更新時の値上げは、多くの借主にとって不安なトラブルの種となり得ます。しかし、借地借家法により、家賃の値上げには正当な理由が必要であり、一方的な要求は認められにくいのが実情です。適正な家賃相場を把握し、冷静に交渉に臨むことが重要です。

万が一トラブルに発展した場合でも、弁護士や不動産関連の相談窓口など、適切な相談先を活用することで解決への道が開けます。契約内容の確認や日頃からのコミュニケーションを通じて、未然にトラブルを防ぐ意識を持つことが、安心して賃貸生活を送るための鍵となります。

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このコラムを書いた人

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アデプトマネジメント編集部

【宅地建物取引業】大阪府知事(2)第59728号
【賃貸住宅管理業】国土交通大臣(1)第002807号

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このコラムを監修した人

佐々木(宅建士)
佐々木(宅建士)
宅建士

大学卒業後、大手芸能事務所に所属。

現在は不動産オーナー様のお困りごとを隅々までヒアリングし適切なアドバイスや提案をしております。また、10年間続けた野球で培った熱意かつ慎重さを活かしてオーナー様へ迅速な対応をさせていただきます。

持ち味は何より年齢が若いことです。現在24歳。

趣味:サウナ・麻雀・プロ野球観戦(阪神ファンです。)