サブリース契約が解約できないのはなぜ?借地借家法や正当事由を解説

サブリース契約が解約できない理由とは?借地借家法や正当事由について解説

サブリース契約は、所有する物件の運営をサブリース会社に委託する契約です。サブリース契約を結ぶことで、空室リスクの不安を軽減でき、安定した収入を得られます。

一方で、サブリース契約を解約したくてもできないケースがあり、困っているオーナーも少なくありません。本記事では、サブリース契約が解約できないとされる理由やできるケース、解約するポイントを解説します。

サブリース契約の仕組み

サブリース契約の仕組み

サブリース契約とは、物件オーナーとサブリース会社の間で賃貸借契約を結び、サブリース会社がオーナーに代わって入居者と賃貸借契約を交わす仕組みです。

オーナーは所有する物件の管理運営をサブリース会社に一括で委託でき、毎月定額の賃料を受け取れます。

サブリースイメージ

賃貸物件を所有する場合、オーナーは常に空室リスクと向き合わなければいけません。しかし、サブリース契約を結ぶことで、空室リスクの不安を軽減でき、安定した収入を得られます。

おすすめポイント

賃貸経営が初めてで物件管理に不安を感じている方や本業が別にあり物件管理に十分な時間を割けない方にとって、サブリース契約は効果的な選択肢です。

サブリース契約で騙されないコツに関しては、「サブリースは詐欺も多い!悪徳業者に騙されないためのコツを紹介」の記事でも紹介していますので、本記事とあわせてご覧ください。

サブリース契約が解約できないとされる理由

サブリース契約が解約できないとされる理由

サブリース契約が解約できないとされる理由は、下記の2つが挙げられます。

  • サブリース会社の同意が必要
  • 高額な違約金が発生する場合がある

サブリース契約の具体的な内容については、「サブサブリース契約とは|トラブルの予防方法や解決方法を解説」の記事でも紹介していますので、本記事とあわせてご覧ください。

サブリース会社の同意が必要

サブリース契約は、物件オーナーとサブリース会社との間で結ぶ賃貸借契約です。つまり、オーナーが貸主、サブリース会社が借主となるため、借地借家法が適用されます。

借地借家法では、借主であるサブリース会社が下記のように保護されるため、サブリース会社の同意がなければ解約が難しいです。

条文 内容
借地借家法27条 賃貸人が借家契約を終了させるには、賃借人に対して解約の申し入れを行ってから6ヶ月経過する必要がある
借地借家法28条 賃貸人が借家契約の解約を申し入れるには、「正当の事由」があると認められる場合でなければならない
一言メモ

借地借家法では、借主が保護されており、正当事由がない限り、賃貸人であるオーナーからの解約申し入れができません。

高額な違約金が発生する場合がある

サブリース契約を解約する場合、高額な違約金が発生することがあります。

違約金の金額は契約内容によって異なりますが、一般的には賃料の数ヶ月とされており、オーナーにとって大きな負担となります。なかには、一年分の賃料に相当する違約金を設定しているケースもあるようです。

また、サブリース会社が解約に応じない場合や借地借家法28条に定められた「正当の事由」が認められない場合は、違約金とは別に立ち退き料の支払いが必要な場合があります。

このように違約金や立ち退き料が負担となり、サブリース契約が解約できないケースがあります。

サブリース契約が解約できるケース

サブリース契約が解約できるケース

サブリース契約が解約できるケースには、下記3つが挙げられます。

  1. オーナーや親族が物件に住む
  2. 住宅ローンの返済が難しいなどやむを得ない場合
  3. 再開発等で売却する場合

1.オーナーや親族が物件に住む

オーナーや親族が物件に住む場合、サブリース契約を解約できる可能性が高まります。借地借家法28条では、賃貸人が借家契約の解約を申し入れるには「正当の事由」が必要とされていますが、オーナー自身が契約物件に住むことは正当事由として比較的認められやすいです。

注意ポイント

オーナーの親族が住む場合は、正当事由として少し弱くなります。この場合、親族が住むことの必要性や緊急性を丁寧に説明し、サブリース会社の理解を得なければいけません。また、オーナーが物件を自己使用する場合でも、立ち退き料などの条件交渉が必要なケースがあります。

一言メモ

契約の解約を検討する際は、契約書の解約条項をよく確認し、解約に際して発生する違約金や立ち退き料などの条件を把握しておくことが重要です。

2.住宅ローンの返済が難しいなどやむを得ない場合

住宅ローンの返済が難しいなどやむを得ない理由の場合、解約が認められる可能性があります。オーナーが物件の建築費用などで住宅ローンを組んでいる場合、返済義務が発生します。

しかし、下記のような理由からローンの支払いが困難になり、オーナー自身の生活維持が難しくなることがあります。

ローンの支払いが困難になる理由一例
  • 設備の維持費用や建物の修繕費用などのランニングコストの増加
  • 予定外の大規模修繕の発生
  • サブリース会社から支払われる保証家賃の下落(年数の経過とともに下がるのが一般的)

このような理由からローンの返済が困難になれば、サブリース契約解約の正当事由として認められやすくなります。

3.再開発等で売却する場合

区画の再開発や物件のエリアが公共工事の一部になっているなど、やむを得ず売却する必要がある場合も、サブリース契約解約の正当事由として認められることがあります。具体的には、行政が行う区画整理事業道路の拡幅工事などです。

注意ポイント

区画整理事業の場合は、注意が必要です。区画整理事業では、物件の価値が上昇し、オーナーが大きな利益を手にする可能性があります。このような場合、オーナーが得る利益を考慮し、立ち退き料を要求されることがあります。

サブリース物件を売却する方法に関しては、「サブリース物件を売却する方法は?流れや注意点、高く売却するポイントを紹介」の記事でも紹介していますので、本記事とあわせてご覧ください。

サブリース契約を解約する手順

サブリース契約を解約する手順

サブリース契約を解約する手順は、下記の通りです。

  1. 契約書の解約条項を確認する
  2. サブリース会社に解約通知書を送付する
  3. 契約解除の手続き・交渉

【手順1】契約書の解約条項を確認する

サブリース契約を解約する際は、まず契約書に記載されている解約に関する条項を確認します。
具体的には、下記の点を確認しましょう。

解約に関する条項
  • 解約の申し出期限
    オーナーが解約を申し入れる際の期限が定められているか
  • 解約に伴う違約金
    解約する際に発生する違約金の有無と金額
  • 解約可能なケース
    契約解除が認められるケースが明記されているか

ただし、オーナー都合でサブリース契約を解約する場合、解除条項の内容よりも、借地借家法28条が優先されます。借地借家法28条では、オーナーが賃貸借契約の解約を申し入れるには、「正当の事由」を提示した上で、解約日の6ヶ月以上前に解約の通知をしなければいけません。

【手順2】サブリース会社に解約通知書を送付する

契約書の解約条項を確認したら、サブリース会社に解約通知書を送付します。
解約通知書には、下記項目を明記します。

  • 解約通知日
  • サブリース会社の名称と住所
  • オーナーの氏名、住所、電話番号、捺印
  • 解約の根拠となる契約書の条項
  • 対象物件の名称所在地、住戸番号
  • 契約期間(開始日と終了日)
  • 備考欄(正当事由に該当する事情の詳細など)

解約通知書は、全日本不動産協会などでフォーマットが用意されているので上手く活用しましょう。

【手順3】契約解除の手続き・交渉

解約通知書の到着後、サブリース会社から解約の合意が得られれば、解約通知書に記載した契約終了期日をもって、サブリース契約は正式に解約となります。契約書の解約条項に違約金の定めがある場合は、サブリース会社が指定する金額を、決められた期日までに支払わなければいけません。

一言メモ

サブリース会社から解約の合意が得られない場合は、解約に向けて交渉が必要です。借地借家法28条に基づき、オーナーが正当事由を明記した上で解約を申し入れても、サブリース会社がそれを認めない場合、交渉が長引くことがあります。サブリースに詳しい不動産会社や管理会社、または不動産トラブルを取り扱う弁護士などに相談するのがおすすめです。

サブリース契約の解約後に必要な手続き

サブリース契約の解約後に必要な手続き

サブリース契約が無事に解約できたら、下記2つの手続きが必要です。

  • 新しい管理会社との契約
  • 入居者と賃貸借契約を締結する

新しい管理会社との契約

サブリース契約を解約した後、物件の管理を自分で行うのは大変な労力を要します。そのため、オーナーは新たに信頼できる管理会社と契約を結び、物件の管理を委託することが多いです。

サブリース契約の解約後に管理会社の選定や契約をはじめると、物件の管理が一時的に止まってしまい、トラブルに発展する可能性があります。そのため、サブリース契約の解約手続きと並行して新しい管理会社の選定を進めておくと安心です。選定が進んでいれば、サブリース契約が解約された後、スムーズに新しい管理会社と契約して物件の管理をスタートできます。

入居者と賃貸借契約を締結する

サブリース契約が解約されると、サブリース会社と入居者との間で結ばれていた賃貸借契約も自動的に終了します。そのため、オーナーは入居者と新たに賃貸借契約を締結する必要があります。

具体的な手順は以下の通りです。

  1. 入居者に管理会社変更の通知を行う
  2. 新たな賃貸借契約書を作成する
  3. 賃貸借契約の合意書を交わす
一言メモ

入居者とのトラブルを防ぐためにも、管理会社変更の通知と新たな賃貸借契約の締結をスムーズに行いましょう。

サブリース契約をスムーズに解約するポイント

サブリース契約をスムーズに解約するポイント

サブリース契約をスムーズに解約するポイントは、下記の通りです。

  • 情報収集・契約内容をしっかり確認する
  • トラブル時の対応や相談先を把握しておく

情報収集・契約内容をしっかり確認する

サブリース契約をスムーズに解約するためには、契約内容の確認事前の情報収集が重要です。まず、サブリース契約を結ぶ前に、分からない点や不安な点があれば、サブリース会社に積極的に質問し、しっかり納得してから契約を結びます。

  • サブリース契約によってどのようなリスクが考えられるのか
  • サブリース会社が提案する事業計画は適正か
  • 解約条項はどのようになっているのか

これらをしっかりと確認・検討することで、サブリース契約のリスクを把握し、トラブルを未然に防げます。

トラブル時の対応や相談先を把握しておく

サブリース契約を結ぶ際は、トラブル発生時の対応や相談先をあらかじめ把握しておくと安心です。サブリース契約の解約に関するトラブルは、専門的な知識が必要となるケースがあるため、一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けましょう。

具体的には、下記のような相談先が考えられます。

相談先 サポート内容
不動産会社 解約手続きや解約後の物件管理のアドバイスを得られる
サブリース経営相談センター 解約手続きや交渉方法などを提案してくれる
法テラス 弁護士の紹介や法律相談を低価格で受けられる
一言メモ

サブリース契約を結ぶ際は、トラブル発生時の相談先を把握し、いざというときにスムーズに相談できるようにしておきましょう。

サブリース契約が解約できない理由と解約するポイントのまとめ

サブリース契約が解約できない理由と解約するポイントのまとめ

本記事では、サブリース契約が解約できないとされる理由やできるケース、解約するポイントを解説しました。

サブリース契約は、借地借家法により借主であるサブリース会社が保護されるため、正当事由がない限り解約が難しいとされています。また、高額な違約金の発生も解約が困難になる要因の一つです。ただし、オーナーや親族が物件に住む場合や住宅ローンの返済が難しい場合などは、解約が認められる可能性があります。

スムーズに解約するには、事前の情報収集契約内容の確認トラブル時の相談先を把握しておくことが大切です。

アデプトマネジメントは、大阪を拠点に全国規模で事業を展開している不動産会社です。アデプトマネジメントは、サブリース契約に関する豊富な経験とノウハウ、税理士や司法書士の先生方や金融機関との強固なネットワークが強みです。

サブリース契約でお悩みの方は、ぜひアデプトマネジメントにお任せください。ご相談は、お問い合わせフォームから受け付けております。

この記事の編集者

アデプトマネジメントのロゴ

アデプトマネジメント編集部

【宅地建物取引業】大阪府知事(2)第59728号
【賃貸住宅管理業】国土交通大臣(1)第002807号

アデプトマネジメントではお客様のお悩み解決の為に不動産に関わる有益な情報を発信しております。弊社代表の髙橋は約20年に渡り売買・賃貸仲介・管理・投資等の不動産業務に携わってきました。その経験を活かし、不動産業務全般のご相談に対応可能です。投資用マンションの売却査定もお任せください。