不動産投資ローンは、利用者の属性や資産状況、物件の収益性などによって適用される金利が違うのが特徴です。金融機関ごとの金利相場も大きく異なるため、ご自身の投資目的に最適なローンがどれかを見極める必要があります。
そこで今回は、不動産投資ローンの基礎知識と金利相場に関する情報をまとめました。不動産投資ローンの金利を抑えて、より良い条件で融資を受けたい方は、ぜひご一読ください。
不動産投資ローンとは
「不動産投資ローン」とは、区分けマンションやアパート、戸建てなどに投資する際に利用するローンです。(※「アパートローン」という名称を用いている金融機関もあるのでご注意ください。)
不動産投資ローンの主な特徴は以下の通りです。
- 適用金利が一律ではない
- 金融機関ごとの金利相場に幅がある
- 生命保険の代わりになる
不動産投資ローンを組む際には、利用者の社会的属性や保有資産、物件の良し悪しなどが審査され、その結果次第で金利が決定されます。つまり、融資を申し込んでみないと、ご自身に適用される金利が分からないということです。
各行の金利相場には幅があるため、どの金融機関から融資を受けるかが投資の成否を大きく左右します。ローンを借り換えると信用履歴にキズがつき、その後の融資が受けにくくなるので、融資を受ける金融機関はくれぐれも慎重に選びましょう。
なお、不動産投資ローンを利用する場合、一般的には団体信用保険に加入します。「団体信用保険」とは、加入者に万一のことがあっても、残りの返済を肩代わりしてくれる制度です。生命保険の代わりになるので、必須でない場合でも加入しておいたほうが良いでしょう。
住宅ローンとの違い
不動産投資ローンと住宅ローンは、全くの別物です。ローンの規約違反に当たるので、住宅ローンを利用して投資用の物件を購入することはできません。
不動産投資ローンと住宅ローンとの違いについては、以下の比較表をご覧ください。
(不動産投資ローンと住宅ローンの比較)
項目 |
不動産投資ローン |
住宅ローン |
金利の目安 |
1.0%〜4.5%前後 |
0.5%〜2.0%前後 |
借入限度額 |
年収の10倍〜15倍程度 |
年収の5倍程度 |
不動産投資ローン全体の金利相場は「1.0%〜4.5%前後」で、一般的な住宅ローンの金利よりも高い傾向にあります。
不動産投資ローンの借入限度額は「年収の10倍〜15倍ほど」で、住宅ローンよりも多額の融資に対応可能です。不動産投資ローンを有効活用すれば、レバレッジを効かせて大きな投資ができるでしょう。
固定金利のメリットデメリット
不動産投資ローンの金利プランには、大別すると以下の2種類があります。
- 固定金利
- 変動金利
まずは、固定金利のメリットとデメリットを確認していきましょう。
メリット
「固定金利」のメリットは次のような点です。
- 金利変動のリスクを回避できる
- 返済計画が立てやすい
不動産投資ローンの固定金利プランは、返済期間を通して金利が変わらないのが特徴になります。将来的な金利変動に振り回されず、計画通りに返済できるのが大きなメリットです。投資物件を長期間(30年以上)保有する場合などは、固定金利が向いているでしょう。
デメリット
「固定金利」のデメリットは金利が高いことです。固定金利プランは、金利設定が高め(※変動金利の約1.5倍)な傾向にあります。現在の低金利状況が中長期的に続くと仮定すると、変動金利を選んだ場合よりも返済総額が膨らむのが最大のデメリットといえるでしょう。
変動金利のメリットデメリット
次は、変動金利のメリットとデメリットをチェックしていきましょう。
メリット
「変動金利」の大きなメリットは金利が低いことです。不動産投資ローンの変動金利プランは、固定金利と比べて金利が低めに設定されています。低金利で融資が受けられると、キャッシュフローを良好に保つことが可能なため、資金繰りに余裕が生まれるでしょう。特に、投資物件を短期間(5年〜10年ほど)で売却する場合は、変動金利のほうが有利です。
デメリット
「変動金利」のデメリットは、金利変動のリスクが伴う点です。変動金利プランの場合、将来的に金利上昇のマイナス影響を受ける可能性があります。ただし、金利が変更されても、実際に適用されるのは5年後で、最大でも1.25倍までに留めるのが通例です。つまり、適用金利が頻繁に変更されたり、月々の返済額がすぐに大きくアップしたりする心配はありません。
不動産投資では変動金利が一般的
不動産投資ローンを利用する際には、変動金利プランを選択するのが一般的です。低金利時代の現在は、近々金利が大幅に上昇する事態は考えにくいでしょう。しかし、米国がテーパリング(量的緩和の縮小)に踏み切ったこともあり、日本でも10年、20年先に金利が上昇傾向に転じる可能性はあります。ただ、過度に心配する必要はないので、特別な理由(物件の長期保有など)がない限り変動金利を選んでおくと良いでしょう。
期間選択型固定金利
将来的な金利上昇がどうしても心配な方には、期間選択型固定金利プランという折衷案的な選択肢もあります。「期間選択型固定金利」とは、初めの5年、10年、15年といった期間だけ金利を固定するプランです。固定期間終了後は、固定または変動を選択します。
市場の動向を見極めながら、投資物件を10年〜20年前後で売却する予定の方には、期間選択型固定金利が向いているでしょう。
金融機関ごとの不動産投資ローンの金利相場を比較
不動産投資ローンは、金融機関ごとに金利相場が大きく異なるのが特徴です。以下では、各金融機関の金利相場をチェックしていきましょう。
都市銀行
「都市銀行(三菱UFJ、三井住友、みずほ、りそな、埼玉りそなの5行)」の不動産投資ローンの金利相場は、「1.0%〜2.0%前後」と住宅ローン並に低いのが特徴です。その分、融資の審査は厳しい傾向にあります。審査基準は各行で異なりますが、安定収入が年間1,000万円以上あることが大まかな目安です。
地方銀行
「地方銀行」の金利相場は、「1.5%〜4.5%前後」と幅があるものの、概ね低金利といえます。都市銀行の審査に通らなかった場合は、地方銀行の不動産投資ローンを検討すると良いでしょう。
信用金庫・信用組合
「信用金庫・信用組合」の金利相場は、「2.5%程度」と比較的低金利です。ただし、営業エリアが限定される点に注意しましょう。エリア内にめぼしい物件がある場合は、信用金庫・信用組合の不動産投資ローンを利用するのも一つの方法です。
日本政策金融公庫
「日本政策金融公庫」の不動産投資ローンの金利相場は、「1.2%〜2.0%程度」と都市銀行並の低金利です。民間金融機関とは異なる独自の審査基準や優遇制度を設けているため、他行で融資が受けられない物件でも審査に通る可能性があります。ただし、融資期間が短い(原則10年〜15年)かつ固定金利プランのみなので、利用条件に気をつけましょう。
また、日本政策金融公庫では投資物件の購入を目的とした融資には対応していません。「不動産賃貸業の運転資金」として申請する必要がある点にもご注意ください。
ノンバンク
「ノンバンク系金融機関」の金利相場は、「3.0%〜6.0%前後」と高めです。その分、審査基準が緩かったり、融資期間が長く設定できたりするメリットがあります。しかし、金利が高いとキャッシュフローを良好に保つのが非常に難しくなります。返済に余裕がないと、急な出費などで困るケースもあるはずです。ノンバンク系金融機関の不動産投資ローンは、あくまでも、その他の金融機関で融資が通らないときの最終手段と考えておきましょう。
個別の金融機関(スルガ・横浜・香川各行、西武信金、三井住友T&Fなど)の金利相場が知りたい方は、「不動産投資ローンの金利相場は?金融機関ごとの特徴や変動金利・固定金利の違いを解説」の記事をご参照ください。
低金利で融資を受けるための方法
続いては、低金利で融資を受けるための方法を確認していきましょう。低金利の不動産投資ローンを組むためには、金利相場の低い金融機関を優先的に選ぶのが大原則です。つまり、優先順位は以下のような順番になります。
- 都市銀行
- 地方銀行
- 信用金庫・信用組合
上記の金融機関で融資が受けられない場合は、独自審査の「日本政策金融公庫」または審査が緩めな「ノンバンク」の利用を検討すると良いでしょう。
なお、同じ金融機関で不動産投資ローンを組む場合でも、交渉次第では適用される金利が違ってきます。例えば、以下のような工夫をすると、より低金利で融資が受けられるはずです。
- 以前から利用している金融機関に相談する
- 不動産業者に紹介してもらう
それぞれのポイントをチェックしていきましょう。
以前から利用している金融機関に相談する
以前から頻繁に利用している金融機関がある場合は、不動産投資ローンもその金融機関で組むのがおすすめです。属性や資産状況が既に分かっているため、融資の審査期間が短縮できるでしょう。さらに、これまでの取引実績が信頼度につながるので、金利の値下げ交渉もスムーズに運ぶはずです。
不動産業者に紹介してもらう
ご自身のメインバンクが決まっていない場合は、不動産業者に紹介してもらうのも一つの方法です。
金融機関と提携関係にある不動産業者なら、金利の値下げ交渉を有利に進められるのがメリットといえます。不動産投資ローンの適用金利は交渉次第なので、金融機関との結びつきが強く、交渉に長けた不動産会社を選びましょう。
不動産投資で金利以外に気にするべきポイントは?
不動産投資ローンを組む際に、金利以外で注目するべき点は以下の通りです。
- 融資期間
- 自己資金の割合
各項目ごとに詳細を見ていきましょう。
融資期間
不動産投資に成功する秘訣は、キャッシュフローを常に良好に保つことに他なりません。そのために有効なのは、「金利を抑える」、「融資期間を長くする」の2点です。
希望通りの金利で融資が受けられない場合は、融資期間を長く設定することで対処できます。長期返済は利息の総額が膨らむのがデメリットですが、月々の負担を減らして無理なく返済できるメリットを優先すべきです。
自己資金の割合
不動産投資ローンを組む際に、もう1点気をつけたいのが自己資金の割合です。「自己資金の割合が多い」ほど融資を受ける金額が減るため、余裕を持った返済計画が立てられます。ただし、ある程度の自己資金を手元に残しておかないと運営上の突発的な出費に対応できません。その辺りのバランスを十分考慮しながら、1割〜3割程度の自己資金を投入しておくと良いでしょう。
まとめ
今回は、不動産投資ローンの金利について必須となる知識を一通りご紹介しました。不動産投資ローンは、利用者一人ひとり、あるいは物件ごとに適用される金利が異なるのが特徴です。さらに、交渉次第では、より低金利で融資が受けられる可能性があります。
不動産投資に成功するためには、金融機関とのネットワークがあり、金利交渉を有利に進めることができる不動産会社を選ぶのが最善策です。
不動産投資ローンのご相談や金利の値下げ交渉は、豊富な取引実績を活かして、金融機関と強固な信用関係を築き上げてきたアデプトマネジメントに、ぜひお任せください。