不動産投資においてトラブルに巻き込まれた場合、「どう解決すれば良いのか分からない」「まずは何から始めるべきか分からず困っている」といった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
この記事では、2022年末に話題となったサブリースによる不動産投資トラブルの一例を紹介し、その対処方法について詳しく解説します。また、今後不動産投資で同様のトラブルに遭わないためのポイントについても触れていきます。ぜひ参考にしてください。
実際にあった不動産投資トラブルの概要
今回の不動産投資トラブルでは、主に「サブリース問題」と「管理費・修繕積立金の立て替え」が主要な問題点として挙げられます。
サブリース問題
そもそもサブリースとは、賃貸経営をするオーナーにとって大きなリスクである「空室リスク」を減らす手段です。空室があると、オーナーは家賃が回収できず、思うような収益が得られなくなってしまいます。 そのリスクを避けるための方法として、賃貸経営を行っているオーナーの代わりにサブリース業者が賃貸物件の入居者募集や入居者からの賃料の回収を代わりに行ってくれる、サブリースが挙げられるのです。
サブリース会社は入居者の有無に関係なく、賃料から手数料などを差し引いた保証賃料を支払ってくれます。 そのため、オーナーにとってリスクを抑えられるサブリースは魅力的に見えるでしょう。しかし、そんなサブリースには問題点もあるのです。
問題点①「逆ザヤ」
今回紹介する不動産投資トラブルの事例では、その問題点がハッキリと表れています。今回のトラブルでは、本来取っている賃料よりも高い金額を保証する「逆ザヤ」が起きていたのです。 逆ザヤについては、次回の記事でより詳しく紹介していきます。「逆ザヤ」の流れを分かりやすく説明すると、下記のようになります。
- 入居者からサブリース会社に賃料7万円の振り込み
- サブリース会社からオーナーに保証賃料8万円の振り込み
上記の例を見ると、「サブリース会社は1万円損をするのでは?」と思ってしまいますよね。 しかし家賃が高い不動産は、高値で売却をしやすいという特徴があります。逆ザヤをして賃料を高く見せることによって、販売価格を吊り上げて相場よりも高い値段で販売をしているのです。
簡潔にまとめると、相場と実際の販売価格の差額分の利益を保証賃料に回して、また高値で販売するというサイクルになります。この自転車操業がうまくいかなくなり、トラブルに繋がっていきます。
問題点②「サブサブリース」
さらに、この事例ではサブリース業者がさらに別の業者に賃貸管理を委託する「サブサブリース」が行われていました。サブサブリースの場合、オーナーが問題解決を図るためには、まずどの業者が賃料を受け取り、どの業者が支払いを行っているのかを明確にする必要があります。
さらにこのトラブルでは、トラブル解消後もオーナーに不利益があります。本来よりも高い金額を支払われていたオーナーは、その金額を元に収支のシミュレーションをしていたはずです。しかし、今回の件が解消した後は本来の賃料に戻ります。差額分の収益が減ることで、結局火の車になってしまうというオーナーも少なくありません。
今回のトラブルと似た事件として、過去に「かぼちゃの馬車」という事件がありました。「かぼちゃの馬車」は、株式会社スマートデイズがサブリース契約を行う形で事業拡大をしていた女性専用シェアハウスの名前です。この事件では、株式会社スマートデイズが経営破綻したことで保証賃料の支払いができなくなりました。それによって、オーナーたちはローンの返済が難しくなり、自己破産を選ばざるを得なくなった人が続出したのです。
サブリース契約が必ずしも問題があるというわけではありませんが、契約を結ぶ際は注意してください。実際に消費者庁でも、ホームページでサブリース契約に関する注意喚起がされています。
管理費・修繕積立金の立て替え
この事例では、サブリース問題だけでなく、サブリース業者が本来オーナーが支払うべき管理費や修繕積立金を立て替えていたことも問題となりました。この立て替えにより、収支が不自然に見えるように操作され、物件の収益性が高く見えるようにされていました。
サブリース契約を解除した場合、オーナーはこれらの費用を自ら支払う必要が生じ、収入が減るだけでなく、支出も増加します。そのため、トラブルを解決しても、その後の経済的負担が大きくなるリスクが存在します。
実際に不動産投資トラブルの被害に遭った人の事例
ここからは、実際に被害に遭った人の声や事例を紹介していきます。
相談に訪れた人の被害の事例
アデプトマネジメントでは、実際に不動産投資トラブルで被害に合った方からご相談を受けました。下記では、その事例の中から2つを表でまとめて紹介していきます。
Aさんの事例
月額/円 | 賃料 (A) |
管理費 (B) |
修繕積立金 (C) |
合計金額 (A + B + C) |
---|---|---|---|---|
サブリース会社 経由の金額 |
70,000円 | 2,100円 | 8,430円 | 80,530円 |
サブリース解除後 の金額 |
71,000円 | ー | ー | 71,000円 |
このように、サブリース会社を経由した金額と解除後の予定金額を比較すると、Aさんは回収額が大きく下回ってしまっています。サブリース会社を経由した金額では、ここからローン返済額の67,300円を差し引いてもプラスの金額でした。 しかし解除後の賃料71,000円だと下記の収支になります。
サブリース解除後の収支
費目 | 金額 | |
---|---|---|
収入 | 家賃 | 71,000円 |
支出 | 管理費 | 2,100円 |
修繕費 | 8,430円 | |
ローン返済額 | 67,300円 | |
収支 | 収支/月 | -6,830円 |
解除後の金額になると賃料71,000円から、管理費(2,100円)、修繕費(8,430円)、ローン返済額(67,300円)を支払わなければいけないため、6,830円の赤字になります。
Bさんの事例
月額/円 | 賃料 (A) |
管理費 (B) |
修繕積立金 (C) |
合計金額 (A + B + C) |
---|---|---|---|---|
サブリース会社 経由の金額 |
67,000円 | 3,200円 | 7,700円 | 77,900円 |
サブリース解除後 の金額 |
62,000円 | ー | ー | 62,000円 |
BさんもAさん同様に、解除後は回収金額が下がってしまっています。サブリース会社を経由した金額である77,900円は、ローン返済額70,900円などを差し引いてもプラスの金額です。 しかし解除後の賃料62,000円だと下記の収支になります。
サブリース解除後の収支
費目 | 金額 | |
---|---|---|
収入 | 家賃 | 62,000円 |
支出 | 管理費 | 3,200円 |
修繕費 | 7,700円 | |
ローン返済額 | 70,900円 | |
収支 | 収支/月 | -19,800円 |
解除後の賃料62,000円の状態では、管理費(3,200円)、修繕費(7,700円)、ローン返済額(70,900円)を引くと、19,800円のマイナスになってしまいます。
解除後の金額はあくまで想定であり、今後の交渉次第で変化する可能性はありますが、マイナスになる可能性が高いというのは頭に入れておきましょう。
サブリースによるトラブルへの対処方法
ここまで、サブリース等による不動産投資トラブル事例について解説しました。では、今回のトラブルを解消するにはどうすれば良いのか、トラブルへの対処方法を見ていきましょう。
- サブリース会社の賃貸管理を外す
- 弁護士に相談する
- 別の不動産会社に相談する
- 別の不動産会社に切り替える
- 今後の方針を決める
それぞれ詳しく解説していきます。
①サブリース会社の賃貸管理を外す
サブリース契約をしていた、知らないうちにサブリース契約になっていたという方は、まずはサブリース会社の賃貸管理を外して、家賃がしっかりと自分に入ってくるようにしましょう。
その際に特に大変になるのが、サブサブリースの状態になっていた場合です。サブサブリースでは、サブリース会社との契約を解除しても、その先にまた別のサブリース会社が存在しています。そのため、自分と入居者の間に誰がいるのかをしっかりと把握して、サブリース会社の先にいる別のサブリース会社にコンタクトを取らなければいけません。
個人で特定や連絡をするのは難しいので、トラブルを解決したいならプロに相談をするのが良いでしょう。相談先としては、弁護士や別の不動産会社などが挙げられます。
②弁護士に相談する
サブリース会社との契約を解除するなら、弁護士に相談をするのが安心です。弁護士に依頼して内容証明を送り、債務不履行で契約を解除してもらいましょう。その際には、サブリース問題や不動産に関する問題などを多く扱っている弁護士や法律事務所を探して依頼するのがおすすめです。
初回30分のみ相談無料としている弁護士や、オンラインで弁護士への無料相談が可能なサービスなどもあるので、まずは相談してみてください。相談をするときは、今回のトラブルの経緯などを伝えられるように、相談内容や詳しい状況をまとめておくと良いです。サブリース会社と契約を結んだ際の契約書なども用意しておきましょう。
③別の不動産会社に相談する
いきなり弁護士に相談するのは不安、どの弁護士に相談すれば良いのか分からないという方は、別の不動産会社に相談をするのもおすすめです。不動産会社に法的な手続きのアシストをしてもらいつつ、不動産会社を通じて弁護士に依頼をすれば不安も軽減できるでしょう。
不動産会社との契約を解除する場合は、別の不動産会社に切り替える必要があるので、この段階から信頼できる不動産会社を見つけられれば、その後の流れもスムーズに進みやすくなるはずです。信頼できる不動産会社選びのコツについては、記事の後半で解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
④別の不動産会社に切り替える
賃料の未払いが起きた不動産会社と今後も契約をするのは不安ですよね。先ほども少し触れましたが、不動産会社と解約をする場合は、別の不動産会社に切り替える必要があります。
不動産会社の切り替え自体はあまり難しいものではないので、不安に感じる必要はありません。解約手続きを行い、新しい管理会社と管理委託契約を締結をして、管理業務の引き継ぎを行うというのが主な流れになります。
⑤今後の方針を決める
トラブルが解決に進み始めたら、今後の方針も検討していきましょう。主に考えられるのは、そのまま保有して運用するか、すぐに売却をするかです。自分の場合はどちらが向いているのかを判断する場合はまず、下記の3つの内容を把握しましょう。
- サブリース会社と解約した後の収支がどうなるのか
- ローンはどのくらい残っているのか
- 物件の売却価格はどのくらいになるのか
そのまま保有して運用すればプラスになっていくのか、売却をしたほうが被害が最小限で済むのかは物件や契約内容などによって異なります。これらの3つの情報を元に、不動産会社に相談をしてみてください。
売却をする場合の問題点
物件の売却を検討している方の中には、売却想定額よりもローン残債のほうが金額が高い「オーバーローン」の状態になっているという方も多いでしょう。しかし、ローンが残っている物件は基本的にローンを完済しないと売却ができません。そのため、ローンを完済できない人は任意売却を行うことになります。
任意売却とは、ローンの借入をしている金融機関から許可を得て行う特別な不動産売却です。売却後のローン返済の計画を立てながら、無理なく返済をしていきます。「物件を売却したいけど、ローン残債がまだまだ残っている」という方は、任意売却についても知っておきましょう。
任意売却については下記記事をご参照ください。
今後不動産投資で騙されないためには?
ここまで、不動産投資トラブルの内容や対処方法について解説しました。では、今後同じようなトラブルに巻き込まれないためにはどうすれば良いのでしょうか。最後に、今後騙されないためのコツを紹介していきます。
- 営業の言い回しに踊らされない
- メリットだけでなくデメリットも把握する
- 信頼できる不動産投資会社に依頼する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
営業の言い回しに踊らされない
不動産会社の営業では、良いことばかりを伝えたり大事なことを伝えていなかったりと、わざと偏った伝え方をする人もいます。中には、契約書には書かないからと適当な口約束をする営業もいるのです。
不動産会社と契約をする際は、営業トークに騙されないように注意してください。例えば、下記のような文言には気を付ける必要があります。
- 「◯年後に当社で買取をします」
- 「自己資金0で投資ができます」
- 「サブリースで◯年間家賃保証をしています」
- 「将来的に物件価格の向上が期待できる地域です」
これらの内容は、一見良い話のように思えますが、実はトラブルにつながりやすかったりもするのです。不動産会社の営業トークには、その場で即決せずに一旦持ち帰る、全てを鵜呑みにするのではなく自分でも勉強をするといった対策が有効です。
相手はプロなのだからと任せきりにするのではなく、自分でも調べた上で検討するようにしてください。
メリットだけでなくデメリットも把握する
不動産投資にはさまざまなメリットがありますが、同時にデメリットも少なからずあります。デメリットを把握しないまま不動産投資を行ってしまうと、リスクを想定したシミュレーションができない、トラブルが起きた場合に素早く対処できないなどの問題が生じます。不動産投資で失敗する可能性が高くなるため、必ずデメリットも把握してから行うようにしましょう。
また、不動産会社の中には、メリットだけを伝えてデメリットを伝えないという企業も珍しくありません。そういった企業と契約をすると、将来的に損をしてしまう可能性がありますし、取引を行っていく上で信用もできません。不動産会社を選ぶ際には、デメリットも合わせて伝えてくれる不動産会社を選ぶと良いでしょう。
信頼できる不動産投資会社に依頼する
一度トラブルに巻き込まれた方の中には、「新しく別の不動産会社と契約をするのに躊躇する」「またトラブルの被害に遭うんじゃないかと不安」という方が多いと思います。
不動産会社に依頼をする際は、信頼ができるところを見極めなければいけません。ここでは、そのポイントについて見ていきましょう。主な内容としては、下記の6つが挙げられます。
- 不動産投資の実績は豊富か
- フォロー体制が整っているか
- 専門家を抱えているか(弁護士、税理士など)
- 金融機関との取引があるか
- 資本金や従業員数などの会社情報
- デメリットも伝えてくれる
この他にも、自分の所有している物件と不動産会社の得意分野がマッチしているか、ネット上での口コミの評判が良いかなどをチェックしておくと安心です。不動産会社選びにお悩みの方は、これらのポイントに注目してみてください。
不動産投資トラブルでお困りならご相談ください
2022年に起こった不動産投資トラブルとして、「サブリース問題」や「管理費・修繕積立金の立て替え」をご紹介しました。
これらの被害を受けた場合の対処法としては、まず弁護士や別の不動産会社に相談をしてサブリース会社の賃貸管理を外します。その後、別の不動産会社に切り替えて、今後の方針を決めていくというのが主な流れです。サブリース会社解約後の収支、ローン残債、物件の売却価格などを元に、そのまま保有して運用するか、すぐに売却をするかを検討してみてください。
また、今後同じようなトラブルに巻き込まれないためには、不動産会社の営業トークに気を付ける、デメリットについても把握する、信頼できる不動産会社に依頼をするなどの点に注意すると良いでしょう。
今回のトラブルについて相談できる不動産会社をお探しの方は、アデプトマネジメントにご相談ください。
アデプトマネジメントには経験豊富な顧問弁護士もおりますので、相談相手にお悩みの方は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。