住宅ローンの支払いが困難になり、家を手放さなければならない状況になった時、「任意売却」という選択肢が頭をよぎるかもしれません。
しかし、任意売却にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。このページでは、任意売却のデメリットを5つに厳選し、それぞれがどのような影響を与えるのかを具体的に解説します。
任意売却とは何か?
任意売却とは、住宅ローンなどの借入金が残っている不動産を、債権者(金融機関など)の同意を得て売却する手続きのことです。
住宅ローンの返済が困難になった場合、競売にかけられる前に、所有者自身で不動産を売却することで、より有利な条件で売却できる可能性があります。
一般的には、住宅ローンを滞納し始めた段階で金融機関から任意売却を勧められるケースが多いです。所有者の意思で売却を進めることができるため、競売と比較してメリットが多い方法として知られています。
競売との違い
任意売却と競売の大きな違いは、売却手続きの主導権です。任意売却では、所有者自身に主導権があり、債権者と交渉しながら売却を進めることができます。
一方、競売は裁判所が主導権を握り、所有者の意思に関係なく売却手続きが進められます。そのため、一般的に任意売却の方が高値で売却できる可能性が高く、引越し費用などの確保も期待できます。
また、近隣に知られることなく売却できる可能性が高いこともメリットです。一方、競売は売却価格が低くなる傾向があり、近隣に知られてしまう可能性も高くなります。
項目 | 任意売却 | 競売 |
---|---|---|
主導権 | 所有者 | 裁判所 |
売却価格 | 比較的高い | 比較的低い |
近隣への影響 | 少ない | 大きい |
引越し費用 | 交渉可能 | なし |
期間 | 数ヶ月~半年程度 | 数ヶ月程度 |
どのような人が利用するのか?
任意売却を利用するのは、主に住宅ローンの返済が困難になった人です。例えば、リストラや病気、事業の失敗などで収入が減少し、住宅ローンの返済が滞ってしまった場合などが挙げられます。また、離婚によって住宅ローンの支払いが困難になった場合や、相続した不動産の維持が難しい場合などにも利用されます。
債務整理の一環として任意売却を選択する人もいます。近年では、コロナ禍による収入減を理由に任意売却を検討する人も増えています。
任意売却は、競売による強制的な売却を回避するための手段として有効です。競売よりも高値で売却できる可能性が高いため、残債務を減らす効果も期待できます。
また、競売のように近隣に知られてしまうリスクも低く、精神的な負担も軽減できます。
任意売却は債権者の同意が必要となるため、必ずしも希望通りに売却できるとは限りません。そのため、専門家への相談が重要となります。
投資用マンションを任意売却する流れを「投資用マンションを任意売却する流れは?注意点と合わせて解説」の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
任意売却のデメリット5選
任意売却は住宅ローンの返済が困難になった際に、債権者の同意を得て不動産を売却する手続きです。競売に比べてメリットが多い一方で、デメリットも存在します。
任意売却を検討する際には、これらのデメリットを理解し、慎重に判断することが重要です。以下では、任意売却の主なデメリット5つを詳しく解説します。
デメリット1 クレジットカードが作れなくなる可能性がある
任意売却を行うと、信用情報機関に事故情報として登録される可能性があります。信用情報に傷がつくと、クレジットカードの新規発行やローンの審査が難しくなる場合があります。
これは、任意売却が住宅ローンの返済ができなかったという事実を示すためです。ただし、任意売却後もきちんと返済計画を立て、実行していけば、信用情報は徐々に回復していきます。
回復までの期間は状況によって異なりますが、一般的には5~7年程度と言われています。信用情報への影響は長期にわたる可能性があるため、任意売却の決定は慎重に行う必要があります。
デメリット2 新しい住宅ローンを組むのが難しくなる
任意売却後、一定期間は新たな住宅ローンの審査が厳しくなる可能性があります。これは、金融機関が過去の債務不履行の履歴を重視するためです。任意売却後すぐに住宅購入を希望する場合、審査に通ることが難しい場合もあります。
ただし、すべての金融機関が同じ基準で審査を行うわけではありません。また、期間が経過するにつれて、審査に通る可能性も高くなります。
任意売却後、住宅購入を検討している場合は、複数の金融機関に相談してみることをおすすめします。
デメリット3 売却価格が希望通りにならない場合もある
任意売却では、市場価格を参考に売却価格が決定されます。しかし、必ずしも希望通りの価格で売却できるとは限りません。債権者の同意を得る必要があり、債権者が売却価格に納得しなければ、売却が進まない場合もあります。
また、市場の動向によっては、想定よりも低い価格で売却せざるを得ないケースも考えられます。売却価格が希望通りにならないリスクも考慮に入れて、任意売却を検討する必要があります。
デメリット4 近隣に売却を知られる可能性がある
任意売却は、競売と比べて近隣に知られる可能性は低いですが、完全に秘密にすることは難しいです。不動産会社が売却活動を行う際に、近隣住民に情報が伝わる可能性があります。
また、内覧などで不特定多数の人が出入りすることで、売却を知られる可能性も否定できません。プライバシー保護の観点からも、任意売却には一定のリスクが伴います。
デメリット5 手続きが複雑で時間がかかる場合もある
任意売却の手続きは、債権者との交渉や書類の準備など、複雑で時間のかかる作業が多くあります。専門的な知識が必要となる場面もあるため、一般の人にとって負担が大きい場合もあります。
スムーズに手続きを進めるためには、弁護士や不動産会社などの専門家のサポートを受けることが重要です。
手続き | 内容 | 期間の目安 |
---|---|---|
債権者との交渉 | 売却価格や返済計画について債権者と交渉 | 1ヶ月~数ヶ月 |
不動産の査定 | 不動産会社に依頼し、市場価格を調査 | 1週間~2週間 |
売買契約の締結 | 買主と売買契約を締結 | 1週間~2週間 |
所有権の移転登記 | 法務局で所有権の移転登記 | 1週間~2週間 |
専門家に相談することで、手続きの負担を軽減し、よりスムーズな売却を実現できる可能性が高まります。
任意売却に関するよくある質問
任意売却についてよくある質問をまとめました。疑問を解消し、安心して手続きを進めるためにお役立てください。
Q1. 任意売却と競売の違いは?
任意売却と競売の主な違いは以下の通りです。
項目 | 任意売却 | 競売 |
---|---|---|
売却方法 | 債務者と債権者の合意に基づき、不動産会社を通じて一般市場で売却 | 裁判所を通して強制的に売却 |
売却価格 | 市場価格に近い価格で売却できる可能性が高い | 市場価格より低い価格で売却されることが多い |
手続き | 債権者との交渉が必要だが、債務者の意思が反映されやすい | 裁判所の手続きに従うため、債務者の意思は反映されない |
期間 | 数ヶ月程度 | 半年~1年程度 |
近隣への影響 | 比較的少ない | 近隣に知られる可能性が高い |
信用情報への影響 | どちらも影響する | どちらも影響する |
Q2. 任意売却にかかる費用は?
任意売却にかかる費用は、主に以下の項目があります。
- 不動産会社への仲介手数料
- 抵当権抹消費用
- 印紙税
- 場合によっては、引っ越し費用
費用の詳細はケースによって異なりますので、事前に専門家へ相談することをお勧めします。仲介手数料は売却価格に応じて変動し、一般的には売買価格の3%+6万円(税別)が上限となります。
不動産売却の仲介手数料についてもっと知りたい方は「不動産売却の仲介手数料はいくら?計算方法や相場を解説」の記事をご参照ください。
Q3. 任意売却後も残債務は残る?
任意売却で売却した金額が住宅ローンの残高に満たない場合、残債務は残ります。ただし、債権者と交渉することで、残債務の返済方法や減額について相談できる場合があります。
残債務の返済計画をしっかり立て、無理のない返済プランを検討することが重要です。
債務整理も選択肢の一つとなる場合もありますので、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。
Q4. 任意売却の相談はどこにすればいい?
任意売却の相談は、以下の機関に相談できます。
- 不動産会社(任意売却の専門知識を持つ会社を選ぶことが重要)
- 弁護士
- 司法書士
- 認定NPO法人 住宅債務相談センター
複数の専門家に相談し、自分に合った相談先を選ぶことが大切です。それぞれの専門家の得意分野や費用などを比較検討しましょう。
Q5. 任意売却は必ずできる?
任意売却は、必ずできるわけではありません。債権者全員の同意が必要となるため、債権者が競売を希望する場合や、債務者の状況によっては任意売却が難しいケースもあります。早期に相談することが成功の鍵となります。まずは専門家に相談し、状況を把握してもらうことが重要です。
任意売却できないケースについて「任意売却できないケースは?解決方法や防ぐ方法を詳しく解説」の記事で紹介しているので、ぜひご覧ください。
任意売却のデメリットのまとめ
任意売却は、住宅ローンの返済が困難になった場合に、競売よりも有利な条件で不動産を売却できる可能性のある方法です。この記事では、任意売却のデメリットを中心に、クレジットカードや住宅ローンへの影響、売却価格、近隣への影響、手続きの複雑さなどを解説しました。
デメリットを理解した上で、メリットと比較検討し、専門家への相談や業者選びを慎重に行うことが重要です。成功事例からもわかるように、任意売却は状況によっては有効な手段となりえます。早めの相談と綿密な計画で、より良い結果を目指しましょう。
アデプトマネジメントでは、任意売却に関する専門知識を持ったスタッフが在籍しているため、安心して相談できます。是非お気軽にご相談ください。