結論から先にいうと、ワンルームマンション投資で節税することは可能です。ただし、年収がいくらか、どんな物件を選ぶかといった条件次第で節税効果は大きく違ってきます。場合によっては、逆に税金が増えてしまうケースもあるので注意しましょう。
家賃収入を目的とした一般的な不動産投資の成功率は、50%前後といわれています。「節税になるからおすすめですよ」といったセールストークを鵜呑みにして、安易にマンション投資を始めたものの、失敗して途中でやめてしまう人も少なくありません。
そこで今回は、ワンルームマンション投資に的を絞って、節税の仕組みや注意点をまとめました。マンション投資に興味がある方、不動産投資を活用した節税のカラクリが知りたい方は、ぜひご一読ください。
ワンルームマンション投資の節税できる税金
初めに、ワンルームマンション投資で節税可能な税金の種類を押さえておきましょう。
節税できる主な税金は、以下の通りです。
- 所得税
- 住民税
- 相続税
- 贈与税
なお、不動産投資では法人税を節税することもできますが、今回はワンルームマンション投資がメインテーマなので、法人規模の投資に関する解説は割愛します。
ワンルームマンション投資の節税の仕組み
上記で紹介した4種類の税金について、節税の仕組みをチェックしていきましょう。「実際にどのくらい節税できるのか」というシミュレーションも交えて紹介していきます。
所得税
所得税は、投資用マンションの減価償却による赤字を不動産投資以外の所得と損益通算することで節税できます。
減価償却とは、ワンルームマンションの購入金額を一定期間にわたり、分割して経費計上できる制度です。実際の持ち出しがないのに、経理上の赤字が作り出せるところがポイントになります。
不動産投資の赤字は、給与や事業による所得と損益通算(合算して申告)できるため、課税所得を減らせるのです。
例えば、課税所得(所得 – 所得控除)が600万円の場合でシミュレーションしてみましょう。課税所得が330万円〜694万9,000円の場合、税率は20%、控除額は42万7,500円になります。
所得税は、以下の式から計算できます。
所得税 = 課税所得 × 税率 – 控除額
所得税(マンション投資なし)= 600万 × 0.20 – 42万7,500 = 77万2,500(円)
一方、ワンルームマンション投資の赤字が年間200万円の場合、損益通算すると課税所得を(600万 – 200万円 =)400万円に減らせます。
所得税(マンション投資あり)= 400万 × 0.20 – 42万7,500 = 37万2,500(円)
差額(77万2,500円 – 37万2,500円)に当たる40万円分が節税できることになります。
なお、上記はワンルームマンション投資が経理上赤字になるケース(年度)の試算です。
まとまった経費がかからなくなる2年目以降、あるいは減価償却費が大きく計上できない物件(新築など)では、節税効果がほとんど期待できないこともあるので注意しましょう。
住民税
住民税も、所得税の場合と同じく、ワンルームマンション投資の赤字とその他の所得を損益通算することにより、課税所得を減らして節税できます。
同様に、課税所得が600万円、マンション投資による赤字が200万円のケースで試算してみましょう。
住民税の計算式は、以下の通りです。
住民税 = 所得割 + 均等割 = (課税所得 × 税率10% – 税額控除額)+ 5,000円
※税額控除…配当控除、寄附金税額控除など
住民税(マンション投資なし)= 600万 × 0.10 + 5,000 = 60万5,000(円)
住民税(マンション投資あり)= 400万 × 0.10 + 5,000 = 40万5,000(円)
差し引きすると、年間20万円の住民税が節税できることになります。
相続税
相続税は、現金よりも不動産として相続したほうが減額されるため、ワンルームマンション投資を活用すると節税できます。
不動産の固定資産税の金額は、時価(購入金額)の5〜6割程度で評価されるのが通例です。人に貸している物件の場合は、さらに2割ほど評価額が低くなります。
例えば、5,000万円で購入して賃貸に出しているワンルームマンションの評価額は(5,000万円 × 0.6 × 0.8 =)2,400万円ほどになり、差額分に相当する相続税が節税できます。つまり、現金相続すると額面通り丸々課税対象になりますが、不動産に変えると相続税が圧縮できるというカラクリです。
なお、200㎡以下の物件の場合は、相続税が50%減額される(小規模宅地等の特例)ので、この条件を満たすワンルームマンションなら、さらに節税効果が高まるでしょう。
贈与税
相続税の場合と同じく、ワンルームマンション投資を活用すると、贈与税を圧縮して節税することができます。贈与税は、1年間にもらった財産の合計額から110万円(基礎控除)を差し引いた課税対象額に税金をかけて算出されます。現金ではなく、不動産に変えて贈与すれば課税対象額が減らせるので節税に有効です。
5,000万円の現金またはマンションを贈与するケースで比較してみましょう。
上記の通り、5,000万円のマンションの固定資産評価額は約2,400万円になります。
贈与税の計算式は、以下の通りです。
贈与税 =(贈与金額 – 基礎控除)× 税率 – 控除額
3,000万円超の贈与税の税率は55%、控除額は400万円です。
贈与税(現金贈与)=(5,000万 – 110万)× 0.55 – 400万 = 2,289万5,000(円)
贈与税(マンション贈与)=(2,400万 – 110万)× 0.55 – 400万 = 859万5,000(円)
両者の差額に当たる1,430万円分の贈与税が節税できることになります。
ワンルームマンション投資で節税をする際の注意点
続いては、ワンルームマンション投資で節税をする際に注意すべきポイントを確認していきましょう。主な注意点は、次の4つです。
- 節税の期間が短い
- 空室で家賃収入を得られない可能性もある
- 銀行の融資を受けられない
- 相続税でトラブルが起こるリスクがある
各項目ごとに、詳しく見ていきましょう。
節税の期間が短い
所得税と住民税の節税を目的としたワンルームマンション投資は、有効期間が短い点に注意しましょう。上記の通り、減価償却費の計上により経理上の赤字を作り出すカラクリなので、減価償却期間が過ぎると節税効果が薄れてしまいます。
節税だけが目的なら、減価償却期間が終わったタイミングでマンションを売却するのも一つの方法です。
空室で家賃収入を得られない可能性もある
どの税金の節税が目的の場合でも、購入したワンルームマンションが空室のままでは節税のメリットが帳消しです。空室が長期化すると、家賃収入でまかなうはずのマンション投資が深刻な赤字に陥ってしまうでしょう。
ローンの返済金や管理費、固定資産税といった諸費用を自己資金の持ち出しで払い続けていると節税どころではなくなります。節税が主目的であっても、エリア自体の人気やアクセスの良さなどを調査して、空室が発生しにくい物件を慎重に選びましょう。
銀行の融資を受けられない
所得税と住民税の節税が目的の場合は、赤字を作り出すことがポイントになります。
この赤字は、あくまでも経理上のものですが、融資先の金融機関には少なからずマイナスの印象を与えてしまうでしょう。そのため、追加の融資が受けられなくなるケースがあります。
先々、投資用のワンルームマンションを複数所有したい人、あるいは突発的な修繕費を自己資金で負担する余裕がない人などは注意しておきましょう。
相続税でトラブルが起こるリスクがある
ワンルームマンションを相続する場合は、現金のように均等に分割できないので、物件を共同名義にするのが一般的です。共同名義は一見公平に見えますが、後々トラブルに発展するケースが多々あります。
共同名義のマンションは、物件を契約したり売却したりする際に名義人全ての同意が必要となるため、意見の食い違いによる深刻なトラブルを防ぐためには、共同名義は避けたほうが無難です。相続税の節税が目的でマンション投資をする場合は、法定相続人の間であらかじめしっかりと話し合いをしておきましょう。
ワンルームマンション投資での節税に失敗した例は?
次に、節税目的のワンルームマンション投資における失敗例をチェックしていきましょう。
よくある失敗例は、以下のようなものです。
失敗例①新築マンションに投資して失敗
所得税と住民税の節税が目的の場合、新築マンションに投資して失敗するケースがよくあります。
新築や築浅のワンルームマンションは、耐用年数が長く、1年当たりに計上できる減価償却費が少額に留まります。そのため、経理上の赤字が作り出せないので節税には不向きです。逆に、耐用年数が短い中古マンションは節税に有利といえます。
減価償却費がいくら計上できるか、事前にシミュレーションしておけば、この手の失敗は防げるでしょう。
ちなみに、中古マンションの耐用年数(減価償却期間)は、以下のように計算します。
- 法定耐用年数を過ぎた物件
耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%
- 法定耐用年数の一部を経過した物件
耐用年数 =(法定耐用年数−経過年数)+ 経過年数 × 20%
減価償却費の計算式は、次の通りです。
減価償却費 = 購入金額 × 償却率 × 経過年数
(※経過年数…6か月以上は1年、6か月未満は切り捨て)
失敗例②ずっと節税できると思って失敗
所得税・住民税の節税が目的の場合にありがちなのが、節税効果がずっと続くと勘違いして失敗するケースです。
ワンルームマンション投資を開始した当初は、不動産会社に支払う仲介手数料や司法書士への報酬、登記費用、物件購入の頭金といった初期費用がかさみます。その分、経理上の赤字が大きくなるので節税効果が実感できるでしょう。
それに気を良くして、2件目、3件目と立て続けにマンションを購入するのは失敗の元に他なりません。なぜなら、2年目以降は、計上できる経費が限られてくるため、節税効果が一気に薄れてしまうからです。赤字計上による節税効果は長続きしないことを念頭において、長期的な投資プランをしっかり立てておきましょう。
ワンルームマンション投資の節税に向いている人の特徴
ここまでのおさらいも兼ねて、ワンルームマンション投資の節税に向いている人と向いていない人の特徴をまとめておきましょう。まず、ワンルームマンション投資に向いているのは、以下のような人です。
- 年収が1,000万円以上の人
- 一時的に収入が増えた人
- 相続税や贈与税を減らしたい人
各項目ごとにポイントをチェックしていきましょう。
年収が1,000万円以上の人
年収が概ね1,000万円以上の人は、所得税と住民税の節税を目的としたワンルームマンション投資に向いています。
課税所得(所得 – 所得控除)が900万円以上の場合は、所得税の税率が33%になり、物件を売却する際にかかる譲渡税の税率との差が大きくなります。長い目で見ると、節税によるメリットに不動産投資自体の利益がプラスされるでしょう。富裕層の人たちが税金対策でマンション投資を行うのはこのためです。
節税の仕組みについて、より詳しく知りたい場合は、「不動産投資による【節税】に向いている人は?3つの節税方法を詳しく解説」の記事を参考にしてください。
一時的に収入が増えた人
個人事業主や副業をしているサラリーマンで、一時的に収入が増えた人は、マンション投資を検討しても良いでしょう。
収入が急増した年にワンルームマンションを購入し、1年目の何かとかさむ初期費用と増えた分の収入を相殺(損益通算)すれば節税に有効です。物件さえきちんと選んでおけば、2年目以降は黒字化して節税効果が薄れたとしても、マンション投資そのものによる収益が期待できます。
相続税や贈与税を減らしたい人
相続税や贈与税を減らしたい人にもワンルームマンション投資は向いています。上記の通り、現金を不動産に変えて相続または贈与すると税金を大幅に圧縮できるからです。
なお、今すぐ贈与を受けてもまとまった金額の税金がかえって負担になるケースもあるでしょう。その場合、「相続時精算課税」の制度を活用すれば、2,500万円以下の財産をもらった際の贈与税が非課税になります。ただし、贈与者が亡くなった時点で受け継いだ全ての財産にかかる税金を合算し、贈与税ではなく相続税として一括納税することになるので注意しましょう。
ワンルームマンション投資の節税に向かない人の特徴
逆に、ワンルームマンション投資の節税に向かないのは、以下のような人になります。
- 年収が1,000万円以下の人
- 収入が安定している人
理由を詳しく見ていきましょう。
年収が1,000万円以下の人
年収が1,000万円以下の人は、所得税・住民税の節税を目的としたワンルームマンション投資には向いていません。
年収1,000万円(課税所得890万円)未満の場合、所得税の税率が23%(またはそれ以下)になるので、物件を5年以上所有して売却した際の譲渡税と住民税の合計税率20%との差がほとんどないか、マイナスになってしまいます。その結果、せっかく節税した分が、マンション投資トータルの損失で帳消しになることもあるでしょう。
わずかな節税効果のために、不動産投資のリスクを取るのは賢明とはいえません。年収が1,000万円前後の人は、事前に収支をシミュレーションして、手間暇をかけるだけの節税効果が見込めるかどうか、きちんと検証しておきましょう。
収入が安定している人
上記とは逆に、収入が1,000万円以下で安定している人は、節税目的のワンルームマンション投資には向いていません。老後の資産や不労所得の収入源がほしいといった節税以外の目的があるなら別ですが、節税がメインのマンション投資は避けたほうが無難でしょう。
ワンルームマンション投資での節税に関するQ&A
最後に、ワンルームマンション投資および節税に関して、よくある疑問にお答えします。
ワンルームマンション投資の理想的な利回りは?
ワンルームマンション投資の平均的な利回りは、新築が3%〜4%、中古が5%前後です。都市部ほど物件価格が高いので、利回りが低くなる傾向にありますが、賃貸ニーズが安定している点がメリットといえます。
地方の築古アパートや戸建の中には、利回りが極端に高いケースも見られますが、そういった物件は空室率が高かったり、後々売却したくても買い手が見つからなかったり、隠れたデメリットがあるものです。
節税目的の場合は、利回りが多少低めでも、好立地で安定需要が見込める都市部の中古マンションを選択しておくと良いでしょう。
サラリーマンでも節税は可能?
目的や条件に合てはまる人であれば、サラリーマンでも節税は可能です。ワンルームマンション投資では、収支がプラス(20万円以上)になった年は確定申告しなければなりませんが、赤字ならば申告する必要はありません。
ただし、マンション投資による赤字と給与所得を損益通算して節税したい場合は、赤字でも確定申告が必須になります。マンション投資の赤字を申告すると、会社から収めた(天引きされた)所得税の一部が還付されて節税になる仕組みです。住民税も同様に、確定申告することで請求額が減額されます。
なお、自ら確定申告をするのが困難な場合は、税理士に依頼することもできますが、その分の費用を負担しなければなりません。
確定申告を自分で済ませたい人は、「マンション投資の確定申告の手順は?必要書類や申告方法について紹介」の記事を参考にしてください。
ワンルームマンション投資に生命保険の代用効果はある?
意外と知られていませんが、ワンルームマンション投資には、生命保険の代用効果があります。不動産投資ローン(別名アパートローン)を組む際には、団体信用保険に加入するのが一般的です。
団体信用保険とは、ローンの契約者に万一のことがあっても、残りの返済を全額肩代わりしてくれる制度です。ローンが完済したマンションは家族の所有になるため、家賃収入を生活費に充てたり、売却して保険金の代わりにしたりできます。
ワンルームマンション投資にはさまざまなメリットがあるので、節税という目的だけにとらわれず、ご自身に最適な投資スタイルを検討してみましょう。
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ワンルームマンション投資の目的は、短期的な売却益(キャピタルゲイン)、中長期的な家賃収入(インカムゲイン)や資産形成、生命保険代わりなど人それぞれですが、節税もその一つです。今回ご紹介した通り、一定の条件さえ満たしていれば、大幅な節税効果が期待できるでしょう。
しかし、節税という目先の利益だけにとらわれていると、マンション投資自体に失敗したり、想定外のトラブルに巻き込まれたりすることにもなり兼ねません。常に幅広い視野を持って入念なリサーチやシミュレーションを行ってから、最適な物件を見極めるのが不動産投資の成功率を高める最大の秘訣です。
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