マイナス金利解除によるメリットやデメリットを解説します。金利が上がれば家計や企業の資金繰りが改善する一方、不動産投資ローンの返済負担が増すなどの影響があります。マイナス金利解除の影響を理解して、賢明な対応を心がけましょう。
日銀のマイナス金利政策が長期化する中、いつの日か金利が値上がりすることが予想されています。金利が上昇すれば、預金者や年金受給者にとってはメリットが期待できます。
一方、借り手には返済負担の増加などのデメリットも生じます。マイナス金利解除による影響は家計や企業に大きく及ぶでしょう。本記事では、マイナス金利解除のメリットとデメリットをわかりやすく解説します。
マイナス金利とは
マイナス金利とは、中央銀行が民間の金融機関に対して課す預金準備金などの金利をマイナスにする金融政策です。民間の金融機関は、日本銀行に一定額の準備預金を維持する義務があります。準備預金には通常、プラスの金利が付きますが、マイナス金利の下では逆にマイナスの金利が課されます。つまり、金融機関が日本銀行に預けた準備預金の一部が徴収されるのです。
具体的には、銀行や信用金庫などの金融機関が、日本銀行に法定準備金などの形で預けている資金に対して、マイナスの金利が課されます。法定準備金は、不測の事態に備えて確保しておく資金ですが、マイナス金利が適用されるとその一部が徴収されてしまいます。
通常であれば、預金にはプラスの金利が付き、一定以上の預け入れをするほど受取利息が増えますが、マイナス金利では逆になるため、預け入れ額が多いほど手数料負担が重くなります。
マイナス金利はあくまで異例の金融緩和策であり、金融機関に対する資金放出を促すことで、企業や家計への資金供給の増加、ひいては景気の下支えを狙った政策です。
マイナス金利が解除になった理由
引用元:みんなの保険屋さん
日本銀行はマイナス金利政策を2016年に導入しましたが、2024年3月に解除したことを発表しました。17年ぶりにマイナス金利が解除になり、金利解除後は政策金利が0.1%に引き上げられたのです。これまで日銀は、2%の物価上昇を目指していました。毎年2%程度の物価上昇が続けば景気も順調で、経済状況の安定が見込めると考えていたためです。
物価上昇率が継続的に2%を超え、賃上げ率が33年ぶりの高水準になった状況から、お金を使う良い経済の流れができつつあり、今後も継続するだろうと判断されました。
このような状況を受け、日銀はマイナス金利の必要性が薄れたと判断し、解除に踏み切った背景があります。
今後はマイナス金利解除により、金融機関の収益改善や円安進行の抑制が期待されます。
一方で、長期金利の上昇や景気減速のリスクもあるため、日銀は物価や景気動向を注視しながら、ゆるやかな金融引き締めを進めていく方針です。
マイナス金利解除によるメリット
長年続いたマイナス金利政策がついに解除されたニュースに、多くの人が「金利が上がるのは困る」と不安を感じているのではないでしょうか?しかし、マイナス金利解除には、実は家計や企業にとっていくつかのメリットが生まれることになります。
- 預金や定期預金の金利が上昇する
- 個人向け国債の金利が上昇する
- 生命保険の保険料が安くなる
預金や定期預金の金利が上昇する
マイナス金利が解除になると預金や定期預金の金利が上がり、利息収入が増える可能性があります。大手都市銀行などでは、普通預金の金利を従来の0.001%から20倍の0.02%に引き上げました。
そのため、今後はこれまで以上に、どこの金融機関にお金を預けると有利になるのかを敏感に探る必要があるでしょう。マイナス金利解除後の金利上昇は、金融機関によってばらつきがあるため、自分に有利な条件を提示する金融機関を選ぶことが重要です。
定期的に複数の金融機関の預金金利を比較し、高い金利を提示する金融機関にお金を預けることをおすすめします。
また、預ける期間によっても金利が異なるため、短期か長期かでメリットを検討する必要があります。例えば、資金の出し入れの頻度が高ければ短期の方が都合が良く、長期間お金を貯める場合は長期の金利が高い方を選ぶべきでしょう。
自身の資産運用ニーズに合わせて、最適な預金期間と金融機関を選ぶことが賢明です。
個人向け国債の金利が上昇する
個人向け国債は、国が発行する債券を個人でも買いやすくした国債です。金利が固定されるタイプと金利が変動するタイプがありますが、どちらも上昇傾向にあります。
個人投資家にとっては国債の運用がより有利になる可能性がありますが、金利上昇による既存国債の価格下落リスクにも注意が必要です。マイナス金利解除によって国債運用は有利になる一方で、リスク管理が重要になります。
生命保険の保険料が安くなる
マイナス金利解除により、生命保険会社が運用する資金の運用利回りが上がることが期待できます。生命保険会社は、契約者の生命保険料を積み立てておき、将来保険金を支払うために「責任準備金」を備えています。責任準備金は、国が定めた標準利率に基づき、保険会社ごとに運用するときの利率を決めて積み立てるしくみです。
運用するときの利率は、保険会社が契約者に約束する運用利回りで、保険料は見越した収益分を割り引いて計算されます。マイナス金利の解除で、責任準備金の運用利回りが上がるため、利率を引き上げることができ、保険料が安くなる可能性があります。
保険料の変更は、契約内容や保険種類によっても異なるので、詳細に関しては必ず各保険会社に確認しましょう。
マイナス金利解除によるデメリット
マイナス金利が解除されると、金利の上昇に伴いさまざまなメリットが生まれる一方で、デメリットも存在します。マイナス金利解除には光と影があるため、利用者全体の利益を考えると、一朝一夕には判断できない難しい課題です。
しかし、長期的な経済成長を実現するには、マイナス金利解除によるデメリットを冷静に受け止め、国民一人一人が建設的な議論を重ねていく必要があるのではないでしょうか。
- 不動産投資ローンの金利が上昇する
- 融資を受けにくくなる
- 債券価格が下がる可能性があ
不動産投資ローンの金利が上昇する
マイナス金利解除により、金融機関の資金調達コストが上がります。そのため、不動産投資ローンの金利も上昇する可能性があるでしょう。
変動金利の不動産投資ローンの大半は、金融機関が企業向けに貸し出す際の短期プライムレートを参考に決められています。日本銀行が定める政策金利は、短期プライムレートに影響を及ぼすため、マイナス金利が解除されたことにより変動金利が上昇する可能性があります。
金利上昇への備えは必要不可欠です。固定金利への切り替えや期間短縮など、金利上昇への対策を検討しましょう。
融資を受けにくくなる
マイナス金利解除により、銀行の融資姿勢が慎重になる可能性があります。金利が上昇すると、企業や個人の借入コストが高くなるためです。そのため、銀行は資金需要者の返済能力をより厳しく審査する恐れがあるでしょう。融資を受けにくくなると以下のようなリスクが考えられます。
- ローンの借入が困難になるケースが増える
- 事業資金の調達が難しくなり、企業の資金繰りが圧迫される
- 消費者金融からのキャッシングが制限される
特に中小企業や個人事業主、さらに一般消費者への影響も懸念されます。金利上昇による家計への負担増が原因で、倒産や債務不払いのリスクが高まるためです。
このように、マイナス金利解除は借り手にとって資金調達を難しくする可能性があります。
債券価格が下がる可能性がある
債券価格とは、企業や政府が資金調達のために発行する借用証書のようなものの値段です。債券価格と金利は、いわばシーソーゲームの関係にあるため、金利が上がれば債券価格は下がり、金利が下がれば債券価格は上がるしくみです。
そのため、マイナス金利の解除で、市場金利が上昇するため、既に発行されている債券の価格は下落する可能性があります。
特に、5年超10年以下の長期債の価格下落が大きくなります。満期までの残存期間が長いため、金利変動の影響を長期間受けるためです。
債券を保有する個人投資家は、価格下落による含み損に注意が必要です。
マイナス金利解除によるメリット・デメリット
メリット |
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デメリット |
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マイナス金利解除のメリットに関するよくある質問
長年続いたマイナス金利政策がようやく解除されたため、今後の変化への疑問や不安を抱えている人も多いはずです。最後に、マイナス金利解除のメリットに関するよくある質問をご紹介します。マイナス金利解除へのメリットへの理解を深め、上手に対応するヒントが見つかるかもしれません。
マイナス金利解除で円高になる?
マイナス金利解除による円高への影響は、短期的には進む可能性がありますが、長期的には円安が予想されます。短期的な円高の理由は、マイナス金利解除により国内外の金利差が縮小するためです。
一方で、今回のマイナス金利解除はとてもゆるやかなものであるため、当面もゆるやかな金利引き上げ傾向が続くことから、為替相場は相変わらず円安基調が予想されます。世界各国が政策金利を引き上げている中、日本は長らくマイナス金利政策を取っていたことが大きな要因となっています。
当面は為替市場での円安傾向が続くと考えられますが、中長期的には日本の金利水準が世界に追いつくにつれ、円高への転換も視野に入ってくるでしょう。
マイナス金利解除で株価はどうなる?
マイナス金利解除により、株価の大きな変動が予想されます。金融機関の収益が改善すると見込まれることから、金融株が買われる可能性があります。一方で、企業の資金調達コストが上がり、収益の減少が懸念されるため、全体としては株価下落のリスクもあるでしょう。
具体的には、株価上昇が予想される業種は銀行・証券・生命保険・消費関連株などです。一方、株価の下落が予想される業種は、資金調達規模の大きい企業・不動産・輸出関連株などです。
また、マイナス金利解除でお金が借りにくくなると、企業は設備投資や新しい商品の開発・研究が困難になります。結果的に、個人の消費が減り、売上が減るため、企業の業績の悪化が予想され、株価は下落傾向になると考えられるでしょう。さらに、マイナス金利解除に伴う円高が進めば、輸出関連株の業績が圧迫される可能性もあります。
このように、マイナス金利解除を受けて、株価はさまざまな影響を受けることが予想されます。
マイナス金利解除の影響は弊社にご相談ください
マイナス金利解除には、メリット・デメリットの両面があります。メリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
- 預金金利や定期預金の金利が上昇する
- 個人向け国債の金利が上昇する
- 生命保険の保険料が安くなる
一方、デメリットは、不動産投資ローンの金利上昇や債券価格下落の可能性などが考えられます。マイナス金利解除による影響は大きいため、お金の動かし方を慎重に検討する必要があるでしょう。
近年はマイナス金利政策に便乗した特殊詐欺が増えています。「有利な資産運用」などの宣伝文句に注意し、過剰な広告に踊らされないよう注意してください。
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