これから不動産投資を始めたい投資初心者の方へ。オーナーチェンジ物件は、購入直後から家賃収入が得られる魅力的な選択肢です。しかし、既存の賃貸借契約の引き継ぎなど、特有のデメリットも存在します。この記事では、オーナーチェンジ物件の定義から、初心者におすすめのメリット、失敗しないためのデメリットと注意点、物件選びのポイントまで、投資判断に必要な情報を網羅的に解説。
この記事を読めば、オーナーチェンジ物件の全貌を理解し、あなたに最適な投資戦略を見つけられるでしょう。
オーナーチェンジ物件とは?不動産投資の新たな選択肢
不動産投資を検討する際、多くの物件の中から最適なものを選ぶことは容易ではありません。その選択肢の一つとして近年注目を集めているのが「オーナーチェンジ物件」です。これは、すでに賃貸借契約を結んだ入居者が住んでいる状態で売買される不動産物件を指します。
購入者は物件の所有権だけでなく、既存の賃貸借契約も引き継ぐことになり、通常の空室物件とは異なる特性を持つため、特に不動産投資初心者にとって魅力的な選択肢となり得ます。
オーナーチェンジ物件の基本的な定義
オーナーチェンジ物件とは、売買契約締結時点で、すでに賃借人(入居者)が居住している状態の収益物件を指します。
購入者は物件の所有権を取得すると同時に、その物件に付随する既存の賃貸借契約(賃貸人としての地位)も承継することになります。
どんな不動産がオーナーチェンジ物件になるのか
オーナーチェンジ物件として市場に流通する不動産は多岐にわたります。主に居住用不動産が中心ですが、事業用不動産も含まれることがあります。
これらの物件がオーナーチェンジとなる背景には、売主の転勤、相続、資金繰りの都合、あるいはより大きな投資への切り替えなど、様々な事情があります。
物件種別とオーナーチェンジ物件となる主な理由、物件の特徴
物件種別 | オーナーチェンジ物件となる主な理由 | 物件の特徴 |
---|---|---|
区分マンション | 投資用として購入された区分所有マンションが、オーナーのライフステージの変化(転勤、家族構成の変化など)や資金計画の見直しにより売却されるケースが最も一般的です。 | 比較的少額から投資を始めやすく、都市部の物件が多い傾向にあります。 |
一棟アパート・マンション | 複数の住戸からなる一棟のアパートやマンション全体を売却するケースです。売主の事業承継、大規模な不動産ポートフォリオの見直し、あるいは老朽化による建て替え計画の一環として売却されることがあります。 | 複数の入居者がいるため、空室リスクを分散しやすい特徴があります。 |
戸建て賃貸 | 元々自宅として使用していた戸建てを転勤などで賃貸に出していたオーナーが、そのまま入居者付きで売却するケースや、投資目的で購入した戸建て賃貸を売却するケースです。 | ファミリー層からの需要が高く、長期的な入居が期待できることが多いです。 |
店舗・事務所(商業用物件) | テナントが入居している状態で売買される商業用不動産です。企業の事業再編、資金調達、または投資家によるポートフォリオの入れ替えなどの理由で流通します。 | 賃料が高額な傾向にありますが、入居テナントの業績や景気変動の影響を受けやすい側面もあります。 |
これらの物件は、売主がすでに賃貸経営を行っており、その経営を継続したい買主を探している場合にオーナーチェンジ物件として市場に出回ります。既存の入居者がいるため、物件の収益性がある程度確立されている点が、投資家にとっての魅力となります。
比較的少額で投資を始めやすい形態にワンルームマンション投資があります。ワンルームマンション投資の成功ポイントについて知りたい方は「ワンルームマンション投資のからくりとは?成功するポイントを解説」の記事をご参照ください。
オーナーチェンジ物件のメリット
不動産投資を始める際、多くの投資家が「空室リスク」や「初期費用」といった不安を抱えます。しかし、オーナーチェンジ物件には、これらの不安を軽減し、投資初心者でも安心して始めやすい多くのメリットがあります。
ここでは、オーナーチェンジ物件がなぜ初心者におすすめなのか、その具体的なメリットを詳しく解説します。
購入直後から家賃収入が得られる
オーナーチェンジ物件の最大の魅力は、購入と同時に家賃収入が発生する点です。
オーナーチェンジ物件は、既に賃貸借契約が締結されており、入居者が居住している状態で購入するため、引き渡し後すぐにキャッシュフローが安定します。
オーナーチェンジ物件と一般的な空室物件との比較
比較項目 | オーナーチェンジ物件 | 空室物件 |
---|---|---|
家賃収入開始時期 | 購入直後から | 入居者決定後 |
空室期間 | なし | 入居者募集期間が発生 |
入居者募集費用 | 基本的に不要 | 広告費、仲介手数料などが必要 |
空室リスクを低減できる
不動産投資における最大の懸念事項の一つが「空室リスク」です。入居者がいなければ家賃収入は途絶え、ローンの返済や維持管理費が自己負担となります。
オーナーチェンジ物件は、購入時点で既に入居者がいるため、この空室リスクを大幅に低減できます。
利回り予測がしやすい
投資物件の収益性を測る重要な指標が「利回り」です。オーナーチェンジ物件は、既存の賃貸借契約に基づいて家賃収入が確定しているため、利回り予測が非常にしやすいというメリットがあります。
購入価格と年間家賃収入が明確であるため、表面利回りや実質利回りを正確に計算でき、より現実的な投資計画を立てることが可能です。
不動産投資の利回りの最低ラインについて知りたい方は「不動産投資の利回りの最低ラインは?狙い目の物件の特徴も合わせて解説」の記事をご参照ください。
入居者募集の手間がかからない
通常、空室物件を購入した場合、入居者を募集するための活動(不動産会社への依頼、物件情報の公開、内見対応、入居審査など)に多くの時間と労力が必要です。
しかし、オーナーチェンジ物件では、既に入居者がいるため、これらの入居者募集にかかる時間や労力を大幅に削減できます。
既存の管理体制を引き継げる場合がある
不動産投資において、物件の管理は非常に重要な業務です。オーナーチェンジ物件の場合、前のオーナーが委託していた管理会社や管理体制を、そのまま引き継ぐことができる場合があります。
これにより、新たに管理会社を探したり、管理委託契約を一から結び直したりする手間が省けます。また、既存の管理会社は物件や入居者の状況を把握しているため、引き継ぎ後もスムーズな賃貸管理が期待できます。
オーナーチェンジ物件のデメリットと注意点
オーナーチェンジ物件は魅力的な側面を持つ一方で、特有のデメリットやリスクも存在します。これらの注意点を事前に把握し、適切な対策を講じなければ、不動産投資で失敗する可能性もあります。
投資を成功させるためにも、潜在的なリスクを理解し、慎重な検討が不可欠です。
既存の賃貸借契約を引き継ぐリスク
オーナーチェンジ物件を購入するということは、売主と入居者間で締結されている既存の賃貸借契約を、買主であるあなたがそのまま引き継ぐことを意味します。
これは法的な義務であり、契約内容を自由に書き換えることはできません。
オーナーチェンジによって引き継ぐ項目と内容、注意点
項目 | 内容と注意点 |
---|---|
家賃 | 現在の家賃額をそのまま引き継ぎます。相場より低い家賃設定の場合、購入後の収益性が低くなる可能性があります。 |
敷金・礼金 | 入居者から預かっている敷金は、売主から買主へ引き継がれます。退去時の原状回復費用などに充当されるため、その額と預かり状況を正確に確認する必要があります。礼金は既に売主が受領しているため、買主は受け取れません。 |
契約期間 | 残りの契約期間をそのまま引き継ぎます。期間が長く残っている場合、買主が自由に契約内容を変更したり、退去を求めたりすることが困難になります。 |
特約事項 | ペット飼育の可否、楽器演奏の可否、更新料の有無など、賃貸借契約書に記載されている全ての特約事項が買主に適用されます。売買契約前にこれらの内容を詳細に確認することが重要です。 |
特に、入居者との間にトラブル(家賃滞納、近隣トラブルなど)が発生していた場合、その問題も引き継ぐことになります。売買契約前に、既存の賃貸借契約書の内容を徹底的に確認し、不明点があれば専門家へ相談することが不可欠です。
入居者を選べないことの課題
通常の賃貸物件投資では、購入後に自身で入居者募集を行い、審査を経て入居者を選定できます。しかし、オーナーチェンジ物件では、既に居住している入居者がいるため、あなたが新しい入居者を選ぶことはできません。
この「入居者を選べない」という点は、入居者の属性や生活習慣の不透明さ、家賃滞納リスクのような課題につながる可能性があります。
オーナーチェンジ物件の立ち退き交渉の方法や成功させるコツについて知りたい方は「オーナーチェンジ物件の立ち退き交渉の方法や成功させるコツを解説」の記事をご参照ください。
物件の現況確認が難しい場合がある
オーナーチェンジ物件は、入居者が居住中の状態で売買されることがほとんどです。そのため、購入希望者が物件内部を自由に内見し、隅々まで現況を確認することが非常に難しいというデメリットがあります。
家賃の見直しが難しい可能性
既存の賃貸借契約を引き継ぐため、購入後すぐに家賃を自由に値上げすることは非常に困難です。
家賃の増額請求は民法や借地借家法で定められており、原則として入居者との合意が必要です。
オーナーチェンジ物件の購入を検討する際は、現在の家賃が周辺相場と比較して適正であるかを十分に調査することが重要です。もし相場よりも低い場合は、その家賃水準で投資が成り立つかを慎重に判断する必要があります。
投資初心者必見 オーナーチェンジ物件を選ぶ際のポイント
オーナーチェンジ物件は、購入直後から家賃収入が得られるという大きな魅力がある一方で、既存の契約や入居者を引き継ぐ特性から、通常の空室物件とは異なる注意点が存在します。
投資初心者の方が失敗せず、安定した不動産投資を実現するためには、以下のポイントを徹底的に確認することが不可欠です。
既存の賃貸借契約内容を徹底確認
オーナーチェンジ物件の購入は、既存の賃貸借契約をそのまま引き継ぐことを意味します。そのため、契約内容の隅々まで理解しておくことが、将来的なトラブルを避ける上で最も重要です。
引き渡し前に必ず、賃貸借契約書、重要事項説明書、物件概要書などの関連書類を詳細に確認しましょう。
既存の賃貸借契約の内容を曖昧なままにしておくと、購入後に予期せぬ費用が発生したり、入居者との間でトラブルに発展したりする可能性があるため注意が必要です。
入居者の属性や支払い状況を把握する
オーナーチェンジ物件の大きな特徴は、既に入居者がいることです。安定した家賃収入を得るためには、現在の入居者が信頼できるかどうかを事前に把握することが非常に重要です。
特に現在の入居者の属性(職業や家族構成、入居期間)や家賃の支払い状況などは、契約前にしっかり確認するようにしましょう。
物件の修繕履歴と管理状況をチェック
物件の物理的な状態は、長期的な安定経営に直結します。特にオーナーチェンジ物件の場合、入居者がいるため内部の確認が難しいケースも少なくありません。
そのため、過去の修繕履歴と現在の管理状況を詳細に確認することが不可欠です。
これらの情報から、購入後に発生する可能性のある突発的な修繕費用や、将来的な大規模修繕の負担を予測し、投資計画に組み込む必要があります。
適正な家賃相場を調査する
現在の家賃が適正かどうかを判断することは、将来的な家賃収入の安定性や利回りの維持に大きく影響します。
購入前に必ず、周辺地域の類似物件の家賃相場を徹底的に調査しましょう。
信頼できる不動産会社を見つける
オーナーチェンジ物件の購入は、通常の不動産売買以上に専門的な知識が求められます。そのため、信頼できる不動産会社を見つけることが成功への鍵となります。
不動産会社を探す過程では、以下のようなポイントをチェックするようにしましょう。
- オーナーチェンジ物件の取扱実績
オーナーチェンジ物件の売買に慣れている不動産会社は、特有のリスクや手続きを熟知しており、適切なアドバイスを提供してくれます。 - 情報提供の透明性
物件の良い面だけでなく、デメリットやリスクについても正直に説明してくれる会社を選びましょう。質問に対して曖昧な回答をしたり、都合の悪い情報を隠したりする会社は避けるべきです。 - 購入後のサポート体制
物件の引き渡し後も、賃貸管理の引き継ぎや入居者対応など、継続的なサポートが期待できるかどうかも重要な判断基準です。管理業務委託の実績や評判も確認しましょう。
複数の不動産会社と相談し、比較検討することで、自身のニーズに合った最適なパートナーを見つけることができるでしょう。
オーナーチェンジのメリットとデメリットを解説まとめ
オーナーチェンジ物件は、購入直後から家賃収入が得られる点や空室リスクを低減できる点など、不動産投資初心者にとって魅力的な選択肢です。しかし、既存の賃貸借契約や入居者の状況をそのまま引き継ぐため、契約内容の徹底確認や入居者の属性把握が成功の鍵となります。
メリットだけでなくデメリットも理解し、物件の現況や管理状況を詳細に調査することが重要です。信頼できる不動産会社と連携し、適切な準備を行うことで、オーナーチェンジ物件は安定した不動産投資を実現する強力な手段となるでしょう。