住宅ローンを組む際に気をつけたいのが金利の種類です。金利は固定金利と変動金利に大別されます。変動金利は初期段階では固定金利より低く設定されているため、選ぶ人が多いです。近年は低金利の状態が続いているため、恩恵を受けられるためです。
本記事では、変動金利の仕組みと金利タイプの指標をわかりやすく解説します。
住宅ローンの変動金利の仕組み
変動金利とは、借入期間中に適用される金利が変動する金利タイプのことです。変動金利タイプの住宅ローンでは、金利は一定期間ごとに見直され、金融情勢に応じて上下が変動します。具体的には、借入時に基準となる金利が設定され、一定期間経過後に基準金利が変動した分だけ実際の金利が上下する仕組みです。
返済額に金利が反映されるタイミングは、選択した返済方式により異なります。借入金の返済額は借入金の「元金」と元金に決まった利率をかけた「利息」で構成されており、返済方式には元利均等返済と元金均等返済の2種類があります。
変動金利の上がり幅のルールは、「変動金利の上がり幅とは?ルールのポイントやリスクを抑える方法」の記事でも紹介していますので、本記事とあわせてご覧ください。
元利均等返済
元利均等返済は、毎月の支払い返済額が一定となる返済方法です。返済計画が立てやすくなり、元金均等返済に比べると、返済初期の返済額を少なくできます。
元金均等返済と借入期間が同じ場合は、総返済額が多くなり、借入金残高の減り方が遅くなります。
元金均等返済
元金均等返済は、返済が進むにつれ返済額が少なくなる返済方法です。元利均等返済と同じ借入期間の場合は元金が減るのが早いため、元利均等返済よりも総返済額は少なくなります。
返済初期の返済額が高いため、当初の返済負担が重く、借入時に必要な収入が高くなるでしょう。
変動金利の住宅ローンでは、一般的に返済までの計画を立てやすい元利均等返済が採用されています。
変動金利と固定金利
住宅ローンには変動金利の他に固定金利があります。変動金利と固定金利の違いは、以下の通りです。
変動金利と固定金利の違い
項目 | 変動金利 | 固定金利 |
---|---|---|
金利の変動 | 将来の金融情勢に応じて変動 | 契約時の金利が変わらない |
返済額の変動 | 将来変動する可能性がある | 借入期間中は一定 |
変動金利は金利の上下に応じて返済額が変わるため、計画的な家計の立て直しが難しくなります。ただし、金利が下がれば返済額の軽減が期待できるというメリットもあります。
一方、固定金利は借入期間中の金利が変わらないため、将来的な家計への影響を見込みやすいというメリットがあります。ただし、金利が低下した際は恩恵を受けられません。
変動金利にするか固定金利にするかは、金利変動リスクへの許容度や家計の計画性重視の度合いなどから、住宅ローン契約時に検討する必要があります。
変動金利を選ぶメリット
変動金利は固定金利とは異なり、金利が定期的に見直されるという特徴があります。変動金利ならではの特性を理解した上で選択することで、家計がラクになる可能性があるでしょう。
以下で、住宅ローンの契約時に変動金利を選ぶメリットをご紹介します。
当初の金利が固定金利よりも低めである
変動金利を選ぶメリットの一つに、当初の金利が固定金利よりも低めであることが挙げられます。これは、一般的に金利市場が上昇基調にあると見込まれる場合、変動金利の方が有利になるためです。具体的には、下記のような場合が想定されます。
変動金利と固定金利の当初金利
金利タイプ | 当初金利 |
---|---|
変動金利 | 1.0% |
固定金利(10年) | 1.5% |
上記の場合、変動金利の方が当初は0.5%低くなっています。そのため、10年間金利が変動しなければ、変動金利の方が有利でしょう。
金利が下がれば支払い額を減らせる
変動金利は金利の動向に沿って、借入期間中の支払い額が変動します。金利が下がれば、下がった分、支払い額が減少するというメリットがあります。金利水準が大幅に引き下げられることは考えにくいですが、金利が高い時点で借りた後に金利が下がったとしたら、支払い額を減らせる可能性があるでしょう。
変動金利を選ぶデメリット
変動金利にはメリットがある一方でデメリットも存在します。変動金利の住宅ローンを選択すると、当然ながら金利が変動することによるリスクを抱えてしまいます。家計への影響を十分に検討した上での慎重な選択が重要です。
以下で、住宅ローンの契約時に変動金利を選ぶデメリットを詳しく見ていきましょう。
金利が上昇すると返済額が増える
変動金利の大きなデメリットは、金利が上昇した場合に返済額が増えてしまうことです。
例えば借入金額が4000万円でローン年数が35年の場合、以下の表のように5年経って金利が1%上昇した場合、毎月の返済額が2万円以上も増額されてしまいます。
金利 | 毎月の返済額 | 差額 |
---|---|---|
1.5% | 約122,470円 | – |
2.5% | 約143,000円 | +20,530円 |
毎月の差額が30年間積み重なると、総返済額への影響も大きくなります。このように、わずかな金利変動でも長期的には大きな影響を及ぼします。金利上昇リスクを抑えたい場合は、固定金利を選択するのがおすすめです。
金利が上がったときの対策は、「不動産売却は流れを抑えてスムーズに。ステップごとに徹底解説!」の記事でも紹介していますので、本記事とあわせてご覧ください。
利息の返済が増え元金が減らない可能性がある
先述した元利均等返済を選択した場合は、返済額の増加分が利息の支払いに回ってしまい、元金の返済が遅れがちになります。加えて、金利水準が大幅に上昇すると、毎月の返済額の中で利息返済の割合が高くなり、元金返済がほとんど進まない状況に陥る可能性があるでしょう。
通常、住宅ローンでは毎月の返済額が年収の25%を超えないよう設定されています。そのため、金利が急上昇しても返済額は125%を超えて増額されることはありません。ただし、返済額の内訳を調整し、利息返済の割合を増やして元金返済の割合を減らすことになります。結果的に、数年間は利息返済ばかりが続き、元金がほとんど減らない状況が続く可能性があるでしょう。
変動金利を選択した場合、金利上昇時には元金返済が滞り、ローン返済期間の終盤まで元金の残高が残るリスクがあることに注意が必要です。
返済額が125%を超えて増額されることがない125%ルールは「マイナス金利解除で住宅ローンや生活に受ける影響や注意点を徹底解説」の記事でも紹介していますので、本記事と合わせてご覧ください。
返済期間終了時に未払いの利息が残る可能性がある
変動金利の住宅ローンは、毎月の返済額が金利の変動によって変わるため、ローン期間終了時に未払いの利息が残ってしまう可能性があります。
例えば、ローン開始当初は金利が低かったため毎月の返済額も低めでしたが、後半になって金利が上昇したため、返済額が増えても元金の返済が追いつかずに利息の支払いに回されてしまうケースが考えられます。
金利変動による返済額への影響
時期 | 毎月の返済額 | 金利 |
---|---|---|
開始時 | 10万円 | 1.0% |
後半 | 10万円 | 3.0% |
上記のように、毎月の返済額が変わらない場合、金利上昇時には利息分が増えるため、その分元金の返済が進まなくなります。そのため、期間終了時に未払いの利息が残っている可能性があるのです。
未払いの利息を残さないためには、金利上昇に合わせて毎月の返済額を増やすか、一括での繰上返済を行う必要があるでしょう。
自分に合う金利タイプの指標
金利タイプの選択は、住宅ローンの返済計画に関わるため重要です。変動金利と固定金利のどちらを選ぶかによって、長期的な返済額に大きな影響を与えます。ライフスタイルや収入の見通し・リスク許容度など、個人の事情によって最適なタイプは異なります。
以下では、自分に合った金利タイプを選ぶための指標をご紹介します。
今後金利はあまり上がらないと考える場合
今後、金利があまり上がらないと考える場合は、変動金利型の住宅ローンを選びましょう。先述したように、変動金利型は当初の金利が固定金利よりも低く設定されていることが多く、次のようなメリットがあります。
- 当初の返済額が低く抑えられる
- 金利が下がれば返済額も下がる
例えば、当初金利が固定金利より低い場合、変動金利を選んでいれば返済額が抑えられます。また、金利がさらに下がれば返済額も下がるため、長期的には有利になる可能性があるでしょう。
ただし、金利が上昇すれば返済額も増えてしまうリスクがあります。そのため、今後の金利動向を見極めつつ、自身の資金計画に合わせた検討が重要です。
一定期間までは返済額を固定したい場合
一定期間までは返済額を固定したい場合は、当初固定期間選択型の住宅ローンを選びましょう。当初固定期間選択型の住宅ローンは、借入当初の一定期間は金利を固定し、期間終了後は金利が変動する仕組みです。
10年固定期間付き変動金利型の住宅ローンの場合
金利タイプ | 期間 |
---|---|
固定金利 | 借入から10年目まで |
変動金利 | 11年目以降 |
このように、一定期間は金利が固定されているので、期間中は返済額が変わらず、家計の見通しを立てやすくなります。一方で、固定期間終了後は金利が変動するため、期間終了後の返済額が上下する可能性があるでしょう。
当初固定期間選択型の住宅ローンは、固定金利型と変動金利型の中間的な特徴を持っています。固定期間の長さによっては、固定金利とほぼ変わらない場合や変動金利に近い場合もあります。
固定期間の長さを自分のライフプランに合わせて選ぶことが重要です。
今後金利は上がるかもしれないと考える場合
今後、経済情勢の変化などにより金利が上がるかもしれないと考える場合は、全期間固定金利型の住宅ローンがおすすめです。全期間固定金利型は、借入時点の金利が返済期間の最後まで固定されるタイプです。借入時の金利水準に関わらず、金利変動による返済額の増加を心配する必要がありません。
金利タイプとそのリスク
金利タイプ | 金利変動リスク |
---|---|
変動金利型の住宅ローン | 〇 |
当初固定期間選択型の住宅ローン | △ |
全期間固定金利型の住宅ローン | × |
ただし、金利上昇に備えて高めの金利が設定される可能性もあります。一方で、金利が低下したときのメリットは享受できません。長期的に見て金利が低水準で推移すれば、結果的に割高な返済となる可能性があります。
将来の金利動向を見通すのは難しいですが、金利上昇を危惧する場合は、返済額の変動リスクを完全に排除できる全期間固定金利型の住宅ローンを選ぶのが無難でしょう。
変動金利の仕組みに関するよくある質問
変動金利の仕組みは複雑で分かりにくいため、借り手側にはさまざまな疑問があることでしょう。変動金利の仕組みを把握しておけば、借入の判断も誤ってしまうことはないはずです。
最後に、変動金利に関するよくある質問を解説していきます。
変動金利の短期プライムレートとは?
変動金利には、短期プライムレートと長期プライムレートの2種類があります。
短期プライムレートとは、主要銀行が優良企業向けに貸し出す際の基準となる金利のことです。短期プライムレートの金利は短期間で見直され、市場金利の動向に連動するしくみです。短期プライムレートは、市場金利に銀行の手数料分を上乗せした水準で決められています。
市場金利が上昇すれば短期プライムレートも上昇し、変動金利型の住宅ローンの金利も上がることになります。
変動金利は今後どうなる?
変動金利は、今後金利が上昇傾向となることが予想されています。日本銀行は2024年5月現在、金融緩和政策を維持していますが、物価上昇への対応から徐々に金融引き締めに転じる可能性があるでしょう。変動金利の住宅ローンでは、半年ごとに金利の見直しが行われるため、金利上昇に伴い返済額が増加することになります。
一方で、金利上昇は貯蓄の利回りが高まる可能性があるため、預金者にはメリットが生じます。変動金利の商品に投資するかどうかは、個々の資産運用方針に基づき判断してください。
変動金利のお悩みはアデプトマネジメントにご相談ください
本記事では、変動金利の仕組みやメリット・デメリットを解説しました。変動金利と固定金利、それぞれにメリット・デメリットがあります。変動金利は当初の金利が低めで、金利が下がれば支払い額を減らせますが、金利が上がると返済額が増えるリスクがあります。
一方の固定金利は金利変動に左右されず、返済額を一定に保てるメリットがある一方で、当初の金利が高めになる可能性があります。
自分に合った金利タイプの指標は、以下のような観点から検討しましょう。
- 今後の金利動向をどう見積もっているか
- 一定期間は返済額を固定したいか
- 返済額の変動に耐えられるか
金利タイプを選ぶ際は、個々の事情に応じて判断する必要があります。さまざまな角度からシミュレーションを行うことをおすすめします。
また、金融機関との金利交渉を有利に進めて、できるだけ良い条件でローンを組むことが重要です。そのためには、不動産投資物件の取扱実績が豊富で金融機関からの信頼も厚い不動産会社のサポートが大きな力になるでしょう。
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