「不動産投資で節税をするためには青色申告が良いと聞くが、青色申告は誰でもできるの?」「そもそも青色申告をすると何が良いの?」といった疑問を抱えている不動産投資家の方も多いのではないでしょうか。
そんな方のためにこの記事では、そもそも青色申告とは何か、不動産投資で青色申告をするための条件、青色申告をするメリットデメリットなどを解説していきます。青色申告について知りたい、青色申告を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
青色申告とは
確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告は、日々の取引を複式簿記に記帳をして、それに基づいた申告を行う確定申告制度です。青色申告は事前に税務署に申請して承認を得ておく必要があり、正しく申告すれば最大で65万円の特別控除を受けられます。
税務署に申請を行わず、承認を受けずに行う確定申告が白色申告です。青色申告は帳簿への記帳などの手間がかかりますが、その分税制上の優遇措置を受けられるというメリットがあります。
不動産投資で青色申告するための条件
不動産投資で利益を得ている場合、確定申告を行う必要があります。サラリーマンが本業の人でも、不動産所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になるので、注意してください。確定申告では、青色申告にするとさまざまなメリットが得られますが、青色申告をするには、いくつか条件を満たさなければなりません。
ここでは、不動産投資で青色申告をするための条件を3つ解説していきます。
- 不動産所得がある
- 青色申告承認申請書を提出する
- 確定申告を行う
それぞれ見ていきましょう。
①不動産所得がある
青色申告をするための条件としては、まず不動産所得があることが挙げられます。不動産所得は、所有しているアパートやマンションなどの物件を貸し出すことで得られる所得を指す言葉です。
家賃収入がそのまま不動産所得になるわけではなく、家賃収入から経費を差し引いた金額が不動産所得になります。賃貸物件の管理業者に支払う管理費などは経費として差し引かれるため、計算する際は注意してください。
②青色申告承認申請書を提出する
青色申告を行う場合は、事前に税務署に青色申告承認申請書を提出する必要があります。原則として、申告をしようとする年の3月15日までに提出しなければいけません。
不動産投資を始めた年に限っては、物件の貸し付けを始めた時点から2ヶ月以内に申請書を提出すれば良いことになっています。白色申告にはそのような申請書はないので、期限内に提出できなかった人は、その年の確定申告は白色申告で行うことになります。
③確定申告を行う
不動産投資で青色申告をするときは、当然のことながら確定申告の手続きを行わなければいけません。確定申告の期限は例年2月16日から3月15日となっており、確定申告書に損益計算書や貸借対照表を添付して税務署に提出します。
青色申告は白色申告と違い、複式簿記という方法で帳簿に記帳する必要があるので注意してください。複式簿記は取引を複数の科目で記載する方法です。仕訳を行って、資産や負債の増減、収益や費用の増減を記入します。近年は、会計ソフトなどを使って損益計算書や貸借対照表を作成する人が多いです。
不動産投資で青色申告をするメリット
不動産投資における青色申告には、さまざまなメリットがあります。ここでは、青色申告をするメリットを5つ紹介していきます。
- 青色申告特別控除を受けられる
- 損失の繰り越しができる
- 貸倒引当金を設定できる
- 少額備品を全額損金算入できる
- 専従者給与も経費になる
青色申告は白色申告と比較すると、事前に税務署に申請が必要、複雑な記帳をしなければいけないなどの手間がかかります。しかし、その分得られるメリットも多いので、ぜひ活用してみてください。
青色申告特別控除を受けられる
青色申告を行うもっとも大きなメリットは、青色申告だけに認められている特別控除が受けられるという点です。控除額は最大で65万円で、その他にも55万円、10万円といった控除額があります。
65万円の控除を受ける条件は、事業規模であることです。複式簿記の帳簿を付けてe-Taxによる申告をするか、電子帳簿での保存が必要となります。事業規模と認められるのは、アパートやマンションであれば10室以上、戸建て住宅であれば5棟以上です。10万円控除であれば、事業規模に関係なく受けられます。
損失の繰り越しができる
損失の繰り越しができるのも青色申告のメリットです。不動産投資は必ず黒字になるわけではなく、赤字が出る場合もあります。赤字が出た際に、青色申告であれば最大で3年間赤字を繰り越せるのです。
利益が大きくなった年の所得が下がるので、支払う税金が少なくなります。また、会社員として本業がある場合には、本業の給与などとも損益通算を行うことが可能です。損益通算を行えば、所得を少なくできる場合もあります。
このように、不動産投資では節税効果も期待できます。不動産投資による節税を考えている人は、下記の記事も参考にしてみてください。
貸倒引当金を設定できる
青色申告には、貸倒引当金を設定できるというメリットもあります。貸倒引当金とは、将来発生することが予想される損失を予想してあらかじめ計上しておくものです。
例えば、家賃を支払わない入居者がいて回収の見込みが立たないときには、その分の金額を貸倒引当金として設定できます。ただし、貸倒引当金を設定しても家賃を回収できず、貸倒れにならないこともあるでしょう。その場合には、翌年に収入として計上する必要があります。
少額備品を全額損金算入できる
青色申告では、少額の備品を全額損金として算入できます。白色申告では、10万円以上する備品は一度に全額を損金として申告することができず、減価償却によって数年かけて計上する必要があるのです。
青色申告の場合には、取得額が30万円未満であれば全額を損金として算入できます。計上が認められている金額は年間で300万円です。10万円以上の備品には事務作業に必要不可欠なパソコンなども含まれるので、青色申告をしたほうが便利でしょう。
専従者給与も経費になる
青色申告では、専従者給与も経費にすることが可能です。不動産投資を行う上で、事務作業を配偶者や親しい親族などに任せている人も多いでしょう。その労働の対価として支払う給与を、経費として計上できるのです。専従者給与を経費として計上するためには、事前に税務署に届出をしておく必要があります。
専従者給与とは、生計を同じくする配偶者や親・兄弟姉妹・子供といった親族を従業員として雇い、支払う給与のことを指します。
不動産投資で青色申告をするデメリット
税制上の優遇措置を受けられるなど、メリットが多い青色申告ですが、デメリットがないわけではありません。ここからは、不動産投資で青色申告をするデメリットについて見ていきましょう。
- 事前に申告をしなければいけない
- 複式簿記で記帳する必要がある
青色申告の利用を検討している方は、メリットとデメリットを比較しながら考えてみてください。
事前に申告をしなければいけない
青色申告を行うためには、所管の税務署に青色申告承認申請書を提出して承認を受ける必要があります。この作業は、適用を受けようと思う年の3月15日までに行わなければいけません。
確定申告をするときに「青色申告にしたい」と思っても、申請書を提出していなければ適用されず、白色申告となってしまいます。また、年の途中で不動産投資を始めた場合には、開始した時点から2ヶ月以内に申請を行う必要があります。最初は何かと忙しいので、忘れてしまわないように注意してください。
複式簿記で記帳する必要がある
青色申告では、帳簿を複式簿記という方法で記帳する必要があります。複式簿記は1つの取引に対して、「借方」と「貸方」の両方の面から記帳する方法です。借方と貸方は常に金額が一致しなければいけません。
ミスが見つかりやすく不正もしにくい記帳方法ですが、その分手間はかかる方法でもあります。慣れていないうちは、記入に時間がかかってしまうでしょう。
不動産投資で青色申告を行う流れ
不動産投資で青色申告を行う流れとしては、まず税務署に青色申告承認申請書を提出します。不動産投資を始めてから2ヶ月以内に、忘れずに提出するようにしましょう。
確定申告を行う際にはまず、年間を通して取引の帳簿を作成し、複式簿記の方法で帳簿付けを行います。事前に確定申告に添付する書類を集めておくとスムーズです。添付する書類の例としては、住宅ローン控除の借入金の年末残高証明などが挙げられます。
確定申告書を作成したら、添付書類と合わせて税務署窓口に提出します。郵送やe-Taxなどでも手続きすることが可能です。
詳しい確定申告の流れや必要な書類については、下記記事をご参照ください。
不動産投資で青色申告をする場合の注意点
最後に、不動産投資で青色申告をする場合の注意点について見ていきましょう。不動産投資を始める前に、しっかりと確認してください。
- 失業手当や再就職手当の対象外になる
- 事業的規模で控除額が変わる
- 期限内に申告しないと白色申告になる
それぞれの注意点を順番に見ていきましょう。
失業手当や再就職手当の対象外になる
不動産投資を事業として行う場合には開業届を提出しますが、開業届を提出すると失業手当や再就職手当を受け取れなくなります。そもそも失業手当とは、雇用保険に加入していた人が失業した際に、再就職するための支援として給付されるお金です。
開業届を出すと個人事業主として扱われるので、失業状態ではないと判断されて、失業手当を受け取れなくなります。再就職が決まったときにもらえる再就職手当も、同様の扱いになるので注意しましょう。
事業的規模で控除額が変わる
青色申告の控除額は、事業規模によって変わるという点にも注意してください。青色申告で受けられる最大の控除額は65万円ですが、65万円の控除を受けるには事業的規模でなければいけません。
事業的規模かどうかは、大まかに「10室5棟」で判断することが可能です。アパートやマンションなどの集合住宅であれば、賃貸に出せる独立した部屋数が10室以上となります。一戸建ての場合は5棟以上が目安です。事業的規模には達していない場合、控除額は10万円となります。
不動産投資で受けられるさまざまな特別控除について、下記記事で解説しているので、よりお得に不動産投資をしたい人は、ぜひご覧ください。
期限内に申告しないと白色申告になる
青色申告を行う場合には、必ず期限内に申告するようにしてください。確定申告は毎年提出する期限が決まっており、期限内に申告できなかった場合、さまざまな不利益を被ってしまいます。
自動的に白色申告になって特別控除は受けなくなるだけでなく、延滞税や無申告加算税といったペナルティが課されることもあるのです。確定申告では1月1日から12月31日までの所得を計算して、2月16日から3月15日までの1ヶ月の間に提出をします。
不動産投資の青色申告についての疑問はアデプトにお任せ!
不動産投資で収入を得ている場合には確定申告を行う必要がありますが、青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告は最大で65万円の特別控除を受けられるなど、さまざまなメリットがありますが、帳簿の記帳などが複雑で手間がかかるというデメリットもあるので注意してください。
不動産投資を行っている人の中には、「青色申告をしたいけど複式簿記が複雑で分からない」といったお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
不動産投資を多く手掛けているアデプトマネジメントでは、不動産投資に関係する税金の知識も豊富にあります。不動産の売買だけでなくコンサルティング業も行っており、税理士や公認会計士、FPといった専門家へのネットワークもございますので、不動産投資の確定申告に関する疑問や不安点がある方は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。