賃貸物件を経営する場合、家賃収入がすべて利益になるわけではありません。必要経費を差し引いた額が利益として手元に入ってくるのです。また、利益が出た分の税金も納めなければいけないので、確定申告をするときのために経費をまとめておく必要があります。
しかし、経費として計上できる項目には決まりがあるため、どこまでなら計上できるのかを把握しておきましょう。この記事では、賃貸物件の経営で経費として計上できる項目・できない項目についてまとめると同時に、注意点についても解説していきます。賃貸物件の経営をされている方は、参考にしてみてください。
賃貸経営で経費になるかどうかの判断基準は?
賃貸経営で経費計上できるかどうかの基準は、賃貸経営で収入を得るためにその経費が必要なのかどうかです。例えば、賃貸経営を行う際は、建物を維持するための管理費用や入居してもらう際の宣伝費用などがかかります。これらの費用は賃貸経営で収入を得るために発生しているので、経費として認められるでしょう。
一方で、個人の家賃などの賃貸経営に関係ない費用に関しては、経費として計上することはできません。次の項目で、賃貸経営で経費になる費用について見ていきましょう。
賃貸経営で経費になる費用は?
ここからは、賃貸経営で経費になる費用を大きく6つの項目に分けて解説していきます。
- 税金
- 減価償却費
- 管理費・管理委託費
- 修繕費
- 保険料
- その他
賃貸経営の経費にお悩みの方は、ぜひご覧ください。
税金
賃貸経営を行う際に発生する税金は、経費として計上できます。賃貸物件を所有する際は、印紙税や事業税、登録免許税、都市計画税などが必要になりますので、これらは経費計上しましょう。不動産経営に関する固定資産税や不動産所得税も経費として計上可能です。ここでは、法人税や所得税は除外されますので注意してください。
減価償却費
賃貸物件の建物と設備に関しては、減価償却費の計上ができます。建物は構造体で耐用年数が異なりますが、国の定める法定年数に合わせて減価償却しましょう。軽量鉄骨造の場合は19年、木造の場合は22年、鉄骨造の場合は30年です。設備は、給排水設備や電気設備などが計上できます。
管理費・管理委託費
賃貸物件を管理するためには管理費用がかかります。管理人を常駐させる場合は、管理人の人件費も発生するでしょう。また、エレベーターや立体駐車場、宅配ボックス、オートロックシステムなどの建物の保守管理も行わなければいけません。
日常的な清掃や定期清掃なども外注する必要がありますが、これらの費用も管理費用として計上可能です。管理会社に一括して業務を代行してもらう場合は、管理代行費用や管理委託費用となります。
修繕費
賃貸物件は、築年数が経過していくごとにさまざまな箇所に不良が出てくるものです。修繕が必要な箇所としては、壁の塗装剥がれや排水溝修理などが挙げられるでしょう。入居者が退去した場合は退去後のクリーニングが必要ですが、これも修繕費となります。建物の価値を高めるための工事に関しては、修繕費には計上できないので注意してください。
保険料
賃貸物件を経営する際に加入しなければならない保険は保険料として計上可能です。加入する保険は、火災保険や地震保険、施設賠償保険などです。あくまでも賃貸物件の経営に関する保険なので、個人の保険などは対象外です。
その他
その他にも、賃貸経営で支払う費用として計上できるものはいくつかあります。賃貸物件の管理に必要になった事務用品や消耗品費、物件の管理の際に移動した交通費、経営に関係する通信費、経営に関して弁護士や税理士に手続きを依頼した場合の報酬などが計上可能です。物件の購入を不動産会社に仲介してもらった場合は、仲介費用も経費として扱われます。
賃貸経営で経費にならない費用は?
ここまで、経費として計上できる費用を解説しましたが、賃貸経営では経費として計上できない費用もあります。ここでは、経費計上できない項目を見ていきましょう。
- 賃貸経営に関係していない
- プライベートとも関係がある
- 不動産投資ローンの元本
計上できない費用を理解しておかなければ、税務署から指摘されてしまうので注意してください。
賃貸経営に関係していない
賃貸物件の経営と関係していないものは、経費として認められません。例えば、所得税や住民税、法人税などの税金、プライベートで個人的に使うために購入したもの、自宅の公共費などは、賃貸物件の経営とは関係ないので、経費にはならないのです。収入を得るために使われたお金であるということが明確でなければ経費として計上できないので注意してください。
プライベートとも関係がある
賃貸物件を経営するにあたって、プライベートと混在してしまう支出もあるかもしれません。例えば、移動の際に自家用車を使用している場合や、プライベートで使用する携帯電話を賃貸物件の経営でも使用している場合などです。これらは、賃貸物件の管理に関係する分だけは経費として計上できます。
その際は、家事按分を適用するようにしてください。家事按分とは、プライベートと賃貸物件経営で使用する割合を出して、それに基づいて経費計上するという方法です。計上した割合が実際の割合と異なりすぎると税務署から連絡が来る場合もあるので、注意しましょう。
不動産投資ローンの元本
不動産投資ローンの元本の支払いは、借りているお金を返しているだけなので経費にはなりません。借入利子や建物が建った後に支払った利息は経費として扱えます。
賃貸経営で必要経費を計上する際の注意点
賃貸経営で経費計上を行う際は、本来経費にならない費用まで計上しないように注意してください。
計上できない経費を計上すると税務署から指摘が入りますし、申告内容の訂正を行わなければならず、時間がかかってしまいます。書類作成の手間を省くためにも、経費は日頃からしっかり管理しておく必要があるでしょう。
家事按分など、経費かどうかを個人で判断するのが難しい場合もあるため、状況に応じて専門家のサポートを受けるのがおすすめです。経費に含まれるのか分かりづらい費用がある場合は、コンサルティングを行っている不動産会社や税理士などに相談してみてください。
賃貸経営に関するよくある質問
ここからは、賃貸経営に関するよくある質問を紹介していきます。
- 確定申告の方法は?
- 赤字になっても確定申告は必要?
- 賃貸経営で節税はできる?
それぞれ詳しく解説していきます。
確定申告の方法は?
確定申告は、毎年2月16日から3月16日に、前年1年間の確定申告を行います。確定申告を行う際は、さまざまな書類が必要になるので、あらかじめ用意しておきましょう。必要なものの例としては、下記の通りです。
- 確定申告書
- 領収書やレシート
- 現金出納帳
- 源泉徴収票
- 支払い調書
- 税金の納付通知書
- 借入金の返済予定表
- 売渡清算書
- 賃貸契約書
- 家賃の送金明細
領収書や現金出納帳の管理をするときは、賃貸経営で必要だった経費であることが分かるようにしておきましょう。1年間の支出と必要経費をまとめて帳簿を作成して、帳簿を元に確定申告書類を完成させて税務署に提出します。電子申請も可能なため、電子申請を利用される場合は、マイナンバーカードを用意しておきましょう。
賃貸経営の確定申告に関しては、「マンション投資の確定申告の手順は?必要書類や申告方法について紹介」の記事もご覧ください。
赤字になっても確定申告は必要?
賃貸物件経営で赤字が出てしまった場合でも、確定申告はしなければいけません。赤字が出た場合、本業の所得から差し引いて所得税を計算できます。例えば、本業で600万円の収入がある人が、賃貸物件経営で100万円の赤字を出してしまった場合、赤字分だけ本業の収入額を減らして所得税の計算をすることが可能です。これを損益通算といいます。損益通算を行うためにも、赤字でも確定申告は必要です。
賃貸経営で節税はできる?
節税を目的に賃貸物件経営を検討する人は少なくないと思いますが、賃貸経営で節税はできます。先ほどの赤字の場合の申告で行えると紹介した損益通算も節税対策の1つです。その他の節税方法としては、所得税の還付や住民税の減税、経費による課税所得の節税などが挙げられます。計上する経費によっても節税効果は異なるので、確定申告の際は注意しましょう。
節税を目的に賃貸経営をしたいという方は、「不動産投資で計上する経費によって節税効果が変わるって本当?」の記事もご参照ください。
まとめ
この記事では、賃貸経営で計上できる項目についてお伝えしました。計上できる費用の特徴としては、賃貸経営で収入を得るためにその経費が必要であるということが挙げられます。しかし、計上できる費用を素人が判断するのは難しいです。
賃貸経営を行いたいと検討されている方は、ぜひアデプトマネジメントへご相談ください。アデプトマネジメントでは、不動産投資用のマンション販売や不動産賃貸管理業だけでなく、不動産コンサルティングなども行っています。賃貸物件経営の知識に自信がないという方は、まずはお問い合わせフォームからご相談ください。