不動産投資は資産形成を目的に行われますが、税金対策としても効果があります。税金対策をすることでトータルの課税額を抑えられて、節税効果が得られるのです。
この記事では、所得税・住民税・贈与税・相続税それぞれの税金対策の方法を解説していきます。不動産投資の税金対策効果のシミュレーション方法や税金対策を行う際の注意点、不動産投資で法人化をするメリットデメリットなども紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
不動産投資で税金対策ができる税金の種類は?
不動産投資はさまざまな方法で節税ができるので、税金対策を目的の一つとしながら投資を行っている方もいます。しかし、具体的な対策方法についていまいち理解できていないという方もいるでしょう。
不動産投資で税金対策ができる税金の種類としては、下記の4つが挙げられます。
- 所得税
- 住民税
- 贈与税
- 相続税
下記にて、それぞれの税金の対策方法について紹介していきます。
【所得税・住民税】不動産投資の税金対策
まずは、不動産投資において所得税と住民税を節税する方法について解説していきます。所得税と住民税の税金対策について見ていきましょう。
- 経費の計上をする
- 減価償却の計上をする
- 損益通算をする
それぞれの対策方法について紹介します。
経費の計上をする
不動産投資は「賃貸業」になるので、業務上必要となる費用は経費として計上できます。経費として所得から差し引かれると、課税される所得税が減額されて節税効果につながります。
不動産投資で経費に含まれる主な項目は、下記の通りです。
- ローン金利
- 保険料
- 管理委託料
- 修繕費
- 不動産投資にかかる税金
- 司法書士や税理士への報酬金
- 仲介手数料・支払手数料
- 交通費
- 通信費
- 交際費
- その他
ただし、経費はあくまでも「業務上必要となる費用」なので、業務に関係のない費用は計上できません。関係のない費用まで経費に含めてしまうと、税務調査の対象になったり金融機関などからの信頼を失ったりする可能性があるので注意してください。
不動産投資で計上できる経費については、「不動産投資で経費として計上できる・できない項目をそれぞれ一覧で解説」の記事をご参照ください。
減価償却の計上をする
減価償却とは、家屋や機械などの長期的に利用ができて時間とともに資産価値が減少するものを購入する際などにかかった費用を、少しずつ経費として計上することです。不動産投資の場合は、物件の購入費用などが減価償却費に含まれます。
例えば、償却期間が30年の物件を1,500万円で購入した場合に計上できる減価償却費は、毎年50万円(1,500万円 ÷ 30年)です。実際に毎年50万円の支出がなくても、経費上は支出があると判断されるので、その分の所得控除が受けられて節税につながります。
損益通算をする
損益通算とは、不動産投資の赤字金額を給与所得・事業所得などの別の収益から差し引くことができる仕組みです。
不動産投資で得た収入が経費や減価償却の支出金額を下回った場合は、赤字となります。赤字を損益通算することによって、給与所得・事業所得も含めた全体の所得金額を小さくできるので、所得税を抑えられて結果的に税金が安くなります。
【贈与税】不動産投資の税金対策
続いては、贈与税の税金対策について見ていきましょう。贈与税は、財産を無料で譲り受けた際に受け取った人が支払う税金のことで、下記のように算出します。
贈与税 = (贈与された財産の合計額 – 110万円)× 税率 – 控除額
計算に使用する税率や控除額は基礎控除適用後の財産額によって異なるので、下記の表を参考に計算をしてみてください。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
参考:「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁」
物件の贈与は現金を贈与するよりも節税につながるので、ここでは理由も含めて贈与税の節税の仕組みを詳しく解説します。
不動産の贈与は評価額が下がる
贈与税がどのくらいかかるのかを知るためには、まず土地や物件などの金銭的価値を把握して、国税庁が定める評価方法に従って計算をして「相続税評価額」を算出します。このとき、不動産の相続税評価額は実際に売買される価格(時価)よりも2割から3割ほど下がる傾向です。そのため、同じ価値の現金よりも贈与税が安くなり、節税につながります。
不動産の贈与は登録免許税や不動産取得税が課されるので、贈与財産の5%ほどの税金がかかるという点に注意しておきましょう。
【相続税】不動産投資の税金対策
贈与税と同様に節税効果が見込めるのが、相続税です。相続税は亡くなった人から受け継ぐ財産に課される税金のことで、贈与をする人が亡くなっているかどうかが贈与税との違いとなります。贈与税の計算方法は次の通りです。
課税遺産総額 = 課税価格の合計額 – 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)
詳しい計算方法については、「No.4152 相続税の計算|国税庁」のページを参考にしてみてください。
課税対象の評価額が下がる
相続税も贈与税と同じように「相続税評価額」によって計算します。そのため、相続税も物件の評価額が時価より2~3割ほど下がり、課税対象額が少なくなって相続税が下がるという仕組みです。
相続税の場合は、借地や借家を相続した際にさらに相続税評価額が下がる可能性があるという点も頭に入れておくと良いでしょう。
不動産投資の税金対策効果をシミュレーション
ここまで、不動産投資による税金対策について解説してきました。ここからは実際にどのくらいの効果があるものなのか、税金対策効果をシミュレーションしていきましょう。以下では、不動産所得が赤字になって損益通算が適用された場合の所得税の節税パターンを例として解説していくので、参考にしてみてください。
まず、消費税は下記の方法で計算をします。
所得税額 = 課税所得 × 税率 – 控除額
計算に必要な税率や控除額は以下の表をご参照ください。
引用:「No.2260 所得税の税率|国税庁」
これらの計算方法や表を元にシミュレーションを行ったのが下記の表です。
給与所得が1,000万円の会社員の場合 | |
---|---|
不動産投資の収入 | 300万円 |
不動産経費・減価償却費 | 500万円 |
不動産所得 | △200万円 |
不動産投資をしていない場合の所得税 | 1,764,000円 (税率33%で計算し控除額を差し引いた場合) |
不動産投資をした場合の所得税 | 1,204,000円 (税率23%で計算し控除額を差し引いた場合) |
上記の例では、56万円の節税ができたことになります。不動産投資をする際は、5年分くらいを目安にシミュレーションして、節税効果と不動産収入のバランスを考えると良いです。
不動産投資の法人化による税金対策
不動産収入が増えてきたら、法人化をして税金対策をする方法もあります。ここでは、どのような場合に法人化をするのが良いのか、どのような理由で節税ができるのかを、法人化するメリットデメリットとともに解説していきます。
法人化をするメリット
不動産投資によって得られる所得が多くなると課税所得が増えるので、不動産投資にかかる所得税も増加します。不動産で順調に所得が増えている方は、法人名義で物件を取得することで節税効果が得られるようになります。
個人で不動産投資を行う場合は個人に所得税がかかるので、所得税・住民税の最大税率は55%です。一方で、法人化をすると課される税金が「法人税」になるため、最大税率を25%以下まで抑えられます。
個人/法人 | 最大税率 |
---|---|
個人 | 55% |
法人 | 25% |
法人として不動産を所有していると、家族を役員にして不動産収入を役員報酬にすることができるのです。計画的に財産を動かしていけば、贈与税・相続税の節税にもなるでしょう。
法人化をするデメリット
法人化をすることによるデメリットとしては、会社を設立をするために手間や費用がかかる点が挙げられます。株式会社を設立する場合は、少なくとも20万円程度の費用がかかるでしょう。
また、これまで個人で行っていた不動産投資の収入のみで生活していた人は、国民健康保険から社会保険への切り替えが必要になります。社会保険は国民健康保険と比べると負担額が増えるので注意してください。
さらに、事業規模に応じて毎年一定の法人住民税を払わなければいけないという点も、頭に入れておきたいポイントです。一般的に、法人住民税は個人の住民税より高くなる傾向があります。
不動産投資の税金対策で高い効果が得られる人の特徴
不動産投資の税金対策で高い効果が得られる人の特徴としては、主に下記の2つが挙げられます。
- 課税所得が900万円を超えている人
- 青色申告で確定申告をしている人
税金対策効果のシミュレーションで所得税の税率について解説した通り、課税所得金額が900万円を超えると所得税の税率が33%となります。つまり、損益通算をして所得額が900万円を少しでも下回れば、税率は23%まで下がるのです。
また、不動産投資で収益を得た場合や控除を受ける場合などは確定申告を行う必要がありますが、その際には「青色申告」を選ぶようにしましょう。一般的な「白色申告」とは異なり、青色申告で不動産所得と納税額を正しく申告すると、納税額が最大で65万円控除される制度があります。控除制度も活用すれば、より高い節税効果が得られるでしょう。
不動産投資の青色申告については「不動産投資で青色申告をするための条件は?注意点と合わせて解説」の記事をご参照ください。
税金対策を行う際の注意点は?
不動産投資で税金対策を行う際には、いくつか注意しなければいけない点があります。最後に税金対策を行う際の注意点を3つ解説していくので、税金対策を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
- 節税だけを意識して投資をしない
- 物件の特徴にも注目する
- 出口戦略を事前に検討しておく
それぞれ詳しく解説していきます。
節税だけを意識して投資をしない
不動産投資は節税をするために行うものではなく、本来は収益を得たり将来の資産形成をしたりするために行うものです。節税だけを意識して行っていると、最終的な収支がマイナスになってしまう恐れがあるので注意してください。
例えば、減価償却費を計上するために物件を長期間所有しすぎて耐用年数を過ぎてしまい、需要が低下してなかなか売れなくなってしまったなどの失敗例が考えられます。売却価格が安くなると、収支の合計で考えた場合に大きな赤字となってしまうでしょう。節税だけを意識するのではなく、全体の収支のバランスも検討するようにしてください。
不動産投資で失敗する原因については「不動産投資で失敗する原因とは?失敗しないためのポイントを解説」の記事で解説をしているので、ぜひ参考にしてみてください。
物件の特徴にも注目する
不動産投資で節税効果も得るためには物件選びが重要です。一般的には、新築物件よりも中古物件を購入したほうが節税効果が高いとされています。理由としては、中古物件は新築物件よりも購入したときからの耐用年数が短くなるため、1年あたりに計上できる減価償却費が高くなることが挙げられます。
しかしその分、減価償却によって節税効果が得られる期間も短くなるので、売却のタイミングもしっかりと検討しておきましょう。長期的に見てどのくらい節税できるのかを意識することが重要です。
出口戦略を事前に検討しておく
不動産投資を行う際は、事前に出口戦略を検討しておくことが大切です。減価償却を行えるのは住宅の耐用年数の期間内だけなので、長期的に物件を所有していると減価償却費の計上による節税ができなくなります。
さらに、耐用年数を過ぎた物件は需要が低下して売却しにくくなってしまうので、少しでも高く売れるように耐用年数の期間内に売却するのがおすすめです。
投資用物件を購入する際に、どのタイミングで手放すのか、いくらくらいで売却をしたいのかなどを検討し、出口戦略を早めに考えておきましょう。
不動産投資の税金については弊社にご相談ください
不動産投資では、税金対策を行うことによってさまざまな税額の負担を軽減できる可能性があります。例えば、所得税・住民税は、経費や減価償却費の計上、損益通算によって節税効果が期待できます。贈与税・相続税は物件を贈与することで現金よりも評価額が下がり、課税対象額が少なくなる分、節税につながるなどの税金対策が有効です。不動産投資における税金対策は、不動産と税金のどちらの知識も持っている人でなければ、正しく行うのは難しいでしょう。
不動産投資の税金対策にお悩みの方は、ぜひアデプトマネジメントにご相談ください。
アデプトマネジメントは不動産取引の実績が豊富で、税理士や公認会計士などの専門家へのネットワークもあります。不動産投資の税金に関する相談は、ぜひお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。