不動産売却時の譲渡所得税はいくら?計算方法や税率を解説

不動産売却時の譲渡所得税はいくら?計算方法や税率を解説

不動産売却では、譲渡をした際に得た利益に対して「譲渡所得税」がかかります。しかし、譲渡所得税がいくらかかるのか分からない、どのように計算するのかを知らないという方も多いでしょう。

この記事では、そもそも譲渡所得税とは何か、譲渡所得税の計算方法、譲渡益・譲渡損がある場合の特例などについて解説していきます。譲渡所得税がいくらかかるのかを知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

不動産の売却時にかかる「譲渡所得税」とは

譲渡所得は、土地や建物、宝石などの資産を譲渡することによって得た利益を指します。このとき、資産を譲渡して得た利益に対して発生するのが「譲渡所得税」です。不動産売却をして利益を得た場合も、得た利益に応じた譲渡所得税を納めなければいけません。

譲渡所得税は、他の所得と分離して税額を計算して納税する「分離課税」なので、通常の給与所得や事業所得に課される税金と切り離して計算をする必要があります。以下では、譲渡所得税の計算方法について見ていきましょう。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得の計算方法

譲渡所得税を計算するためには、まず譲渡所得から算出する必要があります。譲渡所得の計算方法は下記の通りです。

譲渡所得 = 収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額

項目 内容
収入金額 土地や不動産の売却価格
取得費 売却した土地や不動産を手に入れた際にかかった費用
譲渡費用 土地や不動産を売ったときにかかった費用
特別控除額 一定の要件を満たした場合に適用される控除

取得費や譲渡費用については、下記で紹介していきます。特別控除額については、後ほど詳しく解説していくので、ぜひ最後までご覧ください。

取得費とは

取得費は、売却した土地や不動産を手に入れた際にかかった費用を指します。具体的には、購入費用や手数料、購入時にかかった税金、設備費、改築費などです。取得費に含まれる項目の詳細については、「No.3252 取得費となるもの|国税庁」のページをご参照ください。

取得費の計算は、下記の2つの方法のうち、大きい金額を使います。

  1. 実額法:取得費 – 建物の減価償却費
  2. 概算法:収入金額 × 5%

減価償却費については、次項で説明していきます。

減価償却費の算出方法

建物などの経年劣化して資産の価値が減少する「減価償却資産」は、資産ごとに定められている耐用年数によって分割して、経費として計上する必要があります。
減価償却費の計算式は下記の通りです。

減価償却費 = 取得費 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率は建物の使用目的や構造によって異なるので、下記の表を参照しながら計算してみてください。下記の表では、非業務用(マイホームなど)の償却率についてまとめられています。

減価償却費の計算

参考:「「減価償却費」の計算について|国税庁

譲渡費用とは

譲渡費用は、土地や不動産を売った際に実際にかかった費用のことです。例としては、下記のような費用が挙げられます。

  • 仲介手数料
  • 土地や建物を売るために直接要した費用(測量費など)
  • 貸家の売却時に支払った立退料
  • 建物を取り壊して土地を売った場合の取り壊し費用
一言メモ

譲渡費用は譲渡する際に直接必要となる経費なので、修繕費や管理費、維持費、固定資産税などは含まれません。

譲渡所得税の税額の計算方法

譲渡所得税の税額の計算方法

ここまで譲渡所得の計算方法について解説しましたが、ここからは譲渡所得税の計算方法を詳しく解説していきます。譲渡所得税は、上記で計算した譲渡所得にそれぞれの税率をかけて計算します。

譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率

譲渡所得には「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」があり、それぞれで税率が異なります。そのため、税率を計算するためには、まず自分の譲渡所得がどちらに当てはまるのかを知らなければいけません。長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いは、下記の通りです。

長期譲渡所得 売却した年の1月1日で所有期間が5年を超える不動産を譲渡したときの所得
短期譲渡所得 売却した年の1月1日で所有期間が5年以下の不動産を譲渡したときの所得

それぞれの所得でかかる税率の計算方法は、下記のようになります。

注意ポイント

令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1パーセントを所得税と合わせて納付する必要があるので、税率の計算をする際には注意してください。

所得税率 復興特別所得税 住民税率 合計税率
短期譲渡所得 30% 0.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得 15% 0.315% 5% 20.315%

 

参考:「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき) |国税庁

譲渡益がある場合の譲渡所得税の特別控除

譲渡益がある場合の譲渡所得税の特別控除

不動産の売却時に特別控除の対象になる場合は、 譲渡所得を計算する際に合計金額から控除金額を差し引くことができます。ここでは、不動産の売却時に利益が出た場合に適用される特別控除の例を見ていきましょう。

条件 特別控除の内容
マイホームの譲渡 3,000万円の特別控除を受けられる
所有期間10年以上のマイホームの譲渡 長期譲渡所得の軽減税率が適用される
特定のマイホームの買換え・交換 譲渡所得税を将来に繰り延べられる
相続した居住用財産(空き家)の譲渡 譲渡所得から最大3,000万円控除される
平成21年・22年に取得した土地の譲渡 譲渡所得から1,000万円控除される

マイホームの譲渡

居住用財産(マイホーム)を売却する際には、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が適用される場合があります。所有期間の長さに関係なく控除を受けられますが、下記のような要件を満たす必要があるので注意してください。

要件
  • 自分が住んでいる家屋、もしくは家屋とともに敷地や借地権を売却している
  • 以前住んでいた場合は、住まなくなってから3年経過する年の12月31日までに売却する
  • 売った年の前年及び前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例を受けていない
  • 売手と買手が親子・夫婦など特別な関係ではない

上記の他にもさまざまな要件があるので、詳しく知りたい方は「No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁」のページをご参照ください。

所有期間10年以上のマイホームの譲渡

所有期間10年を超えるマイホームを売却する際は、要件に当てはまれば「10年超所有軽減税率の特例」が適用されます。これは、長期譲渡所得の税額を通常よりも低い税率で計算できる軽減税率の適用が受けられるものです。

特例を受けるための要件には、下記のような内容があります。

要件
  • 日本国内にある自分が住んでいる家屋、もしくは家屋とともに敷地や借地権を売却している
  • 以前住んでいた場合は、住まなくなってから3年経過する年の12月31日までに売却する
  • 売った年の1月1日時点で売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えている

詳しい要件については、「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁」をご参照ください。

特定のマイホームの買換え・交換

特定の居住用財産(マイホーム)を買い換えた際は、「特定の居住用財産の買換えの特例」が適用される場合があります。これは、一定の要件に当てはまる場合に譲渡所得税を将来に繰り延べることが可能な特例です。あくまで将来に繰り延べるための特例で、非課税になるわけではないので注意しましょう。
特例を受ける際には、下記のような要件を満たしている必要があります。

要件
  • 自分が住んでいる家屋、もしくは家屋とともに敷地や借地権を売却している
  • 以前住んでいた場合は、住まなくなってから3年経過する年の12月31日までに売却する
  • 売ったマイホームと買い換えたマイホームが日本国内にある
  • 売却代金が1億円以下である

上記の他にもさまざまな要件があるので、詳しくは「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁」をご参照ください。

相続した居住用財産(空き家)の譲渡

相続または遺贈によって取得した被相続人居住用家屋・被相続人居住用家屋の敷地などを売却する場合、特例を受けられる可能性があります。平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売却して、なおかつ下記のような要件に当てはまる場合は、譲渡所得から最大3,000万円控除されます。

要件
  • 売却した本人が相続または遺贈によって被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を取得している
  • 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却している
  • 売却代金が1億円以下である

上記の他にもさまざまな要件があるので、詳しくは「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁」をご参照ください。

平成21年・22年に取得した土地の譲渡

平成21年に取得した国内にある土地を平成27年以降に、平成22年に取得した国内にある土地を平成28年以降に譲渡した場合に、要件を満たせば特別控除が適用されます。譲渡所得の金額から1,000万円控除され、譲渡所得の金額が1,000万円に満たない場合は譲渡所得の金額がそのまま控除されます。
特例の適用を受けるための要件としては、下記のような内容があります。

要件
  • 平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地等を取得している
  • 平成21年に取得した土地等は平成27年以降に、平成22年に取得した土地等は平成28年以降に譲渡すること
  • 親子や夫婦などの特別な間柄にある者から取得した土地等ではない
  • 相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済及び所有権移転外リース取引によって取得した土地等ではないこと

上記の他にもさまざまな要件があるので、詳しくは「No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除|国税庁」をご参照ください。

譲渡損がある場合の譲渡所得税の特例

損益通算

ここまでは、譲渡益があった場合に適用される特例について解説しました。ここからは、譲渡損がある場合の特例について解説していきます。それぞれの方法について見ていきましょう。

特例 内容
損益通算 損失を他の所得から控除して所得総額を安くする
繰越控除 控除しきれなかった損失を3年間にわたって繰越控除をする

損益通算

損益通算とは、不動産売却における損失を給与所得・事業所得などの他の所得から差し引くことです。譲渡損があった場合、要件を満たしていれば損益通算をすることができます。損益通算をすると所得総額が安くなり、結果的に税金も安くなるのです。

損益通算の適用要件には、下記のような内容が挙げられます。

損益通算の適用要件
  • 日本国内にある自分が住んでいる家屋を売却している
  • 以前住んでいた場合は、住まなくなってから3年経過する年の12月31日までに売却する
  • 譲渡の年の1月1日時点で所有期間が5年を超え、日本国内にあるものの譲渡であること

詳しい要件については、「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁」をご参照ください。

繰越控除

繰越控除とは、その年に損益通算で控除しきれなかった損失を、翌年以降に繰越控除ができる特例です。繰り越せる期間は、翌年以後の最長3年間です。特例を受ける条件は損益通算と同様なので、損益通算を行う際にしっかりと確認しておきましょう。

不動産売却時にかかる譲渡所得税以外の税金

印紙税

ここまで、不動産売却時にかかる譲渡所得税について解説しましたが、ここからは譲渡所得税以外の税金について見ていきましょう。不動産売却時にかかる譲渡所得税以外の税金としては、下記のような内容があります。

  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 仲介手数料に対しての消費税

それぞれ解説していきます。

印紙税

不動産を売却する際の契約書や領収書などを作成する際に、文書に課される税金を「印紙税」といいます。印紙税は売却金額によって税率が変わり、金額が高くなるほど高くなる傾向です。印紙税の税率は下記の通りです。

印紙税の軽減措置

参考:「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁

印紙税などの不動産売却時にかかる税金については、「投資用マンションの売却時にかかる税金と確定申告の方法まとめ」をご参照ください。

登録免許税

不動産の名義を変更する際などに発生するのが、登録免許税です。法務局の登記簿に所有権を記録して公示するために発生する税金で、下記のように算出します。

登録免許税額 = 課税標準 × 税率

課税標準は、不動産の固定資産税評価額を指します。固定資産税評価額は、市区町村から通知される固定資産税の「納税通知書」や市区町村の役所で閲覧できる「固定資産課税台帳」などから確認できます。

要件によっては軽減税率なども適用されるため、詳細な税率については「No.7191 登録免許税の税額表|国税庁」をご参照ください。

仲介手数料に対しての消費税

不動産会社に不動産売買の仲介を依頼する際に必要になるのが仲介手数料です。仲介手数料は売却金額に応じて変化するため、計算をする際は下記の表を参考にしてみてください。

取引物件価格(税抜) 仲介手数料の上限
400万円超え 取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税
200万円~400万円以下 取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税
200万円以下 取引物件価格(税抜)×5%+消費税

仲介手数料については、「不動産投資の媒介契約にかかる仲介手数料は?計算方法や値引き交渉のコツ」の記事で詳しく解説しています。

不動産売却時に利益が出たら確定申告が必要

不動産を売却して利益が出た場合には、確定申告をして納税をしなければいけません。利益が出なかった場合でも、損益通算や繰越控除などの控除を受ける際には確定申告が必要になるので、忘れないようにしましょう。

利益が出ているのに意図的に確定申告をしないと重加算税が発生してしまうので、忘れずに行うようにしてください。
不動産売却後の確定申告については、「不動産売却後の大きな壁は確定申告!確定申告の方法や書類の種類を詳しく解説」をご参照ください。

不動産売却に関する税金に不安な方はご相談ください

不動産売却に関する税金はアデプトにお任せ

不動産を売却して利益を得た場合には、得た利益に応じた譲渡所得税を納めなければいけません。譲渡所得税を算出する際には、まず下記の計算方法で譲渡所得を把握しましょう。

譲渡所得 = 収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額

譲渡所得を計算したら、次に譲渡所得税を算出します。

譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率

「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」でそれぞれ税率が異なるので、計算をする際は注意してください。譲渡所得税の計算や不動産売却に関する税金に不安を感じている方は、ぜひアデプトマネジメントにご相談ください。

アデプトマネジメントは、不動産売買に豊富な実績があり、税理士や公認会計士、FPといった専門家の心強いネットワークがあります。不動産売却時の税金などに関する不明点も、ぜひお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

この記事の編集者

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アデプトマネジメント編集部

【宅地建物取引業】大阪府知事(2)第59728号
【賃貸住宅管理業】国土交通大臣(1)第002807号

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