不動産投資である程度の収入を得られるようになったら、確定申告が必要になります。しかし、確定申告をしたことがない、そもそもどんな書類を提出するのかを知らないという方も多いのではないでしょうか。
確定申告では、種類ごとに定められた必要書類を揃え、期間内に申告を完了しなければいけません。この記事では、不動産所得の確定申告時の必要書類、申告方法別の必要書類、不倒産所得・税金の計算方法を解説していきます。不動産所得の確定申告方法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
正しく申告をしないと、無申告加算税・過少申告加算税・重加算税など、ペナルティを課される可能性もあるので注意しましょう。
不動産投資の収入は確定申告が必要?
不動産所得が20万円を超えた場合は、確定申告が必要になります。納税すべき金額がない場合、または本業とは別に副業として不動産投資を行っていて不動産所得が20万円以下の場合、確定申告は必要ありません。建物・土地の貸付や不動産の権利の貸付で得た収入などの他、船・航空機の貸付で得る収入も不動産所得です。
副業として不動産投資を行っていて不動産所得が赤字だった場合は、給与所得金額を相殺する損益通算ができるので、確定申告を行うようにしましょう。
確定申告が必要・不要なケースについてもっと詳しく知りたい方は、「不動産売却後の大きな壁は確定申告!確定申告の方法や書類の種類を詳しく解説」をご参照ください。
不動産所得の確定申告時の必要書類
ここからは、不動産所得の確定申告時に必要な書類を説明します。どんな申告方法でも必要となる書類を解説していくので、チェックしてみてください。
不動産収入が分かる書類
不動産所得の確定申告では、不動産の総収入が分かる書類が必要です。不動産所得として得られるのは家賃収入だけでなく、駐車場収入や宣伝用看板の広告費なども含まれます。そのため、それらをまとめて把握できる書類が求められるのです。
必要な書類の例としては、下記のようなものが挙げられます。
- 現金出納帳
- 敷金・更新料の管理表
- 賃貸借契約書
- 家賃送金明細書
その他、1月1日から12月31日までの1年分の通帳のコピーなども有効です。
必要経費・控除が把握できる書類
不動産所得は、不動産投資によって得た総収入から控除や経費を差し引いた金額です。そのため、経費が多ければ多いほど課税対象の収入額が小さくなり、結果納税額も小さくなります。
不動産所得を正確に把握するためには、必要経費・控除が把握できる書類を用意しておかなければいけません。控除や経費を把握するのに必要な書類の例としては、下記の通りです。
- 管理委託契約書
- 領収書(管理費・修繕費・積立金・雑費など)
- 租税公課の納付書
- 年末借入金残高証明書
- 固定資産台帳
- 給与台帳
- 支払書・領収書(医療費・寄付金など)
- 控除証明書(損害保険・社会保険など)
うっかり処分してしまうと、その分の経費は証拠がなくなり、申告の際含めることができなくなるので注意しましょう。
確定申告書
確定申告を行う上では、確定申告書を作成する必要があります。確定申告書は、税務署や確定申告会場でもらえる他、国税庁の公式サイトなどからダウンロードすることも可能です。また、これまで確定申告を行ってきた人であれば、希望すれば毎年確定申告期間の前に、申告書類一式を郵送で送ってもらうことも可能です。
確定申告書には「確定申告書A様式」と「確定申告書B様式」の2種類の様式があります。不動産所得の申告に使用するのは確定申告書B様式なので、間違わないように気を付けましょう。
源泉徴収票
不動産投資の他にも、会社などで得た収入がある方は源泉徴収票も必要です。源泉徴収は会社の年末調整で行われており、すでに正しく計算された所得税が記載されています。
源泉徴収票は、会社で年末調整が行われており、正しく計算された所得税が記載されています。また、社会保険料なども会社で把握しているものは記載されています。
不動産所得の申告では、このような所得税計算済みの内容と合わせて、もう1度所得税を計算しなおすのです。もし不動産所得で赤字が出ているなら、源泉徴収票に記載されている所得税が一部以上還付される可能性もあります。
【申告方法別】不動産所得の確定申告で必要な書類
確定申告にはいくつかの種類があり、種類によって必要な書類も異なります。不動産投資の確定申告は、白色申告・青色申告のいずれかです。ここでは、それぞれの申告に必要な書類を解説します。
白色申告
白色申告は比較的簡単な申告方法で、簿記の知識をあまり持っていない人でも帳簿・書類作成ができます。不動産所得があって青色申告で行わない場合は、白色申告での帳簿が義務付けられています。白色申告に必要な書類は、確定申告書・控除を証明する書類・収支内訳書などです。
青色申告
青色申告は白色申告より大きな金額を控除できますが、複式簿記による帳簿が必要で書類作成がやや難解であり、簿記の知識が必要です。また、青色申告を行う場合は、開業届を提出するなどの事前の申請を行わなければいけないので、青色申告を検討している人は注意してください。
なお、青色申告は事業の規模により、さらに次の2通りの申告があります。
- 10万円控除適用
- 最大65万円控除適用
①10万円控除適用
小規模の不動産所得は、10万円控除の適用が可能です。青色申告は複式簿記での帳簿付けが基本ですが、10万円控除で申告するなら簡易簿記でも認められます。必要書類は、確定申告書・控除を証明する書類・収支内訳書(損益計算書含む)です。
②最大65万円控除適用
10万円控除以外に、青色申告には55万円・65万円の控除があります。これらの控除を受けるためには、確定申告書・控除を証明する書類・青色申告決算書(損益計算書・賃借対照表を含む)が必要です。
また、帳簿は複式簿記での作成になります。65万円の控除を受けるためには、さらに仕訳帳および総勘定元帳を正しい形で電子保存し、税務署に提出する必要があるので、忘れないようにしましょう。
白色申告と青色申告で必要な書類一覧
申告の種類 | 控除 | 必要書類 |
---|---|---|
白色申告 | なし | 確定申告書・控除を証明する書類・収支内訳書 |
青色申告 | 10万円控除 | 確定申告書・控除を証明する書類・収支内訳書(損益計算書含む) |
最大65万円控除 | 確定申告書・控除を証明する書類・青色申告決算書(損益計算書・賃借対照表を含む) |
不動産所得・税金の計算方法
続いて、不動産所得・税金の計算方法について解説します。確定申告は自分で税額を計算する必要があるので、計算方法もしっかりと把握しておきましょう。
不動産所得の計算方法
先ほども解説した通り、不動産所得は不動産投資によって得た総収入ではないので、「不動産の総収入-経費」の計算式で、経費を除いた金額を把握する必要があるのです。
例えば、不動産の総収入が100万円で経費が50万円かかっている場合、「100万円-50万円」で、不動産所得は50万円です。控除がある場合は、「不動産の総収入-経費-控除」となります。
不動産所得の経費
不動産所得の経費として認められるものには、減価償却費・修繕費・管理費・消耗品費・光熱水費・業者への管理委託料などがあります。不動産を取得する際にかかった手数料や、不動産の賃借人を探すために使った仲介手数料・広告宣伝費なども経費の対象です。
その他、不動産関係の団体・協会などに所属するための会費や不動産事業を行う上で利用した専門家への報酬も経費に含まれます。なお、不動産事業と関係の薄いもの、個人に関連するものなどは経費として認められません。
不動産投資の確定申告で経費と認められるものについては、「不動産投資で計上する経費によって節税効果が変わるって本当?」の記事で解説しています。
不動産所得の確定申告で納税する税金の計算方法
不動産所得の確定申告で実際に納める税金の金額は、「(不動産所得額 – 控除額)×税率」で計算します。控除額は申告の種類によって異なり、税率は課税される所得額(控除後の不動産所得額)によって異なります。所得額ごとの詳しい税率は、国税庁のサイトなどから確認することが可能です。
例えば、不動産所得額が50万円、青色申告の10万円控除を適用であれば、「(50万円-10万円)×5%」で、納めるべき税額は2万円です。
不動産所得の確定申告方法
確定申告書類や計算方法について説明したところで、不動産所得の具体的な確定申告方法を見ていきましょう。確定申告は条件が揃っていれば毎年行うものです。申告の流れや方法も大きな変更はあまりないので、ルーティン化できるよう覚えてしまいましょう。
申告の流れ
不動産投資の確定申告ではまず、申告に必要な書類を揃えましょう。自分が行う申告方法で必要な書類は何かを確認し、決められた形式の書類を準備します。また、利用できる控除があれば、各控除の証明書類も用意してください。
全ての書類が揃ったら、次は確定申告書や青色申告決算書などに内容を記載していきます。このとき、計算ミスや記載ミスをしないように注意しましょう。申告書と添付書類が準備できたら、最後に提出します。提出をしたら、所属税などの税金の納付や還付金の受け取りをしてください。
確定申告の詳しい手順については、「マンション投資の確定申告の手順は?必要書類や申告方法について紹介」の記事で解説しています。
確定申告書類の提出方法
確定申告書類の提出方法は、会場に持参、郵送、電子申告の3通りです。それぞれどういった提出方法なのかを解説します。
- 会場に持参
会場に持参する場合は、最寄りの税務署もしくは確定申告用に設置されている会場に申告書類を持っていって提出をします。 - 郵送
郵送の場合は必要書類をまとめて税務署宛に送付します。確定申告書類の控えが必要であれば、あらかじめ控えも作成し、切手付きの返信用封筒とともに同封しましょう。 - 電子申告
電子申告は、国税電子申告・納税システムのe-Taxから行えます。登録すれば、どこからでも簡単に申告・納税が可能です。
確定申告の期限は例年同じで、2月16日から3月15日までの1ヶ月間。期限間近になると、税務署や確定申告会場は非常に混雑するため、できる限り早めの申告が良いでしょう。
不動産所得の確定申告に関するよくある質問
最後に、不動産所得の確定申告について、よくある質問を紹介します。疑問を分からないままにしていると、自分が損をしてしまうこともあるので、しっかり解決しながら申告手続きを進めましょう。
未収入の家賃は収入に含まれる?
入居者の都合でまだ回収しきれていない家賃などがある場合、未収入の家賃は収入に含まれるのかという疑問を抱える方も多いでしょう。結論からいえば、未収入の家賃も収入に含まれます。
家賃は、実際に自分の手元に入ってきたときではなく、入居者に家賃の支払い義務が発生した時点で収入とみなします。つまり、入居者からの支払いがまだであっても、家賃自体発生している状態であれば、それは全て収入に含めて確定申告しなければいけないということです。
税理士への報酬は経費になる?
不動産投資の税務関係を税理士に任せている場合、税理士への報酬を経費に計上しても問題ありません。税理士への報酬は、支払手数料・支払委託料・業務委託費などに仕分けし、他の経費と同様に扱います。
正しく確定申告をしないとどうなる?
申告すべき所得額があるのに申告をしない、過少に申告をするなど、正しく確定申告をしていないと税務署からペナルティを課される可能性があります。ペナルティが課されると、一気に金額の負担が重くなるため、正しく申告を行うようにしましょう。
- 無申告加算税
期限内に確定申告書の提出がない場合に課せられる加算税 - 過少申告加算税
期限内に提出した申告書の申告納税額が過小であった場合に課せられる加算税 - 重加算税
期限内に納めるべき税金を納めない場合で、特に悪質な場合に課される加算税
確定申告で不安なら弊社にご相談ください
不動産投資をしている場合、不動産所得が納税するレベルに達していないなどの特別な条件に当てはまらない限り、必ず確定申告が必要になります。自身にあった申告方法を選び、それぞれの申告に必要な書類を揃えること、確定申告期間内に正しく申告を完了することが大切です。正しく申告をしないと、大きなペナルティを課される可能性もあるため、気を付けましょう。
不動産投資に関するお悩みを抱えている方は、ぜひアデプトマネジメントにご相談ください。投資用不動産の買取・販売はもちろん、コンサルティング業も行っておりますので、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。