不動産投資による【節税】に向いている人は?3つの節税方法を詳しく解説

不動産投資による【節税】に向いている人は?

「節税のために不動産投資を始めたけど、節税効果が実感できない」、「そもそも、不動産投資には本当に節税効果があるのか」と思っている人もいるでしょう。

 

結論からいうと、不動産投資による節税は可能です。しかし、節税の仕組みを理解して最適な物件を選ばないと、不動産投資自体に失敗することにもなりかねません。

 

この記事では、不動産投資とは何か、不動産投資で節税するための方法を紹介していきます。不動産投資による節税に興味がある方、不動産投資で無用な失敗を避けたい方は、ぜひご一読ください。

不動産投資とは

不動産投資とは、売却益または運用益、あるいはその両方を目的として、不動産に資金を投入することです。

 

不動産投資には以下の2種類があります。

 

  • キャピタルゲイン型
  • インカムゲイン型

 

キャピタルゲイン型不動産投資の主な目的は「売却益」です。例えば、中古マンションやアパートをリフォームして、購入時よりも高く売却するといった手法で利益を得ます。

 

インカムゲイン型不動産投資の主な目的は「運用益」です。月々の家賃収入から諸経費を差し引いた分が利益になります。

 

バブル期にはキャピタルゲイン型の不動産投資が盛んでしたが、現在はインカムゲイン型が主流です。

不動産投資で節税はできる?

結論をいうと、不動産投資で節税はできます。特に節税効果が高いのは、以下ようなケースです。

 

  • 「所得が高い方」が「所得税」を減らしたい場合
  • 「相続税」を圧縮したい場合

 

この2つ以外でも節税できるケースはありますが、不動産投資のリスクに見合うだけの大幅な節税効果は期待できないでしょう。

 

上記のケースに当てはまらない方は、「節税」ではなく、「売却益」や「運用益」を目的とした不動産投資を選択した方が良いです。

 

物件選びをスタートする前に、まずはご自身の不動産投資の目的を明確にしておきましょう。

不動産投資で節税する3つの方法

なぜ不動産投資で節税できるのか、節税する方法と合わせて紹介します。

 

不動産投資で節税する方法は、主に次の3つです。

 

  • 「所得税」を減らして節税する
  • 「相続税」を圧縮して節税する
  • 「青色申告」を活用して節税する

 

それぞれの節税の仕組みやポイントを確認していきましょう。

1.所得税を減らして節税する方法

まずは、不動産投資により「所得税」を減らして節税する方法をご紹介します。

所得税を減らす仕組み

不動産投資によって所得税を減らす基本原理は、給与や事業所得といった「不動産投資以外の所得」と「不動産投資による経理上の赤字」を相殺(損益通算)して「課税所得」を減らすことです。

 

例えば課税所得が800万円の方の場合、不動産投資の赤字が年間200万円なら、課税所得を600万円に減らせるため所得税の大幅な節税になります。

所得税の節税に最適な物件

この仕組みを有効活用するには、減価償却費が大きく取れる木造の築古物件が最も適しています。なぜなら、減価償却費が大きければ、経理上の赤字も大きく計上できるからです。

 

一方、新築や築浅の物件は法定耐用年数が長く、1年当たりの減価償却費が小さくなります。経理上赤字になるのはまとまった費用がかかる最初だけなので、節税には不向きです。

所得税の節税に向いている人

上記の方法を利用すれば、だれでも節税ができる訳ではありません。「所得税」を減らすことができても、不動産を売却する際の「譲渡税」で、その分を丸々納めることになったらトータルでの節税にならないので、注意しましょう。

 

所得税の節税に向いているのは、所得が高い方(年収1,000万円以上が目安)です。所得が高いと所得税率も高くなるので、売却時の譲渡税率との「税率の差」を利用して実質的な節税ができます。

所得税の節税方法の詳細

以下、所得税と譲渡税の「税率の差」について、詳しく見ていきましょう。

 

まずは、「所得税(給与や事業所得にかかる所得税と住民税)」に関する表をご覧ください。

 

(給与や事業所得にかかる所得税・住民税)

課税所得

所得税率

住民税率

合計税率

195万円未満

  5%

10%

15%

195万〜

330万円未満

10%

20%

330万〜

695万円未満

20%

30%

695万〜

890万円未満

23%

33%

900万〜

1,800万円未満

33%

43%

1,800万〜

4,000万円未満

40%

50%

4,000万円以上

45%

55%

 

※上記の所得税率には復興特別所得税の税率2.1%が加算されます。

※上記の住民税率は各自治体によって若干異なる場合があります。

 

次に、不動産売却時の「譲渡税(譲渡所得にかかる所得税と住民税)」に関する以下の表をご覧ください。

 

(譲渡所得にかかる所得税・住民税)

 

所有期間

所得税率

住民税率

合計税率

短期譲渡

5年以内

30%

9%

39%

長期譲渡

5年以上

15%

5%

20%

 

※上記の所得税率には復興特別所得税の税率2.1%が加算されます。

 

不動産売却時には、売却した年の1月1日時点で、所有が「5年以内なら短期譲渡」、「5年以上なら長期譲渡」の税率がそれぞれ適用されます。長期譲渡の方が税率が低いので、節税したい場合は、5〜6年以上所有してから売却しましょう。

 

課税所得が695万〜890万円(年収約800万〜1,000万円)以上の方は、給与や事業所得にかかる「所得税(合計33%以上)」と長期譲渡した場合の「譲渡税(合計20%)」との「税率差」が13%以上と十分大きくなります。

この差を利用すれば、トータルで実質的な節税が可能です。さらに、年収が高い方ほど税率の差が大きくなるので、節税効果もより大きくなります。

2.相続税を圧縮して節税する方法

現金をそのまま相続すると、額面通り丸々課税対象になります。

 

一方、不動産に変えて相続する場合は、不動産の実勢価格ではなく、土地は「路線価評額」、建物は「固定資産評価額」によって課税額が決まります。実勢価格と比べると、土地は8割程度、建物は7割程度で評価されるのが通例です。

 

賃貸物件はさらに評価が下がるため、現金相続の場合と比べると、相続税の課税対象額を3割〜5割程度に減らせるでしょう。

 

例えば、1億円の現金を相続すると課税対象額はそのまま1億円です。

 

一方、計1億円の不動産(土地5,000万円+マンション5,000万円)に変えると、土地の評価額が4,000万円程度、建物の評価額が3,500万円程度になります。さらに、このマンションを賃貸物件として相続すれば、7割前後の評価に下がるため、相続税の課税対象額を5,000万円前後に減らせるでしょう。

3.青色申告を活用して節税する方法

上記2つのケースのいずれにも当てはまらない方は、節税目的ではなく、収益目的の不動産投資を選択すべきでしょう。ただし、収益目的で不動産投資する場合でも、「青色申告」を選択すれば一定の節税が可能です。

 

ここでは、青色申告での節税方法を紹介します。

青色申告とは?

不動産投資で節税するためには確定申告が必須です。

確定申告には以下の2種類があります。

 

  • 青色申告
  • 白色申告

 

「青色申告」とは、一般的な白色申告よりも詳細な収支や資産状況の報告をすることで、様々なメリットを享受できる申告方法です。

 

青色申告を利用すると最大で65万円の特別控除が受けられて、控除額の分だけ課税所得を減らせるので、その分節税ができます。

青色申告を活用して節税する方法

青色申告するためには、税務署に予め「所得税の青色申告承認申請書」を提出しておく必要があります。期限(※原則3月15日)までに上記の申請書を提出しないと、その年は自動的に白色申告になるので注意しましょう。

 

青色申告では、単式簿記・複式簿記どちらを選ぶこともできますが、単式簿記の場合の控除額は10万円です。

 

最大で65万円の「青色申告特別控除」を受けるためには、以下の条件を全て満たす必要があります。

 

  • 不動産投資が事業規模である
  • 複式簿記で申告する
  • 確定申告書に貸借対照表と損益計算書を添付する
  • e-taxで電子申告するまたは電子帳簿保存を行う

 

※不動産投資が事業規模(10室または5棟以上が目安)に達していない場合の控除額は10万円。

※複式簿記で紙の帳簿の場合の控除額が55万円。

 

青色申告を選択すれば10万〜65万円の控除が受けられるので、その分課税所得を減らすことで節税になります。青色申告にはその他にもメリットが複数あるので、節税をしたい人は検討してみましょう。

 

なお、青色申告の「概要」は、国税庁公式サイト内にある「青色申告制度」のページから確認できます。

青色申告の「詳細」が知りたい方は、同じく国税庁公式サイトの「はじめてみませんか?青色申告」をご覧ください。

不動産投資で節税できる税金

ここまでのおさらいも含めて、不動産投資で節税できる税金を種類別にまとめておきましょう。不動産投資で節税できる税金は以下の通りです。

 

  • 所得税
  • 住民税
  • 相続税
  • 贈与税

 

上記の通り、「所得税」は、不動産投資以外の所得と不動産投資による経理上の赤字を「損益通算」することで節税できます。給与や事業所得、不動産投資によって得られる所得(※譲渡所得を除く)は全て「総合課税制」に該当するので、不動産所得の赤字をそれ以外の所得と相殺できるのがポイントです。

 

「住民税」の税額は、確定申告によって所得税額が決まると、それを受けて決定されます。

税率は一律10%ですが、課税所得自体を減らせば、同時に住民税も節税が可能です。不動産投資を活用して節税したい場合は、会社員の方でも自ら確定申告する必要があるので注意しましょう。

 

「相続税」は現金資産を不動産に変えることで、課税評価額を圧縮すれば節税できます。「贈与税」の場合も節税の仕組みは同じです。特に、賃貸物件として相続または贈与すると節税効果が高まります。

 

ちなみに、事業規模の不動産投資の場合は、「法人化」することで適用税率を下げられるケースがあります。これは、「個人の所得税」と「法人税」の税率の差を利用した節税方法で、不動産投資が事業規模(概ね10室または5棟以上)に達している方に向いている方法です。

 

ただし、法人化すると、会計処理の手間が増えるなどデメリットもあるのでご注意ください。

不動産投資による節税のリスク

続いては、不動産投資による節税のリスクを次の3項目に分けて確認しましょう。

 

  • 所得税を節税する場合のリスク
  • 相続税を節税する場合のリスク
  • 不動産投資自体のリスク

 

ここでは、それぞれのリスクを詳しく解説していきます。

所得税を節税する場合のリスク

所得税を節税する際のリスクは以下の通りです。

 

  • 信用低下のリスク
  • 運用や売却で失敗するリスク
  • 税制改正のリスク

 

所得税の節税をする場合、不動産投資の赤字を不動産投資以外の所得と損益通算して節税する仕組みなので、不動産投資は経理上赤字で構いません。

 

しかし、赤字経営の不動産を所有していると、次に融資を受ける際の信用度が低下します。将来的に不動産投資の規模を拡大したいと思っても、ローンが組めなくなる可能性があるので注意しましょう。

 

課税所得を減らして大幅な節税ができるのは、減価償却費が大きく取れる間だけです。法定耐用年数を過ぎると節税効果はほとんどなくなるので、その後は運用益をきちんと上げるか、早期に売却するかの2択になります。

 

その際に運用や売却で失敗すると、節税で得た分のプラスが一気にゼロまたはマイナスになるケースもありえます。節税目的の不動産投資においても、出口戦略まで含めたトータルな投資計画が必要不可欠です。

 

所得税やその他の税制は意外と頻繁に改正されます。基礎控除額の変更といった小幅な改正の場合もありますが、この先「大幅な税制改正」が行われないとは限りません。万一節税に不利な改正が行われる場合には、損切りのための売却など、適切な対応を早期に講じる必要があります。

 

節税目的で不動産投資する場合は、所得税の税制改正にも注目しておきましょう。

相続税を節税する場合のリスク

相続税を節税する際のリスクは以下の通りです。

 

  • 現金持ち出しのリスク
  • 物件価値の下落リスク
  • 税制改正のリスク

 

現金ではなく不動産として相続する場合、相続税は自己資金の持ち出しで納めることになります。ある程度の蓄えがないと、相続時のやりくりに困るケースもあるはずです。その場合は、むしろ現金資産のまま相続した方が良いでしょう。

 

現金を不動産に変えて相続税が節税できても、相続した「物件の価値が下落する」可能性も考えられます。価値が急落した物件は運用益が期待できず、売却にも苦労します。節税が目的の場合でも、投資すべき物件を厳選しましょう。

 

また、所得税の場合と同じく、節税目的で不動産投資する場合は、念のため、相続税の「税制改正」にも注意しておいた方が良いです。

不動産投資自体のリスク

不動産投資には、以下のようなリスクが伴います。

 

  • 空室リスク
  • 価値下落リスク
  • 突発的な出費のリスク
  • 災害リスク
  • 金利変動リスク

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リスク対策の不足から運用に失敗すると、せっかく節税できた分が帳消しになってしまうことも十分にありえます。節税目的で不動産投資する場合でも、上記のようなリスクに対する施作をしっかり講じておきましょう。

不動産投資での節税に向いている人と向いていない人は?

最後に、不動産投資での節税に向いている人と向いていない人を解説します。不動産投資での節税を考えている人は、自分が当てはまっているかチェックしておきましょう。

不動産投資での節税に向いている人

不動産投資での節税に向いているのは次のような人です。

 

  • 「年収1,000万円以上」で「所得税」を減らしたい人
  • 「相続税」または「贈与税」を圧縮したい人
  • 不動産投資が事業規模で「青色申告」の手間を惜しまない人

 

上記のケースに当てはまる方は、今回ご紹介したような「節税の仕組み」を有効活用した不動産投資を検討してみましょう。

 

ちなみに、所得税と譲渡税の税率の差を利用する場合、節税になるかならないかの損益分岐点は「課税所得800万円前後」です。課税所得は年収から諸経費や控除を差し引いた金額なので、「年収1,000万円前後」の方が所得税を節税できるボーダーラインといえるでしょう。

不動産投資での節税に向いていない人

不動産投資での節税に「向いていない」のは次のような人です。

 

  • 「年収1,000万円以下」の人
  • 「相続税」または「贈与税」の税金対策が必要ない人
  • 「青色申告」が負担になる人

 

以上のケースに当てはまる方は、節税目的ではなく、「収益目的」の不動産投資を選択しましょう。

 

なお、不動産投資が事業規模に達していない方でも「青色申告」は選択できますが、その場合の控除額は10万円です。わざわざ手間隙をかけるほどの節税効果はあまり期待できません。

 

事業規模の不動産投資の場合は、最大で65万円の「青色申告特別控除」が受けられますが、複式簿記での申告やその他の書類の提出義務が負担になる場合は、むしろ白色申告を選択した方が良いでしょう。

まとめ

不動産投資による節税方法をまとめると以下の3つです。

 

  • 所得税の節税
  • 相続税・贈与税の節税
  • 青色申告による節税

 

今回ご紹介した通り、不動産投資で大きな「節税効果」が得られるのは、一部の方に限られます。それ以外の方は、不動産投資の本来的な目的である売却益や運用益を見据えて、そのために最適な物件を選択した方が良いでしょう。

 

節税目的、収益目的いずれの場合でも、不動産投資には必ずリスクが伴います。投資すべき物件を選ぶ際には、リスク対策や出口戦略まで含めた幅広い視野から検討することが欠かせません。

 

その際には、不動産投資の実績と経験が豊富なアデプトマネジメントのサポートが非常に有効になるはずです。不動産投資での節税に関するご相談や節税に最適な物件選びも、ぜひアデプトマネジメントにお任せください。

 

この記事の編集者

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アデプトマネジメント編集部

【宅地建物取引業】大阪府知事(2)第59728号
【賃貸住宅管理業】国土交通大臣(1)第002807号

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